傷害容疑で逮捕の冲方丁さん「処分保留」で釈放――「無罪」と考えてもいいのか?

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2015年09月09日 16:32  弁護士ドットコム

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別居中の妻を殴ってケガを負わせたとして、傷害容疑で警視庁に逮捕された作家の冲方丁(うぶかた・とう)氏(38)が8月末、処分保留で釈放された。


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報道によると、冲方氏は警察の調べに対し、「口論はしたが、殴っていない」と容疑を否認していた。冲方氏の9月1日付のブログに「【ご報告】」と題した文章を掲載。「このたびは世間をお騒がせし、また各方面に多大なご迷惑をおかけしてしまい、心よりお詫び申し上げます。全て己の不徳の致すところであり、反省の念に堪えません」「私の主張は、当初の報道より変わりありません」と記した。



冲方氏の釈放を発表した東京地検は、その理由を明らかにしていないが、「捜査を継続する」としている。「処分保留」というのは、いったいどういった状態なのだろうか。無罪になったわけではないのか。元検事の矢田倫子弁護士に聞いた。



●被疑者を拘束できる時間には、タイムリミットがある


「『処分保留』の意味は、逮捕・勾留手続と密接に関係していますので、まずはその手続きから説明します」



矢田弁護士はこのように切り出した。



「被疑者の身体を拘束する最初の手続が逮捕です。逮捕は、捜査機関等が被疑者の身体を拘束する手続ですが、その時間制限は非常に厳格に定められています。



逮捕は、原則として、警察段階で48時間・検察で24時間(最大72時間)の時間制限の中でしか身体拘束ができません」



拘束が72時間を超える場合はどうなるのか。



「それ以上の身体拘束の必要性がある場合、検察官は、裁判所に対して『勾留』を請求します。



勾留が認められた場合でも、拘束期間は原則として10日間です。延長しても、さらに10日までしか身体拘束は許されていません(内乱罪等であればさらに5日延長できる例外があります)」



勾留期間が過ぎると、どうなるのか。



「検察官はこの時間制限の中で、起訴するか、釈放するかを決めなければなりません。



罪を犯したと判断するに足りる十分な証拠がある場合であり、かつ、起訴する必要性がある場合に起訴します。それ以外の場合については、検察官は、起訴せずに釈放することとなります」



●「起訴するかもしれない」という含みを残した釈放


今回釈放された冲方氏は、今後起訴されることはないということだろうか。



「釈放する場合でも、『不起訴相当』として釈放する場合と、『起訴するかもしれない』という含みを残した釈放の2種類があります。処分保留での釈放は、後者にあたります」



場合によっては、冲方さんが起訴される可能性がまだ残っているわけだ。



「処分保留で釈放する場合には、証拠収集に時間がさらに必要な場合と、示談の成立が見込まれるなど起訴の必要性についてなお検討が必要な場合があります。



処分保留で釈放された場合、さらに捜査を継続したり、示談の行方等を見極めたりしたうえで、結局、在宅(身柄拘束のないままという意味です)で起訴されることもありますし、不起訴となることもあります」



矢田弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
矢田 倫子(やた・のりこ)弁護士
東京地方検察庁・名古屋地方検察庁など歴任後、平成21年退官・弁護士登録。平成24年2月に福田敬弘弁護士・田島攝規公認会計士・税理士と共に「ひかり法律会計事務所」を設立し、現在は広く刑事・民事全般分野で活躍中。
事務所名:ひかり法律会計事務所
事務所URL:http://www.office-hikari.jp/


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