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増える小児うつ病、中学受験で発症も 長引く頭痛・腹痛もサイン 予防法は?

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2018年12月14日 11:12  AERA dot.

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写真うつ病は10歳ごろから増え、18歳〜20代は大人よりも高くなると考えられているという(写真/getty images)
うつ病は10歳ごろから増え、18歳〜20代は大人よりも高くなると考えられているという(写真/getty images)
 ストレス社会でメンタルの不調を抱える人が増える中、子どものうつ病も増えているという。症状や悩みを言葉にできない子どもたちの異変にどう気づき、どう支えるのか。

【図表】けがやミスも「思春期のうつ病 4つの前兆」

 小学6年生のA子さんは明るく、友達とも仲良く付き合う社交的な女の子だった。しかし秋ごろ、ベッドから起き上がれなくなり、不登校になった。勉強どころか何もできなくなり、母親と訪れた心療内科で「小児うつ病」と診断された。A子さんは医師の問いかけに「つらい」「寂しい」と口にした。

 A子さんが住んでいるのはマンションや一戸建てのある静かな住宅地で、同級生はほとんど中学受験をする。A子さんも3年生から受験勉強を始めたが、仲の良い友達は5年生のときに個人塾へ移ってしまった。A子さんは寂しいと思いながらも、働いている母親が「個人塾は授業料が高いから」と何かの折に言っていたのを聞き、自分はいまの塾で頑張るしかないと考えた。「6年生の夏期講習は頑張るように」と塾の先生や母親にも言われ、夏期講習は乗り越えたものの、学校が始まると授業と塾で勉強詰めの毎日。もう続かなかった。

 子どものうつ病が増えているという。一昔前までは子どもはうつ病にならないという考え方が一般的だったが、ここ数年で「小児うつ病」の認知度が上がるにつれ、苦しさを言語化できない年齢の子どもたちが訴える頭痛や腹痛などの身体症状も治療につながるようになり、都内のある医師は「当院だけでも3年で3倍になっている」と話す。

『こどものうつ病 理解と快復のために』などの著書がある猪子メンタルクリニックの院長、猪子香代さん(臨床児童精神医学)は、発症率についてこう説明する。

「データによって変動はありますが、大人も含めて平均すると発症率は7%、子どもは3〜8%と言われています。4歳〜10歳(小学4、5年生)は3%ぐらいと低く、10歳以降から増え、18歳〜20代は大人よりも高くなると考えられています」

 同クリニックには不登校をきっかけに訪れる子が多いという。文部科学省の調査によると、2017年度に不登校となった小中学生は前年度より1万人増え14万4千人、5年連続で増えて過去最多を更新している。猪子さんは「不登校の背景にうつ病が隠れていることがかなり多いのではないか」と指摘する。

「学校への不安から不登校になっても、それだけなら家では普通に過ごせます。家でもベッドから起き上がれない、ほっとした表情が見られないなら治療が必要だと考えたほうがいいでしょう」(猪子さん)

 小学生の場合は、軽度のうつを発症したことで友達とうまくいかなくなり、いじめを受けて不登校になるというケース、さらに冒頭のA子さんのように中学受験を機に発症するケースが目立つという。

「大学受験はAO入試や推薦や大学附属からの進学など一般入試以外のルートができ、落ちても専門学校や浪人など選択肢がありますが、中学受験は落ちたら後がない、地元の中学にも行けないし、塾の先生に付いていくしかない……と追い詰められている子が多くいます。特に、いじめを受けて、いじめた子と違う学校に行くために受験を選んだ場合、何が何でも合格しなければと思ってしまいます。夏期講習を終えた秋頃から来院が増え、受験を乗り越えても中高一貫校で授業のスピードについていけずに中学で折れてしまったり、長く不調を抱え高校・大学生、大人になってからで発症することもあります」(猪子さん)

 集中力が下がって「勉強ができなくなった」と訴えるが、それでも机にかじりついていることがあるため、家族は診断を受けて驚くという。元気がなさそうに見える、イライラしている、嬉しそうな表情やほっとした表情がないなどの変化は要注意だ。

 中高生・大学生向けにストレスマネジメントや、悩みを抱える友人・恋人などを支えるための技術を教えているNPO法人「Light Ring.」の代表理事で、精神保健福祉士の石井綾華さん(29)は「子どものうつ病は大人とは現れ方が違う」と指摘する。大人の場合は職場に行けなくなるほか、アルコールの摂取量が増えたり、買い物依存症になったりと行動に現れやすく、周りの人が見て変化に気がつきやすい傾向がある。だが、子どもの場合は金銭的な制約などで、変化が見えにくくなる。「注目してほしいのは時期」だという。

 夏休みなどの長期休暇明けは子どもにとってストレスが高まり、自殺が増える時期であることは浸透しつつあるが、「最近はゴールデンウィーク明けも増えてきていて、特に休みが終わる最後の1週間は要注意」。石井さんが全国の学校で行っている中高生向けの講座では、メンタルヘルスの基礎知識のほかSOSの出し方なども伝えている。子どもたちからは、こんな声が寄せられるという。

<お父さんもお母さんも忙しそうで相談できない>

<悩みは自分だけで解決するものだと思っていた>

 そこから見えてくるのは、悩みを持っていること自体がかっこ悪い、人を困らせると思い込み、周囲に打ち明けられない子どもたちの姿だ。誰にでも悩みがあり、誰かに聞いてもらったり、問題を取り除く努力をしたりしているということを、身近な大人がやって見せてほしいと石井さんは勧める。大人が悩みを打ち明ける姿を見ることによって、子ども達が疑似体験でき、打ち明けることのハードルが下がるのだという。

 そして、いまや職場や家族、友人などにうつ病を抱える人が身近にいるのが当たり前の時代。子どもにとっても不調を抱えるクラスメイトや交際相手がいてもおかしくない。誰もが悩みの"支え手"として共倒れせずに正しい支援ができるよう、ソーシャル・サポート力講座ではこう語りかけている。

「優しい人や役に立ちたいと思う人ほど、悩みを自分ごととして考え、その人のために生きていることが多いのです。冷たく聞こえるかもしれませんが、『あなたの問題はあなたの問題。サポートはできるけど、解決するのは本人である、あなた』という考えが長期的に見ると早く状況が好転する支え手としてのあり方です。まずは、やらなくていいことをやっていないか?という視点で考えてみてください」

 例えば、夜中にかかってくるLINE通話。相手が仲の良い友人や交際相手なら、心配で朝まで話に付き合ってしまうケースも多い。それでは、2人とも寝不足で授業に出られなくなって、支える人も壊れてしまいかねない。要求が徐々にエスカレートして、依存されてしまうこともある。電話に出るのは夜10時まで、朝起きたらLINEを確認するなどのルールを決めたり、週末に会って話そうねと約束したり、他の参加者の支え方の例から自分を犠牲にしない距離感の取り方などを講座では学んでいく。そして相手の自助力を促すために支え手として自分のやることやらないことの線引きを作っていくという。

 思春期の子を持つ親でも活用できるテクニックは多い。

「子どもがイライラしたり、ふさぎ込んだり、わめいたりすることもあるかもしれませんが、親も一緒に不安にならないでほしい。子どもは、親を苦しめている自分に罪悪感を持ってしまうのです。どんな感情を出してもわかってもらえるという環境があれば、自然に落ち着きや心の安定を取り戻します」

 石井さんは"うつ病予防"の方法を研究している。それにこだわる理由は、自身の経験にある。

 小学5年生で摂食障害を発症。些細なことからダイエットを始めたのがきっかけだった。いま振り返れば、自分には生きている価値がないという思いが根底にあり、勉強や運動も価値を上げるためだけに頑張っていた。周囲の大人が楽しそうに見えず、自分の成長を止めたかったという気持ちもあったという。その病を完全に克服するのに、その後の約15年を費やした。

 当時、主治医に予防法を聞いても

「病名が付くような顕著な症状が出ないと、何もできることはない」

と一蹴され、疑問を持ったのがきっかけだった。

「自分の中に押し殺している感情を打ち明けることができたら、病気にまで至ることは無かったんじゃないかと思っています。ストレスが限界を超えて生じる精神疾患は、そのストレスを打ち明けた時に、丸ごと受け止めてくれる存在が一人でもいる、という環境があれば予防ができると考えています」

 前出の猪子さんは、予防策についてこう話す。

「勉強やスポーツなど何かをするときに、不安を煽って頑張らせるとうつ病につながるリスクを高めているようなものです。勉強で言えば、その本質はテストの結果ではなく、知識を得て理解力を伸ばし、達成感を得るという過程にあるはず。一歩一歩の達成感を大切にして親が認めていくことが、将来的にもうつ病から身を護る気質を育てていくことになります」

 ストレス社会を生き抜く術は、大人だけでなく、子どもにとっても必要な時代になっている。(AERA dot.編集部・金城珠代)

■『思春期のうつ病 4つの前兆』

(1)睡眠
 気持ちよく眠れているか、寝ることで疲れが回復しているか

(2)表情
 周囲に気を使ったり、演技で笑っていないか

(3)口数
 以前より著しく減っていないか

(4)けがやミス
 病気にかかりやすくなっていないか。疲れや睡眠不足で転んだり、めまいや腹痛がしたり、一見些細に見えるような体の不調が続いていないか

※思春期(9〜18歳)、監修:NPO法人「Light Ring.」




このニュースに関するつぶやき

  • スマホで夜遅くまでゲームして寝不足も原因で勉強の妨げになって悪循環になってないかなー?あとはラインが気になって人間関係の悪化?
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  • 受験なんて!って意見が出がちだけど、受験で将来が好転する人も多い。ただ、元塾講師として病気になったら辞めたら?と思ってた…。機会はまだまだある。親が諦められないんだよね。
    • イイネ!45
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