子どもを「認知」するしないの違い。「事実婚」のメリット&デメリット

64

2016年12月14日 08:02  ヒトメボ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ヒトメボ

「事実婚」の夫婦に子どもが生まれたら、どうなる?
“ほぼ夫婦”でありながら、入籍せずに「事実婚」を選択するカップル。では、もし「事実婚」のカップルに子どもが生まれたら……。パートナーである男性の「認知」の有無によって、子どもを取り巻く環境はどのように変わるのでしょうか? 佐藤大和弁護士、まずは「認知」の意味から教えてください!

老後はどうなる? 女性が一生「籍を入れないでいること」のメリット&デメリット

「認知とは、生まれてきた子どもを『間違いなく自分の子どもである』と認めること。法律婚している夫婦のもとで生まれた子どもは誰の子かハッキリ分かっているので、わざわざ認知する必要はありません。また、法律婚のもとで生まれた子どもを嫡出子(ちゃくしゅつし)といい、法律婚以外で生まれた子どもを非嫡出子といいます」(佐藤弁護士)

*認知は男性が行う手続き*
「生んだ本人である母親は、自動的に親子関係を認めている状態になります。つまり、認知は血縁のある父親にあたる男性についてのみ意味があります。認知の手続きには市町村役場で認知届けを提出することが必要で、口約束などでは成立しません。また、一度認知をしたら原則として解消はできません」(同)

*婚内子、婚外子*
 近年では、差別的であるとして嫡出子を婚内子、非嫡出子を婚外子と言い換えて用いることがあります。当コラムでは法律上の用語で表記しています。

 ふむふむ。では、男性の「認知」の有無によって具体的にどんな違いがあるの?


■認知された子どもは遺産を相続できる

「決定的な違いは『遺産相続』に関することです。法律婚の場合、通常、夫が亡くなると妻と子どもに1/2ずつ遺産が相続されます。ですが事実婚の場合、妻は夫の遺産を相続できません(遺言がある場合は例外)。同様に、子どもも夫(子どもにとっては父親)の遺産を相続できません。ただし、夫が子どもを認知している場合は、法律婚と同じように子どもにも相続権が認められるのです」(同)

 なるほど。ちなみに、母親が亡くなった場合はどうでしょう?

「母親は自動的に子どもを認知している状態なので、子どもは母親の遺産の相続権がもともとあるのです」(同)

 ただし、認知によって相続権が発生するとはいえ、非嫡出子には次のような不利益も…。


■嫡出子の半分しか遺産を相続できない

「もし、亡くなった夫とは不倫をしていて、夫は自分以外の女性と法律婚をしていたとします。そして、その女性との間にも子どもがいたとしましょう。この場合、非嫡出子は、法律婚のもとで生まれた子ども(嫡出子)の半分しか遺産を相続できません。夫の生前の家族構成次第では、わが子に残せる遺産の額も変わってしまう可能性があるということです」(同)

*遺産相続の例*
・法律婚の妻:1/2
・嫡出子  :1/3
・非嫡出子 :1/6
※子どもの数が増えるとさらに減る

「これは、女性の場合でも一緒。例えば、法律婚の夫との子ども(嫡出子)を生んだ後に離婚。その後、事実婚の夫との子ども(非嫡出子)を生んだ場合、同じ母親から生まれた子どもでも、後者は前者の半分しか遺産を相続できないということです。ただし、現在、最高裁判所においてこの制度について争われており、また『非嫡出子への差別』という批判もあり、今後見直される可能性が高いと思います」(同)

 そのほかに、男性の「認知」の有無による違いはあるのでしょうか?


■認知していない場合は養育費を支払う義務がない

「事実婚の夫婦で夫が子どもを認知しないまま別れた場合、養育費の問題が浮上することがあります。法律婚の夫婦が離婚した場合は、原則として夫は子どもが成人するまでを目安に、養育費を払い続ける義務があります。認知をしていない場合『俺の子ではないから』と養育費の支払いを拒否される可能性も」(同)

 これだと、万が一、母親が事故や病気で死亡したとき子どもの生活を守れなくなってしまい不安ですね。もし「認知してないから養育費は払わない!」なんて言い逃げされたら…。

*強制認知という手段もある*
「その場合は『強制認知』の手続きをとることが可能です。法的手続きにおいて、DNA鑑定などを経て強制的に親子関係を認めさせるもので、夫の死後3年まではいつでも手続きができます。ただしDNA鑑定には十数万円程度の費用がかかり、家庭裁判所への申し立てが必要など、相当な労力を要することも事実です」(同)

 事実婚の解消に発展しないことがベストですが、その万が一に備えて知っておきたい制度です。最後に、子どもを巻き込んでしまわないか不安なシーンについて聞いてみました。


■入学や就職で不利益を被るケースはほとんどなし

「受験や入学手続きといった場面で、事実婚や認知の有無が問題になるか? と心配される方もいるようですが、法律上そのような手続きで不利益を被ることはまずありません。有名私立校に進学するときや公務員などの厳格な仕事に就職する際、親の身分証明を求められることもあるようですが、それらも極めて稀なケースでしょう。また、運転免許証やパスポート等の個人情報欄にも、自分が非嫡出子であることや、認知されていない子だと分かるような情報が記載されることはないので安心してください」(同)

*第三者は他人の戸籍を調べられない*
「自分が非嫡出子であることや、自分に非嫡出子がいることを第三者に知られることを恐れる人もいますが、基本的には第三者が他人の戸籍を調べることは不可能なので心配しなくてよいでしょう。また、これまで父母との続柄欄では、嫡出子なら『長男(長女)』『次男(次女)』などと記載され、非嫡出子は『男』か『女』と記載されていました。しかし現在は、非嫡出子であっても嫡出子と同じように記載されるように法改正があり、嫡出子か非嫡出子かは分からなくなっています。住民票も同様の記載区別がありましたが、すべて『子』で統一するように改められました」(同)

 もし第三者が知るとしたら、法律とは関係ないところでのウワサなどが原因。夫婦別姓で片方の親と子どもの姓が違うとなると、学校で目につきやすく、周囲の保護者などに憶測であれこれ言われる可能性は否めないようです。

 佐藤弁護士いわく「認知しないことは男性側にしかメリットがない」とのこと。子どもの将来にかかわる重大な事項だけに、きちんと考えたいですね。

(池田香織/verb)

このニュースに関するつぶやき

  • 事実婚なのにも関わらず、民法で定められた婚姻関係の権利まで要求する厚かましい人種が偶にいるけどホントさもしいよね。話しにならん。
    • イイネ!13
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(43件)

前日のランキングへ

ニュース設定