吉本報道「白黒明らかに」は安直か? 「真実は探り出すもの」島田紳助引退時にジャーナリストが警鐘を鳴らしていた

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2019年07月25日 12:02  Techinsight Japan

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岡本昭彦社長、会見で宮迫博之と田村亮の処分撤回を発表したものの…
吉本興業の一連の騒動。そもそもは吉本に所属するお笑い芸人が2014年12月に反社会的勢力の振り込め詐欺グループによる忘年会に参加して金銭を受け取っていたことを、今年6月7日発売の写真週刊誌『フライデー』が「よしもと芸人の闇営業」と報じたことに端を発する。当初は宮迫博之と田村亮をはじめ参加した芸人は「金銭を受け取っていない」としていたが、吉本が聞き取り調査した結果、宮迫と田村を含む11名が金銭を受け取っていたことが判明、6月24日に謹慎処分を下した。事態は宮迫と田村が7月20日に独自で謝罪会見を行って急展開する。吉本興業の不透明な運営と芸人への不誠実な対応が明らかとなり、吉本興業代表取締役社長・岡本昭彦がそれを受けた形で22日に記者会見を行った。22日は第25回参議院選挙の投開票日の翌日であったにもかかわらず、テレビ各社は岡本社長の会見を生中継。宮迫、田村の会見での訴えが「事実なのか?」誰もが岡本社長の発言に「真相」と「イエスかノーか?」を求めた。5時間半にも及ぶ会見であったが、結局は人々が求める回答は得られなかったと結論付けられた。しかしながら一連の報道だけで「真実」を求めるのはいささか安直すぎるかもしれない。およそ8年前、島田紳助さんの引退時に今回の事態を予見したかのようなある警鐘を鳴らしたジャーナリストがいた。

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まず宮迫博之と田村亮の会見により、吉本興業の岡本昭彦社長ら運営側が芸人たちに対して傲慢で不誠実なことが見えてきた。それを受けてテレビ番組で松本人志や加藤浩次が憤りとともに吉本の運営のあり方を指摘したのをはじめ、所属芸人がSNSで次々と不満をツイートしている。


吉本興業とその所属芸人は当事者であり、それぞれが深刻な事態に直面し意見し合うのは当然のことだ。ただ、物事は白黒簡単に付けられるものばかりではなく、今回で言えば宮迫、田村の決死の訴え、そして岡本社長のあいまいな発言を「真実」を見出していくための判断材料の「ひとつ」にするしかない。当事者たちはこれからどのようにすべきか話し合いながら時間をかけて進めることだろう。

対して当事者でない識者や一般の人々はメディアというフィルターを通して得た情報だけで、「白黒をはっきり」「真実を知りたい」と安易に答えを求め過ぎるように感じる。

「真実を求める」「善悪を明確にする」ことは永遠のテーマであり、ひとりひとりが十人十色の答えを持っているのではないだろうか。もちろんそれぞれの思いをツイートするのは自由で、様々な意見を出し合えるのはネットやSNSが発達した現代の特徴と言えるだろう。

闇組織との交際を理由に、2011年に芸能界から身を引いた同じ吉本の島田紳助氏の引退に際し、まるで未来を予知するように発言した人物がいる。令和元年7月8日、多臓器不全のため89歳で亡くなった竹村健一氏である。

竹村氏は2011年、島田氏の引退に世間の注目が集まり「一億総ジャーナリスト」と言っても過言ではない状況に以下のような発言で警鐘を鳴らした。

「マスコミが、芸能ネタなりスキャンダル事件を連日連夜、執拗に報道している時は注意しなさい。国民に知られたくない事が必ず裏で起きている。そういう時こそ、新聞の隅から隅まで目を凝らし小さな小さな記事の中から真実を探り出しなさい」

飽和状態となっている報道の一部分だけを切り取り、識者や一般の人々が「白黒明らかに」「イエスかノーかを明確に」と求めるのは安直すぎるのではないか? 竹村氏の言う通り、真実を知りたいと本心から願うならば、あらゆる報道のひとつひとつを隅から隅まで読み解き、そこから「探り出す」しか方法はないのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)
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