先日も、とある高校から卒業目前の3年生に向けて性教育講演をしてほしいという依頼がありました。高校を卒業して「デビュー」する人も多いだろうから、その前に必要な知識を伝えておいてほしいとのことでしたので、男女の違いやセックスに伴うリスクとその回避法など、「最低限これだけは知っておいてね」という内容をお伝えしてきました。
■性をタブー視する日本では難しい!? 学校での性教育
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本来、性教育というものは、高校生になっていきなり、しかも1時間という短い時間で受けるものではなく、小学生の時から本人の発達段階に応じた内容で、順を追って行われるべきものだと思います。小さい頃から、家庭内で親から命の大切さや赤ちゃんがどうやって産まれるのかなどを伝えられるのが自然な流れなのですが、実際は「赤ちゃんはどこから来るの?」という質問にきちんと答えられている親は少ないのではないでしょうか。コウノトリなどの例え話でごまかしてしまったり、何となくうやむやにしてしまうことの方が多いかもしれませんね。日本では、まだ性に対するタブー視が強く、なかなかオープンに話すことが難しいようです。また、学校での性教育も「寝た子を起こすな」といった考え方が根強く、必要な知識がなかなか広めにくい状況があります。
親が、子どもへの性教育において何歳までにどこまで知っておくべきだと考えているのかをアンケート調査した結果では、10〜12歳までに二次性徴や月経など体の仕組みについて、13〜15歳までに性行為や避妊法など具体的な内容について知っておいた方がよいと回答していました。つまり、遅くとも中学生の間に避妊や性感染症予防について具体的なことも含めて学ぶ機会があったほうがよいと考えているのです。ところが、中学校で「教えてもよい内容」は指導要領で決められてしまっているので、その内容から外れてしまう項目は教えることができません。こういった矛盾が、性教育を行いにくい現状を作っているものと思われます。
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■「性」と「命」について、家庭でどう伝えていくか
学校での性教育に期待ができない場合、やはり家庭でしっかり性教育を行っていく必要があります。親が子どもに行う性教育の第一歩は「あなたはこんなにも愛されて大切に思われて生まれてきたのだよ」ということを伝えてあげることです。そして、「産まれる」ということが奇跡の連続であることを伝えてあげることです。具体的な避妊方法や性感染症については、親から説明するよりも専門家につないだり、わかりやすい書籍を紹介する方がお互いにとってやりやすいと思います。その上で、「何か困ったことがあったらいつでも頼ってね」ということを常日頃から伝えておくことが大切です。
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私には二人の娘がいますが、2回とも立ち会い出産だったので産まれた時の映像がしっかり残っています。時々本人たちにその映像を見せながら、生まれてきてくれてありがとうという気持ちを伝えています。まだ、2歳と5歳なので、「どうやって赤ちゃんができるの?」という質問には出くわしていませんが、興味を持つようになったら「お父さんとお母さんが仲良くして、お母さんのお腹の中にお父さんの分身が入ってきて、お母さんの分身と合わさったから新しい命ができたんだよ」ということを説明してあげる予定です。
また、長女は徐々に男女の体の「形」が異なることを理解してきているようなので、「おちんちんは大事なところだから汚れた手では触らないでね」「人のおちんちんやお尻を勝手に触ったり見たりしてはいけないんだよ」「男の子と女の子ではおちんちんの形が違うね」といった話を入浴時などにしています。そして、「女の子だからピンク」とか「男の人なのに『あたし』って言ってる〜」といった、誤ったジェンダーバイアスが刷り込まれているなと思ったら、「女の子でも青が好きな人もいるんじゃない?」「自分のことは呼びたいように呼んだらいいんだよ」とやんわり修正していくように心がけています。
性について語ることは、いやらしいことでも汚らわしいことでもありません。自分自身が生まれてきた根源を知る、とても自然なことなのです。ぜひ、家庭内でも、命について、性について、気軽に話せる環境を作っていってくださいね。