エアバスとロッキード・マーティンが提携し空中給油機のアメリカ市場でボーイングに対抗

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2018年12月07日 16:12  おたくま経済新聞

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エアバスとロッキード・マーティンが提携し空中給油機のアメリカ市場でボーイングに対抗

 2018年12月4日(現地時間)、スペインのマドリッドでエアバスとロッキード・マーティンは空中給油機の分野で提携し、アメリカの軍用機市場におけるシェア拡大を目指すと発表しました。現在アメリカ軍が採用している空中給油機のほとんどはボーイング製(旧マクダネル・ダグラス製を含む)であり、それに対抗する形になります。


【さらに詳しい元の記事はこちら】


 アメリカ空軍は老朽化したボーイング製KC-135空中給油機の置き換えとして、同じボーイング製の新型機KC-46Aの採用を決め、現在空中給油の認証試験を行っています。2018年12月3日にはカリフォルニア州エドワーズ空軍基地で、F-15Eに対する空中給油試験を実施し、成功させました。


 しかしアメリカ空軍には、ほかにも1980年代に就役したマグダネル・ダグラス(現:ボーイング)製のKC-10空中給油機があり、こちらも老朽化しているために置き換えの必要性が出ています。アメリカ軍の活動地域が広域化していることもあり、エアバスとロッキード・マーティンでは将来的にもっと空中給油の機会が増え、空中給油機が多く必要とされると予測しています。



 装備全体の冗長性を考えると、単一のもので揃えてしまうとトラブルがあった際に全てが使用できなくなり、戦力の大幅な低下を招きます。特に空中給油機が使えない状況になると、空軍の場合展開できる範囲が狭くなるだけでなく、一度の出撃で携行できる弾薬の量が減り(搭載燃料を少なくすることで最大離陸重量ギリギリまで弾薬を搭載して離陸し、残りの燃料を空中給油で補うという方法があります)、長時間の空域監視任務にも支障が出ます。


 今回エアバスとロッキード・マーティンが提携して、アメリカ軍へのシェア拡大を狙うキーとなる製品は、A330 MRTT。オーストラリア空軍(KC-30A)やイギリス空軍(ボイジャーKC)、フランス空軍(フェニックス)のほか、サウジアラビア空軍やシンガポール空軍、韓国空軍など、アメリカと友好的な国々での採用実績が多い空中給油/輸送機です。すでに就役中のため、アメリカ軍が運用しているF-35やF-15、F-16など、ほとんどの航空機への空中給油認証も取得済み。


 エアバスの軍用航空機部門のトップを務めるフェルナンド・アロンソ(元F1世界王者と同姓同名の別人)氏は「A330 MRTTはすでに12か国以上の国で採用されており、信頼性も十分に実証されています。アメリカでこの分野における製品(KC-130)を作ってきたロッキード・マーティンと提携することで、現在、そして将来のアメリカにおける軍用市場での可能性を広げることができると考えています」とのコメントを発表しています。



 アメリカ海兵隊にKC-130空中給油機を納入しているロッキード・マーティンのマリリン・ヒューソンCEOは「信頼性が高く先進的な空中給油は、私たちの顧客に地球規模の行動半径と戦略的優位性を提供することができます。エアバスとの提携により、アメリカ空軍やその同盟国に対し、21世紀の防衛環境にふさわしい空中給油能力を提供し、確固たる地位が築けるものと確信します」とコメント。ともすればボーイングが独占しかねないアメリカ軍の空中給油機について、十二分な対抗馬となることを宣言したともいえます。



 現在のところ、KC-46の初期調達予定数は、アメリカ空軍における全ての空中給油機を置き換えるほどの規模ではありません。また、まだ全ての機種についての空中給油認証が取得できておらず、今後の状況次第では調達ペースが遅れる可能性も否定できません。この点はすでに開発が終了し、量産体制に入っているA330 MRTTにとっては有利になります。エアバス/ロッキードマーティン連合のA330 MRTTは、はたしてボーイングKC-46一色になることを阻止し、それなりの採用数を獲得できるか、注目です。


Image:AIRBUS/USAF/USMC


(咲村珠樹)


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