【映画館は時代を映す鏡—映画『ソワレ』外山文治監督、豊原功補プロデューサーの映画観】VOL.54 外山文治監督&豊原功補さん

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2020年08月24日 13:22  BOOK STAND

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俳優・村上虹郎さんが主演を務める映画『ソワレ』が、今週末8月28日(金)より公開となります。若い2人の男女による逃避行が描かれていますが、豊原功補さん、小泉今日子さんらが立ち上げた映画製作会社「新世界合同会社」の第1弾プロデュース作品としても注目を浴びています。本作を手がけた監督の外山文治さん、プロデューサーの豊原功補さんに本作について、そしてご自身の好きな映画のことなどを伺いました。

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------今作は「新世界合同会社」としての第1弾作品。どんなことを意識して作品づくりに臨みましたか?
豊原さん:近年日本のメジャーシーンで流通する映画が元来持つ固定概念をできる限り取り払いたいという思いで作品をつくりました。具体的にはクラウドファンディングを活用して支援者を募り、キャスティングに関しては積極的にオーディションを取り入れるなどしました。そして何より、外山監督が素晴らしい腕の持ち主ですので、これまで自分が感じてきたことや、外山監督ならではの作品に仕上がるようにこだわりましたね。

外山監督:プロデューサーに豊原さん、アソシエイトプロデューサーに小泉さんという"すごい布陣"の中で作品づくりできたことが僕にとって何よりも挑戦でしたが、スタッフ全員がチャレンジングな姿勢で臨むことができ、とても楽しかったですね。僕個人でいうと、ここ何年かは短編作品集の制作が主でしたが、今作はその"枠"がなかった。そういう意味でも自由に制作することができましたし、新しいことへのチャレンジとなりました。

映画『ソワレ』より

------作品づくりにおいて、大変だったことや苦労したことはありましたか?
外山監督:プロデューサーの豊原さんは、これまで業界トップの演出家たちと一緒に仕事をしてきた方でもあります。コミュニケーションをとりながら、納得いく答えを見出せるかどうか。ここに僕のなかで大きな闘いがありました。その一方で、豊原さんはとにかく作家性を前面に出すことを考えてくださり、従来の商業映画とはまったく異なる毛色を持つ作品になりました。

豊原さん:クラウドファンディングを通じて本当に多くの人たちが協力してくれた作品になりましたが、まだ観たことのない作品に対して僕らを信じて支援してくれた。その思いを裏切るわけにはいきませんから、少なからずそれがプレッシャーとしてはありました。そもそもプロデュース業そのものが初めての経験で手探り状態だったので、わからないこと、初めて知ることの多さに圧倒されましたね。


------ところで、お二人の好きな映画のジャンル、映画作品は何ですか?
豊原さん:僕は観るジャンルは幅広いです。コメディも好きだし、ジブリも好きだし(笑)。基本的には何でも観ます。

外山監督:不思議に思われるかもしれないですが、ラブコメディが好きなんです。実は20代の頃に、好きすぎてウディ・アレンに会いにニューヨークへ行ったことがあるんです。出待ちして「私の神様だ」なんて伝えましたけど嫌な顔をされて(笑)。僕の映画は、今回の『ソワレ』のように人間の内面を描いたり本質を探したり、そういう意味ではケン・ローチやリュック・ダルデンヌ、イ・チャンドンのような映画監督に影響されたりするんですが、趣味としてはウディ・アレンですね。

豊原さん:出待ちしたの!? 怖い人ですね(笑)。でもそういう話でいうと、僕もマーティン・スコセッシが日本にいることを聞きつけて会いに行ったんですよ。関係者にすごく叱られたりしながら近づいたんですが、結局は会えなかった......。

プロデューサーの豊原功補さんと外山文治監督


------そんな思い出があったのですね。ちなみに、思い入れのある一本というのはありますか?
豊原さん:僕は『太陽がいっぱい』(1960年、フランス・イタリア)ですね。この作品を観てから、自分の中での好きな映画第1位はいまもずっと変わりません。人の生きる機微や不条理、男女の美しさ、サスペンスがすべて詰め込まれている。若い頃に観ても今観ても本当に素晴らしく、観れば観るほどに味が出る。回数を重ねるごとに理解できることがどんどんと増え、プロデュースの仕事に就いたいまは技術や予算的なことなんかにも気づくようになりました。

外山監督:『ブエノスアイレス』(1997年、香港)です。17、18歳の頃に観て、初めて映画館の椅子から立てなくなりました。衝撃的な体験でしたね。

------昨今、ネットの動画配信サービスが充実したことにより映画館離れが叫ばれていますが、映画館にまつわる思い出というはありますか?
豊原さん:僕は新宿の育ちなので歌舞伎町の映画館によく行っていました。『ビッグ・ウェンズデー』(1978年、アメリカ)という作品が僕が若い頃にヒットしたんですけど、友だちと新宿の映画館へ行って。レイトショーだったんですけど、満員どころか立ち見のお客さんもいるくらいで、ドアがちゃんと閉まらないほどに混んでいました。同じ映画をみんなで興奮しながら観たことは、いまでも忘れられない光景ですね。

外山監督:僕は高校時代に宮崎県に住んでいたんですが、映画文化があまりないなかで、映画を観られる数少ない場所としてミニシアターがありました。『燃えよドラゴン』と『トレインスポッティング』の2本立てが観られるような雑食なミニシアター。今はもうなくなってしまいましたが、地方のそういった映画文化のなかで育ったおかげで、自分の創作の礎(いしずえ)ができたと思います。映画館に通い続けていたということは特別な経験だし、なくしてはいけない文化だと思いますね。

------最後に、本作『ソワレ』のみどころを教えてください!

外山監督:ジャンルにあまりとらわれない、自由度の高い作品を目指し、その通りにつくりあげることができた映画となりました。ダブル主演である村上虹郎さん、芋生悠さんの2人がとにかく魅力的で。撮影は和歌山県で行いましたが、雄大な景色の中で繰り広げられる2人の逃避行からはまさに目が離せませんよ!

豊原さん:世の中に男女の物語というのは星の数ほどありますが、『ソワレ』は本来映画を作るうえで根幹となるもの、すなわち監督の視点から見えていること、どこに帰着したいのか、何を心に描いているのかを映し出す、貴重な作品に仕上がりました。なによりオリジナル作品かつ純然たる"外山文治作品"となりましたし、主人公2人もそれに寄り添った映画らしい映画となりました。そして今回は「新世界合同会社」第1弾作品だったわけですが、映画に対して情熱を持っている人とたくさん出会うことができました。これを糧に次の作品や、自分の活動に活かしていきたい。とてもありがたい体験となりました。

------外山監督、豊原功補プロデューサー、ありがとうございました!

(写真/谷田貝一也 取材・文/小山田滝音)

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『ソワレ』
8月28日(金)よりテアトル新宿、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸ほか全国でロードショー

監督・脚本:外山文治
プロデューサー:豊原功補
出演:村上虹郎、芋生悠、江口のりこ、石橋けい、山本浩司 ほか
配給:東京テアトル

2020/日本映画/111分/5.1ch/シネスコ/カラー/デジタル/PG12+
公式サイト:https://soiree-movie.jp/
©️2020ソワレフィルムパートナーズ



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