ブレイク中のヒコロヒー 賞レース活躍も一発ギャグもなし…売れっ子なのはナゼ

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2021年07月24日 11:30  AERA dot.

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写真ヒコロヒー(C)朝日新聞社
ヒコロヒー(C)朝日新聞社
 テレビ朝日には「バラバラ大作戦」と呼ばれる深夜バラエティ枠がある。そこで放送されている14番組の中で一番面白い番組を決める第2回「バラバラ大選挙」が行われ、『キョコロヒー』が視聴者グランプリに輝いた。

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『キョコロヒー』は、ピン芸人のヒコロヒーと日向坂46の齊藤京子が出演する異色のダンスバラエティ番組である。テレビのお約束的な馴れ合いを拒否して微妙な距離を保つ2人が、低いトーンで平熱のトークを展開する。取って付けたような「ダンス」の要素も見どころだ。

 レギュラー出演しているこの番組だけでなく、ここ1年ほどヒコロヒーをテレビで目にする機会が増えてきた。ニホンモニターが公開した「2021上半期ブレイクタレント」でも名前が挙がっている。

 それまでほとんど世間に知られていなかった芸人がテレビにたくさん出るようになるためには、何らかのきっかけが必要である。

 代表的な例としては「『M−1』『R−1』などの賞レースで活躍する」「『おもしろ荘』などの新人発掘系の番組で一発ギャグやキャラが注目される」「YouTubeやInstagramやTikTokでバズる」などがある。

 だが、ヒコロヒーの売れ方はこれらのどのケースにも当てはまらない。これといったきっかけがないまま、じわじわと着実に仕事を増やしてここまで来ている。

 彼女に注目が集まった最初のきっかけがあるとすれば、先輩芸人のみなみかわとコンビを組んで『M−1グランプリ』の予選に挑んだことだ。2019年と2020年の二度にわたって出場しているが、結果は3回戦敗退と準々決勝敗退だった。

 通常であれば世間の目に留まらないような戦績ではあるのだが、ネタの内容が注目されて、バラエティ番組などで話題になった。

 このときに2人が披露したのは、女性芸人が日常的に男性芸人からパワハラ・セクハラまがいの仕打ちを受けている、ということを告発するようなネタだった。彼らは男女を逆転させてその状況を再現することで、お笑い界で肩身の狭い思いをしている女性芸人の現状を浮き彫りにした。

 ヒコロヒーは、あくまでも笑いを取るための手段としてその題材を選んだだけだと振り返っているが、社会的な関心事であるジェンダー問題に堂々と斬り込んだように見える内容だったため、お笑いファン以外の幅広い層から注目された。

 このあたりからじわじわとヒコロヒーのキャラクターや芸風が脚光を浴びるようになり、ネタ番組、トーク番組、ドラマなど、幅広いジャンルの番組に出演するようになった。

 ヒコロヒーはもともとネタの面白さに定評のある芸人だった。言葉のセンスや着眼点に独特のものがあり、どの芸人とも似ていない。持ちネタの中には、彼女が日常で感じている怒りや不満がベースになっているものが多い。それ以外のネタでも、ヒコロヒーならではの偏見や皮肉っぽいモノの見方が垣間見える。

 ヒコロヒーの芸風を一言で言うと「シャバ僧ハンター」である。「シャバ僧(しゃばぞう)」とは一昔前のヤンキー用語で「シャバい人」のこと。「シャバい」とは「さえない・臆病だ・みっともない」というような意味である。ヒコロヒーは平成生まれの女性でありながら「シャバい」という言葉を当たり前のように使いこなし、「シャバ僧」を決して許さない。

 自分の中に「こういうやつはシャバい」という明確な基準があり、あらゆる表現がそれを軸にして展開される。だからこそ、ヒコロヒーの芸には揺るぎない一貫性がある。漫才、ピン芸、トーク、演技、執筆業など、どんな分野の仕事をしていても見せる顔は同じ。自然体を超えた超自然体。そこが新しくて面白い。

 ヒコロヒーには派手な一発ギャグもわかりやすいキャラも必要ない。もちろん特定の思想やメッセージも要らない。初の冠番組であるはずの『キョコロヒー』でも普段と変わらない落ち着きを保つ彼女は、シャバい世の中に活を入れる現代の救世主となるかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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