「死にたい」と言う認知症の母、「誰も止めてねえよ!」と心の中で叫ぶ娘、それでも介護は愛おしい

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2023年05月28日 11:00  週刊女性PRIME

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カータンさん一家(イラスト/カータン)

 

 ブログの月間アクセス数800万超、人気ブロガーのカータンさん。2007年にブログを開設以来、子育てや日々の暮らしについての投稿が、主婦層を中心に多くの支持を集めてきた。コミカルなイラストと、クスッと笑えるオチのきいた展開が好評だ。

 そんなカータンさんの日常を大きく変えたのが、実の両親の介護だった。

視力を失った父に続き母も認知症に

 ことの始まりは7年前、当時79歳だったカータンさんの父「ヒロシ」が突然、緑内障で視力を失ったことだった。

「明るくて冗談が好きな父でしたが、目が見えなくなってからはイライラして母にあたるようになって。母はそのストレスから老人性うつ、さらに認知症になってしまったんです」(カータンさん、以下同)

 ヒロシさんはさらに幻覚を伴う「せん妄」を起こすように。母「イクコ」は入浴や着替えも介助が必要なほど認知症が進行してしまう。

 未知の世界だった介護に「飛び込むしかなかった」と言うカータンさん。何よりつらかったのは、親の変化を受け入れられないことだった。

「両親は留学生をホームステイさせたり、私の仕事中は娘たちの面倒をみてくれたり、活動的で頼りになる存在。ずっと元気でいるような気でいたので、初めて見る親の姿にすごくショックを受けました。

 介護は徐々に手がかかるようになりましたが、思い返せば、精神的にいちばんしんどかったのは、現実を受け入れられなかったこの時期。両親は『子どもたちの世話にはならない』って言ってたじゃん、話が違うよって」

 そんなとき、カータンさんの2歳年上の姉「かおさん」が、介護保険制度を利用しようと提案。手続きを進める。

「何より助けられたのは、『地域包括支援センター』に行き、ケアマネジャーさんとつながったこと。昨日まで悩んでいたことは何だったんだと思うほど、的確な答えが返ってくるんです。ケアマネさんの頭の中には、膨大な高齢者のケースと対処法のデータが入っているんですね」

ダークな気持ちはグチで吐き出す!

 かくして、カータンさんと姉のかおさんはタッグを組み、実家に通いながら両親の介護を続けることに。配食サービスや訪問介護を利用して、助かった部分はあるが、家族として認知症の親の困った言動と向き合っていかなくてはいけなかった。

「母は大切なモノほど、どこかにしまっては忘れてしまう。いつぞやはテーブルに置いた大事な書類が、私がトイレに行った少しの間に行方不明に! もう大捜索ですよ」

 実家に忘れ物をしようものなら、“もう見つからない”と腹をくくるくらいの覚悟が必要。でも、大慌てのカータンさんの横で、「知らないわ」とすまし顔のイクコさんの姿に思わず笑わされてしまう。

「無邪気な母の姿に怒りも消えてしまうというか。それに、いちいち怒っていたら身が持たないんです(笑)」

 また、ブログではカータンさんのグチも容赦ない。

「ある時期、母はこちらが何をしても感謝の言葉もなく『死にたい死にたい』と繰り返していて。だんだんストレスがたまってきて、『誰も止めてねえよ!』と心で叫んだりして(苦笑)」

 カータンさんは、「こんなことを言うと『親に対してなんてことを』と言われるかもしれないけど」と話を続ける。

「育ててくれた親は大切にしたいし、いい思い出もたくさん。本気で死んでほしいなんて思いませんよ。ただ介護って、やはりたいへん。『親のことをこんなふうに思ってはいけない』と、あまりまじめに考えすぎると自分を追い詰めてしまうと思うんです」

 カータンさんの絶妙なグチに「そう!そう!」と共感するブログファンも多い。

「とにかくひとりで抱え込まないことが大切かと。私の場合は姉とのグチ大会がガス抜きになりましたが、介護中の友人など、思い切り発散できる場が絶対に必要です」

今の親の姿に未来の自分を重ね

 両親同時介護にとまどいながらも、カータンさんはユニークな対応で切り抜けていく。

「父の“せん妄ワールド”は、奇想天外で楽しくて。あるときは、『お父さんに弁当をくれる女性がいるんだ』と。

 私が『どんな弁当箱?中身は?』と興味津々に聞くと、アルマイトの弁当箱で、中身はお赤飯だと。いつの時代にタイムスリップしてるんだか(笑)」

 一方、イクコさんは家にある菓子を食べつくしてしまうため、隠しておくが……。 

「なぜか野生の勘で探し出すんですよ(笑)。バレるたびに『どうだ、ここならわかるまい!』とこっちも意地になって隠し場所を変えるんです」

 普通ならキツイ介護中、カータンさんの心の余裕はどこから?

「母の横に、将来の年老いた自分が見え出したんです。例えば、しっかりものの長女は、おばあちゃんの認知症が進まないようにと、しりとりをさせたり厳しいんですが、もうそこには、答えられずにオロオロする年老いた私がいて(笑)。

 いずれは私も老いていく。親にも『もっとやさしくしようよ〜』って思っちゃうんです」

 両親と過ごした日々を思い出し、懐かしさで胸がいっぱいになったことも。例えば、実家の片づけをしていると、フルーツ搾り器には、母親が作ってくれたジュースのおいしさが、父親のスーツにはイキイキと仕事をしていたころの姿が思い返された。

「母がヘルパーさんを拒否したり、父のせん妄に付き合って寝不足になったり、介護中は困りごとの連続。

 でも両親が自分たちにしてくれたこと、頑張ってきたことを思うと、親ってやっぱり愛おしい。そう思うと片づけ中もついウルウルして、ちっとも作業が進まなかったことも」

父と姉を見送り、ひとり母の介護中

 ヒロシさんは次第に足腰が弱くなり、夫婦2人の生活が困難になったため、特別養護老人ホームに1年間の待機期間を経て入所。昨年8月、眠るように亡くなった。

 その後、乳がんで療養中だった姉のかおさんの容体が悪化。父の死のわずか3か月後、カータンさんは、介護の戦友だった姉のかおさんも失う。

「つい『ちょっと聞いてよ、ママがね……』と姉に電話しそうになって、もういないんだと再認識する寂しさといったら……。なのに、姉の死を理解できない母の能天気さが恨めしくもありました。

 娘に先立たれるというつらさを感じないですむのは、幸せともいえます。でも昔の母なら愛する娘の手を握って励ましたり、涙が枯れるまで泣きたかったりしたかもしれない。認知症という病気の残酷さを思い、切なくなります」

 今もカータンさんは実家に通い、母親の介護を続ける。

「先日テレビで、認知症の親への接し方をクイズ形式で紹介していて、私、全問正解できたんですよ。ケアマネさんにも伝えたら、『親御さんとしっかり向き合ってきたからですね』と言われて、涙が出そうになりました」

 とはいえ、カータンさんは「親の面倒は子がみるべき」とは決して考えないという。

「だって、私だって若くはないですよ! 例えば、夏のリゾートに行きたくても、自分で動ける間に夏はあと何回あります? そう思うと、こんなことばかりしてはいられない、と考えるのもホンネ」

 自分には自分の人生がある。24時間親に付き添えない。介護のプロの助けを借りて、自分がいないときに何か起こっても、そこは割り切る、と決めている。

「冷たいように思われるかもしれないけど」とカータンさんは前置きするが、そのほうがストレスをためず、親の心に寄り添う気持ちにもなれるのだろう。

「親の介護をしていると、人の一生を見せられているようで。だからこそ、自分の人生も大切にしなきゃと思うんです。そのためにはまず介護のプロを味方にせねば!親の様子がアヤシイと思ったら、迷わず地域包括支援センターに駆け込んでくださいね」

カータン流 介護の心得
●介護のダークなグチを吐き出せる場をつくる
●親の衰えではなく、「できること」に目を向ける
●「もし自分だったら」と親の気持ちになってみる
●介護のプロを味方につけ、自分の人生を大切に!

カータンさん(55歳)●元CAの主婦ブロガー。2007年にブログ「あたし・主婦の頭の中」を開設。近年は親の介護を中心に投稿。近著の『健康以下、介護未満 親のトリセツ』、『介護ど真ん中! 親のトリセツ』(KADOKAWA)も好評。

(取材・文/志賀桂子)

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  • 腹が立ったりとんでもない事(�����漏らしてそれを綺麗にしようとしてよけい拡げて汚染とか���顼�áʴ��)立て続けにおこしたり、でも…まだ生きてくれてるからなのよね
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