クラブでのダンスを規制する「改正風営法」――弁護士が指摘する「成果と課題」とは?

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2015年09月29日 14:31  弁護士ドットコム

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クラブやダンス営業の規制を緩和した風俗営業法の改正を受け、警察庁は9月17日、終夜営業できる地域など、受け入れ基準を定める政令案をまとめた。


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今年6月に成立した改正風俗営業法により、店内の照明の明るさが10ルクスを超える店で、アルコールを提供する場合には「特定遊興飲食店」として、深夜営業が認められることになった。政令案では、繁華街や湾岸地域など住民が少ない場所での終夜営業を認め、住宅密集地や病院近くなどでは禁じるという。警察庁は、ホームページ上に政令案を公表し、9月18日から30日間、国民の意見(パブリックコメント)を募集する。



今回の改正風営法や政令案について、クラブ規制の問題に取り組んできた弁護士はどうみているのだろうか。無許可でクラブを営業したとして大阪市のクラブ「NOON」が摘発された事件で、無罪判決を勝ち取った弁護団長の西川研一弁護士に聞いた。



●風営法の改正は不十分?


「まず、今回の法改正でダンス規制項目が削除されたことは、大きく評価されるべきだと思います。



長年運動を継続してこられたペアダンス界や『Let's DANCE』の運動、NOON訴訟の成果、そしてダンス議連の先生方の活躍など、多くの方々の努力によって成し遂げられました」



西川弁護士はこのように振り返る。



「ですが、改正法には問題もあると考えています。



まずは、規制対象である『遊興』の概念が不明確であることです。



現行の風営法には、深夜飲食店営業への規制として、深夜遊興の禁止という規制があります(32条1項2号)。一方で、行政は『ダンスさせることなどは遊興に含まれる』と解釈しています」



改正法では、ダンス営業規制は削除されたが、クラブ営業は、深夜遊興禁止の規制にひっかかるということだろうか。



「その点をクリアするために、特定遊興飲食店営業規制(許可制)が新設されました。普通の深夜飲食店の営業とは、『遊興』をさせるかどうかが異なります」



つまり、ダンスは「遊興」に含まれるが、『特定遊興飲食店』の条件をみたして許可を得たクラブは、終夜営業してよい仕組みになるわけだ。



「そうですね。しかし、そもそも立法事実に照らして『遊興』概念をそのように広く解してよいのかは疑問です。



また、現行法では、深夜の遊興禁止規定に罰則がありませんが、改正法は『特定遊興飲食店営業』の許可なしで『遊興』させる営業をすれば、風俗営業と同じく、無許可営業罪として、2年以下の懲役と200万円以下の罰金を科されます。



このように、遊興概念の不明確さや、従来の遊興規制にはなかった罰則の新設など、改正法には問題が多いです。



このへんが、あるべき改正内容としては不十分だと評価しています」



●政令案は「現場に配慮している」


政令案についてはどうみているだろうか。



「今回の政令案等は現場に配慮している部分があり、この点は評価できます。



たとえば、営業許容地域の基準や地域制限の例外、照度測定方法などは、これまで事業者から、行政や議連に働きかけてきた内容です。



これは各業界が事業者団体などを結成し、業界の声を粘り強く届けてきた成果だと思います。



今後は、これらのうち最終的に条例に委ねられる部分について、地方議会を中心に働きかけを行っていく必要があると考えています」



西川弁護士はこのように述べていた。



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
西川 研一(にしかわ・けんいち)弁護士
弁護士法人・響の代表弁護士。大阪弁護士会所属。「SAVE THE NOON」訴訟に関わると共に、ダンス規制法改正運動にも尽力。取扱の多い案件は、交通事故、借金問題、遺産相続、離婚問題など。また、テレビや新聞、雑誌などメディア出演も多数。
事務所名:弁護士法人・響
事務所URL:http://hibiki-law.or.jp/


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