派遣法改正案、参院厚労委で可決「どこまでも企業に都合が良い改正」労働弁護団が批判

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2015年09月08日 22:31  弁護士ドットコム

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派遣労働者の受け入れ期間制限を事実上なくす「労働者派遣法改正案」が9月8日、参議院の厚生労働委員会で可決された。派遣労働者として働く女性や日本労働弁護団のメンバーが東京・霞が関の厚生労働省で記者会見し、「派遣労働を無期限に使い続けられるようにする法改正は、断じて許せない」と改正案を批判、「議論されるべきことが未消化のまま積み残されている。このまま通すのはおかしい」と訴えた。


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「派遣労働者の受け入れ期間制限」とは、企業が仕事を派遣労働者に任せていい期間の制限のこと。現行ルールだと、企業が、同じ仕事を派遣労働者に任せられる期間は、専門26業務を除いて、上限3年までとなっている。



改正案は、全ての業務で、「仕事ごとの受け入れ期間制限」をなくす。その一方で、「同じ派遣労働者」に「同じ仕事」をさせることができる上限期間を、業務の種類に関わらず、3年までとする。



このため企業は、3年ごとに「違う派遣労働者」に入れ替えれば、「同じ仕事」を派遣労働者に任せ続けることができるようになる。



●「3年で雇い止めになるようなルールをやめてほしい」


日本労働弁護団・幹事長の高木太郎弁護士は「どこまでも企業に都合が良い改正だ」と批判。企業は「使い続けたい派遣労働者」については、仕事(部署)を入れ替えてずっと雇い続ける一方で、「入れ替えたい派遣労働者」については3年で雇い止めするようになるだろう、と指摘した。弁護団が実施したアンケートや電話ホットラインには、多くの不安の声が寄せられているという。



会見した派遣労働者の女性(56)は、法案が参院厚労委で可決されたことについて、「悔しいです。悔しい。本当に悔しいです」と、天を仰いだ。この女性は専門26業務として、同じ派遣先で15年間働いてきたが、今年5月に3年後の雇い止めを宣告されたという。



これまで、専門性の高い26業務については、例外的に派遣社員ごとの期間制限がなく、何年でも派遣社員として働くことができた。しかし今回の改正で、専門業務という区分けがなくなり、他の業務と同じく、派遣社員として働ける期間が3年に制限されることになった。



この女性は「これは合法クビ切り法案だ」と強調、「3年で雇い止めになるようなルールをやめてほしい」「専門26業務の区分をなくして正社員と同じ仕事をさせるなら、正社員と同じ待遇にしてもらいたい。同一価値労働同一賃金を法令化してほしい」と訴えていた。



●「誠意のある審議をしてほしい」


法案について、安倍首相は、9月3日の参議院厚生労働委で「今回の改正案は、正社員を希望する方にはその道を開き、派遣を選択する方には待遇の改善をはかるためのものだ」と答弁した。



政府側のこうした説明について、会見した派遣労働者の女性(30代)は、「これを派遣労働者のための法案だと言い張るのは、恩着せがましく、動機が不純で、みっともない」「誠意のある審議をしてほしい」と怒りをあらわにしていた。



派遣法改正案は、施行日の変更などの修正があったため、成立までにはこの後、参議院本会議で可決後に、衆議院本会議でもう一度可決される必要がある。派遣法改正案は9日にも参議院本会議で可決され、その後、衆議院へ送られる見通し。


(弁護士ドットコムニュース)


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  • うーん、要するに派遣社員として同じ職場に勤務し続ける事が出来ないのが不満なの?
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