若い女性に多く発症する多発性硬化症とは?

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2021年06月18日 15:00  QLife(キューライフ)

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 多発性硬化症という病気を知っていますか? 脳の情報を伝える神経の線を覆っている「髄鞘(ずいしょう)」が壊れ、脳からの情報がスムーズに伝わらなくなることでさまざまな症状が現れる病気です。どんな症状が現れるかは、患者さんによって異なりますが、代表的な症状として、視力が低下する、視野が欠ける、しびれる、力が入りにくい、歩きにくい、尿が出やすくなる/出にくくなる、疲れやすいなどがあります。多くの患者さんの症状は、良くなったり(寛解)、悪くなったり(再発)を繰り返します。患者数はおよそ2万人¹⁾で、女性の発症率は男性の2〜3倍。20〜30代の女性で多く発症し、就職や妊娠・出産といったライフイベントにも大きく影響します。病気になる原因がよくわかっていないことや、なかなか治らないこと、病気にかかっている人が少ないことなどから国は、病気の研究を進めたり、患者さんを経済的に支援したりするために、多発性硬化症を「指定難病」の1つに定めています。

「そのバッグかわいいね」から多発性硬化症への理解を広げる

 製薬会社のバイオジェン・ジャパンは多発性硬化症の認知度を高めるため、「多発性硬化症マイバッグデザインプロジェクト」を実施。患者さんとデザイナーがタッグを組み、オリジナルデザインのマイバッグを制作しました。6日のイベントでは、完成版のマイバッグが披露されました。プロジェクトに参加した5人の患者さんが込めた思いとともに、マイバッグのデザインを紹介します。

 加地彩さん(多発性硬化症歴10年)はマイバッグのデザインについて、「気分が上がる、かわいいもの」「多発性硬化症について話すきっかけになるもの」を要望したそう。マイバッグは、両手があくようにサコッシュと肩掛けホルダーの2種類。


加地さんデザインのマイバッグ(バイオジェン提供)

 たんぽぽのように見える左上の絵は、多発性硬化症が起こるメカニズムを表しており、手足や目に障害が出ることや、車いすの車輪なども描かれています。担当したデザイナーの白澤真生さんは、「病気について何も知らない人とも『そのバッグかわいいね』という会話から多発性硬化症について話せる機会を持てるデザインを目指した」と説明。ポジティブさをイメージして、黄色に仕上げたといいます。

 プロジェクトの統括役を担ったデザイナー/プランナーの佐藤ねじさんはこのバッグについて、「ファッションとして成立しながら、病気の説明にもなる」と評価。「バッグだけで使うのはもったいない」とコメントしました。またイベントに参加した医師の大橋高志先生(東京女子医科大学附属八千代医療センター脳神経内科)は、「車いすを使っている人に、どうしたんですかとは聞きにくいこともある。このバッグが話のきっかけになるのではないか。子どもに説明するのにも役に立ちそうだ」とコメントしました。

 大石菜摘さん(多発性硬化症歴2年)がデザインしたマイバッグは、お花とリボンがモチーフになったもの。英語で多発性硬化症を意味するmultiple sclerosisの頭文字「MS」をリボンで表現しています。


大石さんデザインのマイバッグ(バイオジェン提供)

 大石さんは発症したばかりの頃、多発性硬化症についてインターネットで調べていたところ、「多発性硬化症は美しい人がなる病気」と書かれていたことが印象的で、その名に恥じないようにしようと決意したそう。そこで、多発性硬化症患者さんの美しさやアイデンティティの象徴になるバッグを制作したといいます。右側に描かれているピンクのガーベラの花言葉は、「感謝」「崇高美」(気高くて美しいこと)。大石さんは、「完璧なデザインのマイバッグを作ることができた」と喜びをあらわにしました。担当したデザイナーの中屋辰平さんは、「花を自分自身に見立てて、多発性硬化症というアイデンティティをまとって力強く生きている姿を表した」と解説しました。

 小田桐美穂さん(多発性硬化症歴3年)は、大好きなロックという要素を入れることや男性も使えるバッグにしたいという希望を伝えたといいます。


小田桐さんデザインのマイバッグ(バイオジェン提供)

 職場の人に「目が震えているよ」と指摘されたことが、多発性硬化症の診断につながったという小田桐さん。診断がつくチャンスを手に入れられるようにと願いを込めて、「GET A TICKET」と記載したそうです。デザインを担当した白澤さんは、「MSという文字が稲妻のようになっているのは、電池が切れてしまった患者さんに電気を送っているビジュアルを示している」と説明しました。

「頼ることは弱さじゃない。前向きに生きていこうとする強さだ」

 末松恵さん(多発性硬化症歴12年)は、「多発性硬化症になってたくさんの方と出会って、生きる力や心の元気、笑顔につながってきた」と話し、これがマイバッグのテーマになったといいます。


末松さんデザインのマイバッグ(バイオジェン提供)

 末松さんは、「同じ病気の仲間や別の難病の方と出会えた患者会は、共感し安心できる場所になった。他の方が趣味を楽しんでいる姿、車いすでも杖でも出かけていく姿をみて、未来への希望、勇気、元気をもらった」と自身の経験を語りました。また、「病気になったばかりの頃は、誰にも頼らず、迷惑をかけないようにがんばろうとしていた」と振り返った上で、「頼ることは弱いことじゃない」と強調。「周囲は手を貸したくてもどうしたらいいかわからない。頼ることはすごく勇気がいる。でも、自分のことを相手に伝えて頼ることで、問題を乗り越えて前向きに生きていこうとする、それは強さだ」と言葉に力を込めました。

 十字のマークは医療従事者、ハートは心が落ち込んでいるときに優しく支えてくれる人、太陽は元気なときに勇気をくれる人、MとSは多発性硬化症を意味する英語の頭文字を表しているといいます。末松さんは、「1人じゃない。つながっているよと、マークを見ながら周りの人の顔を思い浮かべてもらいたい」と話しました。デザインを担当したのは中屋さん。「すべての顔が中央に向くようにした」と工夫を説明しました。

 狐崎友希さん(多発性硬化症歴7年)は、「多発性硬化症を知ってもらうことと、バッグを使う人たちがつながりを感じること」がテーマだったといいます。多発性硬化症と視神経脊髄炎の患者会「M-N Smile」の代表を務める狐崎さんは、「指定難病は多発性硬化症を含め333疾患、90万人超の患者さんがいる。指定難病ではない難病も数多くある」と前置きし、「そういう方たちがみなさんに交じって一生懸命生きていることを知ってほしい。難病患者がいることを当たり前に受け入れられる世界になってほしい」と話しました。狐崎さんがデザインしたバッグはこちら。


狐崎さんデザインのマイバッグ(バイオジェン提供)

 狐崎さんは、男性も持てるデザインを意識したそうです。デザインを担当した白澤さんは、「狐崎さんの話を聞き、難病患者ではない人も含めて、すべての人のつながりを意識した。杖をついている人、車いすの人、傘をさしてサポートする人を入れている」と説明しました。

 これら5つのデザインのマイバッグは、今後、一般の方向けに販売予定。街中で見かけた際は、マイバッグをきっかけに多発性硬化症患者さんの話を聞いてみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

1)厚生労働省『令和元年度衛生行政報告例(令和元年度末現在)』(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450027&tstat=000001031469)

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  • 女性は多発性硬化症以外でも自己免疫疾患になりやすい。
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