『HUFFPOST』によると、YouTubeで9万人以上のフォロワーを持つイギリス人女性のエル・ダービーさんが、アイルランドの一流ホテルにタダで宿泊させてほしいとメールで依頼したことが、大きな騒ぎとなっている……らしい。詳細を説明してみよう。
ダービーさんがアイルランドのホテル『The White Moose Cafe』に送ったメールは、自身のYouTubeとインスタグラムを通じてホテルの宣伝に協力するので、無料で宿泊させて欲しいという内容。
これに対し、ホテルのオーナーは「親愛なるソーシャルメディアインフルエンサー様」と題したコメントとともに、彼女のメールの画面キャプチャーを(ダービーさんの実名は隠して)Facebookに公開。加えて「もしあなたを無料で泊めてしまったら、誰が人件費を払うのでしょう?」「今後も、ホテルに泊まる際には、他のお客様と同じように宿泊料を支払うことをオススメします。(後略)」「追伸、お返事はNOです」と綴った。
……と、ここまでの経緯をなぞって、まず私が驚いたのは、このアイルランドにあるホテルの対応を受け、「あなた方(ホテル側)のほうがビジネスをわかっていない」「そんなにこき下ろすなんてひどい」……ほか、少なからずの非難の声があがったという事実。さらには、問題の発端となったメールを送りつけた張本人(ダービーさん)も、
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「一度にこんなに感情が押し寄せたことはない。私は、怒っているし、悲しい、動揺しているし、不安になったし、気まずかったし、バカにされていると感じた」「私がホテルのオーナーに申し出たことは、ブロガーだったら普通のこと」「(タダで泊めてもらうだけではなく、むしろ)報酬をもらうのが普通だし、彼はホテルで働いているんだからそれを知っているはずよ」
……と逆ギレする始末。それに呆れ果てたホテルオーナーは「今度、うちの施設は一切ブロガーお断りです」と締めくくった……のだそう。
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つい先日、私はここcitrusで、
Googleが、(傘下とするYouTubeの)広告掲載基準の根本的な変更として、これまでは視聴回数1万回に達すると広告を付ける基準を設けていたが、2月20日以降は「登録者数1000人以上」と「過去1年で4000時間以上の視聴時間」の2つを満たすチャンネルでなければ、広告は付かない仕組みとなることを発表した。
といったニュースについて言及するコラムを寄稿し、「Googleさんのおかげで、やっと素人同然の“なんちゃってユーチューバー”が、ちまたから消滅してくれる」と、ホッと胸をなで下ろしていたばかりなんだけれど、こういった“勘違いしている阿呆”が、それどころかその阿呆を擁護する阿呆が、こうやって現存しているとは……本当に「ホッと胸をなで下ろせる」のは、まだまだ先の話なんですな……。ガク〜!
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万一、ホテルとダービーさんとの闇交渉が成立しちゃってたら……コレって、ステマじゃないの? YouTubeってステマはアリなんだっけ? しかも、フォロワー数9万人って!? その程度のフォロワー数で、きちんとしたアポイントの段階も踏まずに、いきなり「タダで泊めろ」とメールを送りつけるなんて……非常識も甚だしいし、完ペキにユーチューバー、ブロガーとしての自分の社会的影響力をも見誤っている。出版業界では絶対にあり得ない無神経な“営業手順”である。
たとえば、なんらかの相当に名が売れた情報雑誌(ブルー○スとか?)が、どこだかの飲食店を誌面で紹介するために取材依頼をしたとする。そして、写真撮影のため何品かの自慢の料理をつくってもらったとする。そんなときのやりとりですら、通常は
雑誌側「この料理全部でおいくらですか? お支払いしますので…」
お店側「いやいや、お題はけっこうですから…」
雑誌側「いやいや、そーいうわけにはいきませんよ!」
お店側「いやいや、雑誌に書いて宣伝していただくわけですから。今回はサービスってことで…」
……みたいな流れで、その後「そーなんですかぁ…。じゃあ遠慮なく」とちゃっかりご馳走になってしまうか、「いやいや、お金を払わなければ、こっちも好きなことが書けませんし…」と頑なに“サービス”を拒絶するかは、ケースバイケース、人それぞれだったりするが、いずれにせよ、上記のような忖度風なキャッチボール(※「忖度」の使い方、合ってます?)を作り笑顔で繰り返しながら、事はなし崩し的に“決定”していくのだ。
なにも出版業界の“常識”がすべて正しいと言っているわけではない。しかし、どんなかたちであろうと、誰かから合法な段階を踏んで金をせしめたいなら、せめてビジネスマンとしての最小限なプロ意識、人としての最低限な礼儀……みたいなものは、過去の斜陽メディアからでも学んでみるべきなのではなかろうか?