竹内由恵アナ、三浦瑠璃氏に通ずる視聴者を“イライラさせる”という才能

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2023年03月31日 00:12  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「天然で」竹内由恵アナ
『あちこちオードリー』(3月22日、テレビ東京系)

 20代の頃は局アナとして名前を売って人気を獲得し、やがて寿退社。 その後はフリーに転身して、家庭とのバランスを取りながら仕事を行う。女子アナがそんな生き方をしている時代があった。

 結婚すれば、夫の稼ぎもあるため、毎日テレビに出るようなあくせくした働き方をする必要はなくなり、ある程度自由に仕事ができるようになる。 高い知名度ゆえに講演会を頼まれたり、女性誌から連載を依頼され、夫婦関係や子育てについて書くなど、これまでとは違った仕事も増えるだろう。特に後者は、新たなファン層を獲得することにもつながり、仕事の幅を広げるチャンスになる。

 しかし、もはや、この“売り方”は現在、ほとんど実行不可能といえるだろう。まず、テレビを見る人が少なくなっているので、誰もが知っている“人気女子アナ”が育ちにくい。そうなると、マスコミも彼女たちを扱わなくなり、世間の女子アナへの注目度自体が低くなってしまう。女性誌も休刊が相次いでいるため、テレビから女性誌へという“異動”も難しくなっている。そんな女子アナ受難の時代にフリーになると、どうしても苦労ばかりが予想されるものだ。

 3月22日放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)に出演した元テレビ朝日のエースアナ・竹内由恵。医師と結婚しテレ朝を退社。夫の勤務地・静岡に移住した竹内アナは、フリーとなり、肩書をアナウンサーからタレントへと改めたそうだ。

 「できるだけバラエティ番組に呼んでいただきたい」という竹内アナは、同番組のアンケートを3回書き直し、マネジャー陣と1時間くらい打ち合わせをしたという。加えて共演者のラジオ、YouTubeチャンネル、有料配信サイトもチェックするなど、“勉強”を怠らない。

 竹内アナいわく「テレビはできる人、面白い人、頑張る人でできている」とのことで、「自分は(できる人、面白い人の)どっちでもないな」と思ったため、「頑張る人って枠もあると思う」という結論に至ったそうだ。体を張るロケも辞さないといい、ローションまみれになる仕事もOKと話していた。

 芸能界で生き残りたいという意気込みをひしひしと感じたが、肩書はアナウンサーのままでいったほうがいいのではないだろうか。なぜなら、超狭き門であるキー局アナウンサー出身者はごく少数である一方、タレントは無数にいる。自分の肩書をタレントにすると、その分、ライバルも一気に増えてしまうからだ。「元局アナの中で一番できる人、 面白い人」を目指すほうが、トップを獲りやすいのではないか。

 それに、竹内アナや周りの人は、彼女の大いなる才能に気づいていないように思う。

 時代によって、タレント に求められるものは違ってくるが、今の時代、人をいかに“イライラさせるか”が重要視されていると感じる。視聴者は人をイライラさせるタレントに引き寄せられ、そのイライラをネットに書き込む。すると次第に「あの人は人をイライラさせるらしい」と話題になっていく。今は、こうして人気者が生まれる時代のように思うのだ。その代表格は、国際政治学者・三浦瑠麗氏ではないだろうか。

 三浦氏の発言を一言で表すなら「根拠なく、自信たっぷり」といえる。『ワイドナショー』(フジテレビ系)が、アンジャッシュ・渡部建のテレビ復帰が進まないという話題を扱った際、三浦氏は「自分の傷つきを他人に投影するの、よくない」とコメントしていた。

 まわりくどい、わかりにくい言い方をするのも三浦氏の特徴だが、私はこの発言を「夫に不倫された妻が、渡部のスキャンダルをきっかけにそのとき受けた屈辱と心の傷を 思い出し、だから『許さない』と怒っている」と解釈した。しかし、渡部の復帰がうまくいかないのは、世の不倫された妻のせいではなく、スポンサーの許可が下りないからではないだろうか。

 正面切って渡部を擁護する人がいないので、三浦氏があえてそちら側に回った可能性は否めないものの、「世の不倫された妻のせいで、渡部が復帰できない」と言わんばかりの発言に「違いますけど?」とイライラした人もいたはずだ。

 また三浦氏は、安倍晋三元首相の国葬の際、シースルーのスケスケ喪服を着て話題になったが、国葬という歴史的な行事に、人をイライラさせる要素をぶっこんでくるのが三浦氏のすごいところといえるだろう。

 三浦氏ほどではないが、竹内アナも割と人をイラッとさせることが多い。現在、静岡在住の竹内アナが、2022年5月26日放送の『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系)に出演した際のこと。「静岡から番組があると東京に来させてもらって、子どももいるので、なかなか今までのようには仕事ができないと知人に相談したら、『そんなことない、都落ちだなんて思わないで』って言ってきたんですよ。思ってねーし」と発言していた。

 しかし、別の話題の際には「伊勢丹で服を買って配送依頼書を書く際に、住所書こうと思ったんですけど、静岡県って書くのが、なんかちょっと、一瞬ためらいました」と 話し、同番組司会の上田晋也に「都落ちだと思ってんじゃねーか」とツッコまれていたのだ。

 「静岡に住んでいることは恥ずかしい」いう気持ちが垣間見える言い方には、やはりイライラさせられるが、彼女の秀逸なところは、それが“ほどよい”イライラである点ではないだろうか。

 一昔前のバラエティ番組は、今よりもっと毒のある発言が求められていたと思う。例えば、「都落ちだと思わないで」と言ってきた知人に対し、「お前なんて〇〇に住んでいるくせに」と言い返すくらいの過激さが必要だったが、 今の時代、ここまで言うと、静岡だけでなく、〇〇に住んでいる人もコケにしたことになり、竹内アナの敵が多くなりすぎてしまうのだ。その点、「思ってねーし」で留めた竹内アナは、視聴者に“ほどよい”イライラを与えたのではないか。

 『あちこちオードリー』で竹内アナは、学生時代の自分のことを「たまに言う一言でクラス全員が笑ったり」「(狙って笑わせたわけではなく)天然で」と分析していた。彼女は天然ゆえに人をイライラさせるけれど、だからこそ、後味がそう悪くならず、彼女自身も叩かれすぎないという稀有な才能を持っているような気がする。この能力を生かさない手はないだろう。

 過激さが敬遠される一方、それでもある程度、悪役や憎まれ役が必要であるバラエティ番組において、竹内アナの“ほどよい”イライラは、「いいネタを提供した、いい仕事をした」と評価されるように思うのだ。

 なお竹内アナは、『あちこちオードリー』放送後から約1週間後の3月28日に、第2子妊娠を発表した。もしローションぬるぬる仕事なんてやっていたら、おなかの子どもにどんな悪影響があるかわからず、番組に苦情が殺到することだろう。当分、体を張る仕事はあきらめて、天然ボケならぬ天然イライラを極めていただきたいものだ。

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