いつものように、ここcitrusで書くコラムのネタ探しのため、Yahoo!ニュースのトップ面をスクロールしていると、Music Voice発の『アンタ柴田「無理です」ファンキー加藤と絶縁状態』というタイトルの記事が目にとまった。
お笑いコンビ・アンタッチャブルの柴田英嗣が2月24日放送の『怪傑えみちゃんねる』(関西テレビ)に出演。MCの上沼恵美子が、(柴田の)元妻と不倫した歌手のファンキー加藤との現在の関係について質問したところ、「今ですか? もうお付き合いはないですよ。それは無理です」と絶縁状態であることを明かし、再度「無理」とキッパリ言い切った。
ただ、柴田は「そういう仕事を入れてくる人がいるんですよ」とファンキー加藤との共演をセッティングしようとする人がいると話す。先日には「始球式やってくれという仕事が来て、俺が投げて加藤がキャッチャーやるのはどうか」との仕事が舞い込んだという。
この話にはスタジオも騒然としたが、柴田は「あいつがキャッチャーだったら、結構なスピードで投げれそうな気がする」と右腕を大きく振り、オチを付けて爆笑を買った。
……と、内容自体は「仮にコレが本当なら、話題づくりのためには成り振りかまわない芸能界の悪趣味ぶりだけが悪目立ちする」たわいもないものだったんだが(ちょっとだけ笑ってはしまったけど)、そんなことより気になったのは、例の(?)記事下にぶら下がっているコメント欄──に書き込まれていた、とある一文であった。
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「なんでこう言う当たり前の話を当たりまえに書くのかな?暇なの?」
さて。「こう言う(いう)」……とされている、バラエティ番組などで交わされたやりとりを平行移動的に原稿へと起こす体(てい)の記事を、ジャンル的にはどうカテゴライズすればいいのだろう? もしかすると、すでに正式な名称があるのかもしれないが、私はソレを知らないので、とりあえずは「バラエティー番組後追い説明記事(以下、「後追い記事」)」と呼ぶことにする。
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最近、ネットサーフィン(←死語…なのか?)していても、この手の後追い記事はすごく増えてきている印象がある。たとえば、日曜の朝、『ワイドナショー』(フジテレビ系)が終わったら、1時間も経たないうちに、もうその日の“まっちゃん発言”がいくつもネット上にアップされていたりもする。そして、これらの後追い記事のコメント欄に、必ず一つや二つは紛れているのが、
「どーでもいい」
「こんな誰でも書けそうな観たまんまの記事はいらん!」
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……といったたぐいの中傷である。
う〜ん、少なくとも「ネットニュースパトローラー(略:NNP)」の肩書きでいくらかの小銭を稼ぐ私にとっては、決してどーでもよくはなく、むしろありがたいんですけどね……1時間に数本レベルの頻度で湧いてきてくれる後追い記事って。この「アンタ柴田記事」だけにかぎっても、コメント数だって150はあるんだから、書キコミストの皆さんもそこそこは楽しんでるわけでしょ? また、同じ文筆業者の目線から言わせていただくと、コレ……それなりの文章力がなけりゃ案外むずかしいと思いますよ。たぶん「誰でも書ける」ようなシロモノじゃないと思う。さらに、そう「暇」でもないと思う。おそらく、コメント欄に「暇なの?」と書き込んでいるヒトよりは忙しいんじゃないですかw?
眼前の出来事を、極力忠実に、熱量を込めず文章で伝えるのは、それだけでも相当に高等なテクニックだ。しかも、番組が終わったとほぼ同時のタイミングで、それなりのかたちになったモノが、すでに“商品化”されているのである。
あらゆるテレビ番組を流し観しながら、そのなかから面白い番組をピックアップして、さらにその番組内から面白い箇所をトリミングし、瞬時で1000ワード前後の原稿を完成させる……という職人技は一朝一夕で身に付くスキルではない。「いや、俺(私)なら簡単にできる!」とあくまで言い張るヒトは、実際に一度やってみればいい。やってみて、一本書くのに何時間もかけた挙げ句にとっちらかっている自分の原稿を読み直しつつ、いかに大変で特殊な作業であるかを痛感し、“後追い記者”の仕事をもっとリスペクトしてもらいたい。
正直、私には無理! 私はここまで原稿を書くのが早くないし、いくら自由業とはいえ一日中テレビの前に張りつき続ける根気も時間もない。だから、ゴメスのコラムは往々にして、すぐ“主観”に逃げてしまう……。