クリスタル・ケイの母シンシア、アメリカ海軍の専用地で「夢のような暮らし」を振り返る

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2023年06月19日 08:10  週刊女性PRIME

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横浜で歌っていたころのシンシア。『マジック』や『BarBarBar』などは業界関係者がよく出入りして、デビューの足がかりの場になっていた

 在日三世として東京に生まれ、人気シンガー、クリスタル・ケイ(37)を女手ひとつで育てたシンシア(60)。横須賀勤務の海軍の男性と結婚し、娘を出産。憧れだった根岸住宅地区で暮らし始める。

「根岸に越したのは娘が1歳のときでした。根岸住宅地区はフェンスに囲まれたアメリカ海軍の専用地で、海軍兵は結婚するとそこで家族と暮らせます。ただ根岸は海軍の中でもとりわけ人気が高く、私たちも申し込んでから入居まで1年近くかかりました。

 根岸は夢のような場所でした。広い敷地に洋風の家が点々と立っていて、よくアメリカのドラマで見るような、のどかな住宅街の風景そのものです。私たちの家は2LDKの平屋で、リビングは25畳くらいあったでしょうか。芝生の庭のほかに、裏庭もついています。家賃はタダで、電気、ガス、水道代も必要なく、支払うのは電話代だけ。海軍で働いているといろいろな補助があり、海軍病院で産んだ娘の出産費用もすべてタダでした。

 フェンスの中には病院やスーパー、レストラン、公民館やプール、ボウリング場、映画館もそろっています。スーパーは免税で、たばこやお酒がぐっと安く手に入ります。パトロールが随時巡回しており安全なので、子どももその辺で遊ばせても安心。みんな顔見知りで、根岸全体がひとつの村みたいで、本当に天国のようでした。根岸にいたのは計6年で、夫と別居するまで暮らしています」

 根岸に引っ越して間もなく、夫の故郷のアメリカ・ニュージャージーへ里帰り旅行を計画する。海軍の45日間の有休を使った長期滞在を予定していた。

暮らし始めた米海軍の専用地は夢のような場所

「夫の親族とはまだ会ったことがありませんでした。娘を連れていけば、孫の顔も見せられます。ところが出発直前になって、夫にどうしても外せない仕事が入ってしまった。夫は私たち母子に一足先に向こうへ行ってほしいと言います。まだ歩くか歩かないかという娘を抱え、見知らぬ土地へ行き、初対面の彼の母親の家で寝泊まりをする─。夫は『ごめんね』と言うけれど、私はもう不安と夫と離れる寂しさとで胸がいっぱいです。

 海軍には横田基地に専用の大型旅客機があって、私たち家族も無料で同乗させてもらえます。ただ軍の事案や格付けによって乗る順番が随時変わるため、実際に搭乗できるかどうかはそのときになってみないとわからない。例えば政府に何か緊急事態が発生したり、大佐や中佐、少佐が急きょ乗るということになれば、下の階級の人間はどんどん後回しにされてしまいます」

 ターミナルで娘を抱えて搭乗を待っていると、乗るはずだった旅客機が満席になったと告げられた。かわりに「C-5なら乗れる」と言われるが─。

「C-5は海軍の中型機で、迷彩柄のいわゆる輸送機です。あれに乗るのかと愕然としたけれど、そうでなければ明日の午後の便になるという。しかも横田にある軍の宿泊施設はもう埋まってしまったということで、翌日の便にするとなると、ターミナルのベンチで寝るか、いったん家に帰って出直すしかありません。横田から根岸の家まで2時間半はかかります。幼い娘を抱いて、45日分の大荷物をまた運び、出直すなどとうていムリというものです。C-5に乗ろうと、その場で腹をくくりました。けれどそれは、とんでもない試練を伴う旅の始まりでした」(次回へ続く)

<取材・文/小野寺悦子>

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