“神待ち”で出会った15歳の少女を「引き取って育てる」――孤独な青年が起こした「未成年者誘拐」事件

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2020年06月07日 23:32  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

(C)オカヂマカオリ

 殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#009号法廷】

罪状:未成年者誘拐
被告人:O太(25歳)

<事件の概要>

 いわゆる“神待ち”(家出した少女が、その日の食事や宿を無償で提供してくれる男性=神をインターネットで探すこと)をしていた15歳の少女とTwitterで知り合い、ひとり暮らしする自宅に数日間泊めていたO太。少女は無事に保護されたものの、母親が被害届を出し、逮捕された。O太の動機は「ひとり暮らしを始めて、寂しかったので」。

被告が少女の母親に発した「普通じゃない」言葉

 大学時代に統合失調症を発症し入院、退院後は自立を目指して3年間グループホームで生活していたO太。非正規とはいえ就労できたため、ひとり暮らしを始めたそう。ただ、孤独感から「女性と暮らしたい」欲が湧き、Twitterで“神待ち”少女を探してみることに。O太が連絡してから6日後にリプライを送ってきた少女と運良く(悪く?)つながってしまったそうです。

 朝早く出勤するO太は、少女を自宅に泊めている間、寝ているところを起こさないよう支度したり、職場から「おはようございます」とTwitterのDMを送っていたりしたそう。わいせつ行為どころか、扱いにはかなり気を配っていたことがわかります。

 しかし、O太は自責の念に耐えられず、逮捕当日、電話で警察に相談していたとか。ファミレスで警察官と落ち合い、一緒に帰宅したところ、少女はスマホ片手にベッドでリラックスしており、さらに「自分で(ここまで)来ました」と主張。少女は保護されましたが、O太の留守中には、少女と母親がLINEでやりとりしていたこともわかっており、ずいぶん自由に過ごしていたようです。

 “どこにでもいる素朴な青年”という感じの被告。ドラマなどとは違い、生で見ると拍子抜けするぐらい“普通”な被告人は多いですが、彼はその中でも特に普通。「さっき寄ったコンビニの店員」だと言われても、納得してしまうほどです。情状証人として登場した父親の弁論も「子どもの頃から優しくて人のいい子でした。拾ったお金を交番に届けたり……」「病気でも真面目に勤務していました」「今後は二度と(犯罪を)繰り返さないよう見守っていきたい」と、ほぼ常套句でしたね。それだけに、O太の「寂しかった」という動機が、とても身近に感じられます。

 ただ、少女の母親に「娘さんを引き取って育てるつもり」といったメッセージを送っていたり、少女と暮らす前提で「家賃の一部を(少女の母親に)負担してもらい、フラットな付き合いをするつもり」と考えていたことが明らかになると、「ちょっと普通じゃないな」とも思いました。O太は思い込みが激しいタイプなのでしょうか。

 それにしても、気になるのは少女の母親です。家にオトコを連れ込んで、娘の居場所を奪っていたことが明らかになり、それだけでもひどいのに、他人の家から「お母さん心配しないで、大丈夫」とLINEをしてきた娘の心情を、どこまで理解していたのでしょうか? 本当に娘を心配していたら、もっと早く通報していたと思うのですが……。もちろん、保護者には監督責任があるわけで、むしろこの母親を証人として呼んでほしかったところです。

 O太が最後に「(神待ち少女を招き入れても)寂しさを埋められるものではなかった」と言っていたのは、ある種“救い”だったと思います。成人が未成年と2人きり、個室で一晩過ごすといった「みだらな性行為又はわいせつな行為」を疑われるようなことをすると、少女が被害を訴えた場合「青少年保護育成条例違反」になる可能性が出てきます。これでO太が「少女で寂しさを埋めることができる」と感じてしまえば、また同じことを繰り返していたでしょう。

 こんな世の中ですが、O太がきちんと罪を償ったあとは、少しずつでいいから実社会に慣れて、寂しさを自身で埋められるようになってほしいものです。

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