嵐×R3HABコラボは、中国のファンベース拡大のポイントに? 「Turning Up」リミックス版を解説

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2020年01月30日 11:11  リアルサウンド

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 2019年1月24日、嵐の「Turning Up (R3HAB Remix)」がデジタルリリースされた。リミックスを担当したのはオランダ出身の世界的DJ、R3HABである。


(関連:ARASHI「Turning Up (R3HAB Remix)」MV


 R3HABは「How We Party」や「Karate」など1億再生を超えるヒット曲を複数抱え、DJの人気指標を図る”DJ Mag Top 100″ではカルヴィン・ハリスやSkrillexといったビッグネームを抑えて3年連続TOP20入り(2019年時点)を果たしており、名実ともに世界トップクラスのDJの一人である。観客の高揚感を爆発させるような超アグレッシブなDJプレイや、洗練された美しいメロディを奏でるソングライティングスキルが特徴で、EDMブームが落ち着いた現在でも彼の人気は非常に高い。


●Remixの役割と、現在のダンスミュージックシーン
 さて、本楽曲で初めて「Remix」を知った人のために簡単に解説すると、Remix=リミックスとは「既存の楽曲の要素を使い、新たな楽曲を作る」という楽曲作成の一つの手法を指す。


 この手法は、単に別バージョンを作るというだけではなく、「既存の楽曲をDJセットに組み込めるようにする」という意味合いが大きい。DJはクラブやフェスティバルの現場で長時間に渡って一定のBPM(テンポ)でスムーズに曲を繋いでいく必要がある。しかし、多くのポップソングはそのままではDJセットに組み込むことが難しい。そこで、リミックスによってBPMを調節し、アレンジを変える必要があるのだ。また、ダンスミュージックはトレンドの移り変わりが非常に激しいため、その時々で最適なリミックスを施す必要がある。


 現在のダンスミュージックシーンでは、かつてのEDMから連想されるようなド派手なフレーズや音色に合わせて「ダン・ダン・ダン・ダン・…」とシンプルに4拍で踊るようなサウンドではなく、派手さを抑えながら「ダン・(チッ・)ダン・(チッ・)…」とハイハットなどで裏拍を強調していくクールなハウスミュージックがトレンドになっている。


 このサウンドはシャッフルなど細かな手足や腰の動きを活かしたスタイリッシュなダンスと非常に相性が良く、その様子をTik Tokなどに投稿するという流れも加速している。さらに2019年には象徴的存在であるMeduzaの「Piece of Your Heart (ft. Goodboys)」がジャンルの枠を超えて大ヒットするなど、このサウンドを中心にかつてのEDM前夜のような動きが起き始めているのだ。


●最新トレンド仕様に生まれ変わった「Turning Up」
 今回のリミックスでは、跳ねるようなリズムの効いたファンキーな原曲が、R3HABの手によってスタイリッシュなハウスミュージックに生まれ変わっている。ジャケットに描かれたネオンサインのような、どこか80年代を思わせるシンセの音色を活かしたイントロから、徐々に強くなっていくビート、原曲のサビを丸ごとビルドアップに使う大胆なアレンジ、そして〈Turning Up with the J-pop〉という原曲を象徴するキラーフレーズから高揚感溢れるシンセフレーズが高らかに鳴り響くメインパートへ。裏拍もしっかり効いており、思わずシャッフルダンスを踊りたくなるような、現行のダンスミュージックのトレンドと混ぜても遜色ない見事な仕上がりになっている。


 一方で、ファンにとって最も大切な、嵐のメンバーの歌声は極力加工を抑えて使われており、今回のコラボレーションにおけるR3HAB側のリスペクトを強く感じる。一点、櫻井翔のラップパート(サクラップ)が削られてしまっているのが実に残念なところだが、原曲よりBPMを上げているため、そのままでは本来のラップの良さが失われてしまうことを踏まえると、この判断もやむを得ないであろう。


●リミックスの意図を表現したミュージックビデオ
 同日に公開された本楽曲のMVでは、「カラフルな衣装で激しく踊る、多種多様な人々」と「ソファに座ったり、壁に寄りかかったりと静かに音楽を口ずさみながら楽しむ嵐」の様子が描かれるが、彼らは最後まで交わることはない。筆者個人としては、このリミックスで踊るメンバーの姿を是非観たい!と思っていたので最初は少し残念に感じたりもしたが、リミックスはあくまで「リスナーが踊るために作るもの」と考えると本MVの内容にも合点がいく。嵐の手を離れてもなお、ファンが嵐の楽曲を自由に楽しんでいる世界。それをこのMVでは描こうとしているのではないだろうか。


●R3HABとのコラボレーションが指し示す、嵐の今後の海外戦略
 今回の嵐とR3HABのコラボレーションには、ファンだけではなく、これまで彼らの楽曲を熱心に聴いてこなかった人々にも嵐の音楽を楽しんでほしいという意図を強く感じている。また、世界的なDJを起用している背景には「世界進出」という目的があることも間違いないだろう。ここで注目したいのが、アジア圏、特に中国への目線である。


  実はR3HABは中国国内で非常に高い人気を誇っており、近年では大晦日に行われる中国最大規模のダンスミュージックフェスティバルである『ISY Music Festival』への出演や、年間数十回もの中国国内での公演などを行っている。さらに2019年には中国のDANCING DRAGON MANAGEMENTとマネジメント契約を結ぶに至っており、R3HABの中国での活動は今後より活発化していくことが予想される。


 一方、嵐は2020年、外務省から『日中文化・スポーツ交流推進年』親善大使に任命され、春には北京での公演を控えている。元より根強いファンベースのある中国だが、今回のコラボレーションによって、中国国内のクラブシーンでは本楽曲をDJが何度もプレイすることになるだろう。今回のコラボレーションは、嵐が中国公演を成功させる、そしてさらなるファンベースの拡大を進める上で、非常に大きなポイントとなるはずだ。楽曲のリリース後にWeiboを覗いてみたところ、すでに数え切れないほど多くの現地のファンが今回のリミックスを楽しんでいる様子を確認することが出来た。


 「Turning Up」で軽やかに宣言した通り、世界中に嵐の音楽を届ける取り組みは今後さらに加速していくはずだ。今回のコラボレーションには実に驚かされたが、これから先、彼らがこれまで想像も出来なかったような景色を次々と見せてくれることを、心から楽しみにしている。(ノイ村)


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