ウェブサイト上でやりとりする無料メールサービス「Yahoo!メール」で8月下旬、大規模なシステム障害が発生した。サービスを運営するヤフーは9月6日、この障害の影響で、Yahoo!メールを利用している5000万IDのうち、96万IDに送られたメール258万通が消失したと発表した。
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同社の発表によると、ストレージ障害によって、260万IDがYahoo!メールにアクセスできない状態になった。このうち、96万IDで、メールの復旧ができず、大規模な消失が発生してしまったという。
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今回のメールの消失について、ヤフーに損害賠償責任が発生する可能性はあるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
「損害賠償を請求するためには、この件に限らず、不法行為に当たるか、契約違反がある(債務不履行がある)ことが必要です。
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Yahoo!メールは、ネット上でアカウントを作成すると使えるようになるものですが、その前提として、ヤフー側が定める利用規約などに同意することが要求されます。Yahoo!メール自体は無料で利用できますが、無料といっても、メールの利用について、利用者とヤフー側との『意思の合致』があり、これも契約の一つといえます。
したがって、まずは債務不履行(契約違反)に基づく損害賠償請求が考えられます。ただ、実際に損害賠償を請求できるかどうかは、当事者間でどのような契約内容が合意されているのかによります」
では、どのような契約内容になっているのだろうか。
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「ヤフーの利用規約を確認してみたところ、『第1編 基本ガイドライン』の中の『第1章 総則』の中に、『当社は提供するサービスの内容について、瑕疵(かし)やバグがないことは保証しておりません。』という定めがありました。
つまり、『瑕疵(=不具合)やバグがない』ことが保証されておらず、利用者はこの前提で利用を申し込んでいることになります。瑕疵やバグによりデータが消えてしまうことはあり得ることなので、ヤフー側は、この条項を盾に、原則的に責任がないと主張することができそうです」
損害賠償のもう一つの根拠となりうる「不法行為」には当たらないのか。
「不法行為に当たるためには、行為と損害、その間に因果関係があることが必要です。
この点、システム不具合という瑕疵があり、メールの消失という損害が生じており、そこに因果関係があること自体は、ヤフーも認めています。
しかし、メール消失により具体的にどのような損害が生じているのかが立証できなければ、不法行為における損害とは言えません。
損害といえるには、それにより業務に支障が生じたといったことが考えられるわけですが、本当にそれが消えたことで業務に支障が出たのか、出たとしてどのような損害があったといえるのか、というところを詰めて聞かれることになります。この点を立証できないと、『損害』とは認めてもらえません。単に『大切だった』というだけでは、『損害』とはいえないのです。
そして、この『損害』とシステム不具合との間に因果関係が必要になります。若干語弊があるかもしれませんが、不具合があっても回避し得る損害であれば因果関係がない、といえる場合もあると思います。
このように、不法行為は成立する可能性があるとは思いますが、実際に損害賠償請求をしていくことは難しいというのが現実だと思います」
清水弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2015年6月10日「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp
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