東スポの芸能欄の片隅にひっそりと、ゴメス的にちょっと気になるこんな記事が掲載されていた。
歌手で俳優の中条きよし(71)が、新曲の発表会を4月5日、都内で行ったという。曲タイトルはズバリ!『煙が目にしみる』。禁煙・嫌煙の風潮が日本でも急激に席巻しつつあるこの時世に、あえての「たばこをテーマとした歌」であるようだ。
中条きよしといえば、1974年に大ヒットし、レコード大賞(大衆賞)まで獲得した『うそ』があまりに有名だが(逆に言えば、この曲しか私は知らない。ちなみに、大阪で仕事を終え東京に飛行機で帰る途中、愛知県上空でハイジャックに遭遇するという極レアな経験の持ち主でもある)、たしかこの曲も「折れた煙草の 吸い殻で♪」と、たばこを題材とする歌詞であった。
発表会中、
「(大ヒット曲の『うそ』と)たばこつながりということで、たばこを吸っている人の応援歌として歌っていきたい」
「たばこって色気があるというか、ムードがあるよね。たばこはいいよ」
……などと、あきらかに現在のトレンドとは逆行する発言を連発していたらしい。
一方で、かつては「一日に60本以上吸っていた」というチェーンスモーカーだった中条本人は、もう8年前にたばこをやめたのだそう。
「食事をした後に吸ったたばこがまずかった時があってね。もともと『高音が出にくいな』と思っていたし、どこからか『(たばこを)やめろ、やめろ』と言われている感じで、スパッとやめてしまった。決して意志が強いわけでもないんだけど、8年間続いている」
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そのおかげもあったのか「禁煙してからは声も出るようになったし、人前で気持ちよく歌えるようになった」と中条は、しれっと語る。なんという不条理。頭が混乱してしまい、さっぱり意味がわからない。
自身の仕事……っていうか、率直に言ってしまえば「健康」のために8年も禁煙を継続しているヒトが、もはや「百害あって一利なし」でしかないたばこを「色気がある」だとか「ムードがある」だとかと無責任に賞賛し、オマケに「喫煙者の応援歌」までをもリリースする……「禁煙してからは声も出るようになって?」って……むっちゃ勧めてますやん、たばこやめるの。どっちやねん! まさにパラドックスの世界である。
しかし、私はこういう「自分のことはちゃっかりと棚に上げといて、ソコに引け目を微塵も感じることなく発言できるヒト」のことは、決して嫌いじゃない。むしろ大好物とさえ言ってよい。しかも、東スポ記者が話の矛盾をロクに咀嚼することもなく、ただ発表会で起きたことを淡々と書き並べているだけの文体が、その“妙”を(結果的に)より際立たせている。素晴らしい原稿だと思う。
もしかすると、今回の発表会、そして新曲を通じて中条は「嫌煙家も愛煙家もそう殺伐といがみ合ってばかりじゃなく、もっと仲良く共存していこうよ」みたいなメッセージを我々日本人に届けたかったのかもしれない。冷徹な、あるいは単なる思いつきのマーケティングによって「高年齢の禁煙できない喫煙者」をターゲットに絞っただけ……の可能性も捨てきれないが、いずれにせよ昨今の「禁煙ファシズム」(※←喫煙者側によるネーミング)の台頭に、一石を投じる“問題作”であることだけは間違いない。
……と、ここまでを読んで「昔、麻薬で捕まったヒトがたばこを推進する新曲とか出して大丈夫なの?」なんて不安が頭をよぎったcitrus読者サンはいませんか? それ、たぶん清○健○郎の間違いですからw。とりあえず、中条きよしに逮捕歴はありません。