新型車「EX30」はボルボらしい? らしくない? デザインを詳しくチェック!

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2023年06月20日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ボルボが新型電気自動車(バッテリーEV=BEV)「EX30」を発表した。イタリアでワールドプレミアしたばかりのEX30を1週間後に東京で公開するなど、ボルボはこのクルマを日本で強くアピールしたい様子。どんなクルマなのか、デザインを中心に実車を確認してきた。


○ボルボらしさと新しさが絶妙に融合



ボルボは2030年にBEV専門のブランドになると宣言している。それを実現するためには、多くの人に手が届く安価な車種を提供することが不可欠だ。EX30は、そのための解答のひとつといえる。



車名に「30」という数字が使われるのは、かつて日本でも販売された3ドアハッチバック「C30」以来。ボルボ車の車名は「XC40」「XC60」「XC90」といったように数字で大きさを表しているが、EX30はボルボ最小のSUVとなる。


EX30は、プレミアムブランドではアウディ「Q2」や同じミラノで少し前に発表されたレクサス「LBX」などと同じ「Bセグメント」に属するクルマだ。しかしQ2はエンジン車、LBXはハイブリッド車であり、「プレミアムブランド」で「Bセグ」の「BEV専用車種」というのは現時点では希少な存在になる。



ボルボのBEV専用車種としてはすでに「C40」があるが、あちらはエンジン車もあるXC40と基本設計が共通だ。対するEX30はプラットフォームからして違っている。ゆえにコンパクト化が達成できたようだ。


デザインもC40を含めたこれまでのボルボと違う部分が多い。まず全体のプロポーションは、全長に対してノーズが短く、キャビンが長い。エンジン車よりパワーユニットがコンパクトなことをいかしたパッケージングといえる。



ノーズやルーフのラインが弧を描いていることもわかる。C40はクーペSUVなのでルーフはカーブしていたが、EX30はノーズも先端が大きく下がっている。空気抵抗を抑えるためだというが、ここでもエンジンがないメリットをいかしている。


それでもボルボに見えるのは、「ショルダー」と呼ばれる窓下の部分に厚みを持たせたキャラクターラインのおかげだろう。最近はボディと一体化しがちなドアハンドルを、いかにも頑丈そうなグリップ型のままとしたのは、事故の際の救出を考えたためもあろうが、ボルボらしさのアピールにもつながっていると思った。


○ボルボの節目を彩ってきたあの色も用意!



EX30とC40のフロントを比べて見ると、C40は従来であればグリルのあったところをパネルにしてBEVであることをアピールしていたが、EX30は全面をフラットなパネルとし、中央にロゴマークを置き、左右の角にヘッドランプを置くスタイルになった。


ヘッドランプが北欧神話をモチーフにした「トールハンマー」型なのは従来と同じだが、EX30は矩形のレンズの中にハンマーを入れるのではなく、LEDでハンマーを描いてフロントマスクの隅に置いており、ゼロベースで顔を作り上げていったことがわかる。



リアはコンビランプが目立つ。ボルボ伝統の縦長を継承しながら上下に分割し、下側はフロントマスク同様、パネル全体を黒い枠で囲むことで、デザインとしての統一感を出している。


全体的な印象としては、ボルボらしさと新しさの融合が絶妙だ。新しさを表現するアイデアの引き出しが豊富なブランドだと感心した。デザイン先進地域である北欧の実力を、あらためて見せつけられた感じだ。



ボディカラーは5タイプ。白、黒、グレーなど定番の色が並んでいる中で、唯一目立つのが「モスイエロー」だ。コンパクトSUVにふさわしい元気な色だし、かつての「1800ES」や「850T-5R」など、ボルボのエポックメイキングな車種がイエローをまとっていたこともありヘリテージ性を感じさせる。



インテリアもまた、ボルボらしさと新しさの融合に感心した。なかでも真っ先に気づくのは、運転席の前のメーターがなく、ボルボではおなじみの縦長のセンターディスプレイに一体化されたことだ。


テスラ流ともいえるが、速度計などの性能情報はディスプレイの最上段にまとめ、中央にナビゲーションやエンターテインメント、下にエアコンと機能別にゾーンをわけているうえに、全体が高い位置にあるので、速度などを見る際の視線移動が少ない。さすがボルボ、安全性にも配慮していることがわかった。

○新たなアイデア「サウンドバー」とは?



これまで各所に点在していたオーディオのスピーカーを、インパネ奥に「サウンドバー」としてまとめているところも特徴だ。自動車用としてはほとんど見たことがないこのレイアウト、ホームオーディオのデザインからインスピレーションを受けたという。



実はこのサウンドバーには音質以外のメリットもある。スピーカーをひとつの部品にまとめ、配線や材料の量を減らすことで、ドアトリムのデザインの自由度を高めているのだ。通常はドアに置くパワーウインドーのスイッチもインパネに移している。



たしかにドアに目を移すと、立体的なオープナーやフローティングタイプのアームレスト、大きなポケットなどがあって、見るからに使いやすそうだ。それとともに見た目がすっきりしているので、リラックスできそうにも思えた。



インテリアカラーは「ブリーズ」「ミスト」「パイン」「インディゴ」の4種類。北欧の自然をイメージした設定だ。いずれもシート素材やデコラティブパネルには再生可能な素材やリサイクル素材を使用していて、環境先進国らしい。



このインテリアを柔らかく彩るアンビエントライトも、森の木漏れ日やオーロラなど、スカンジナビアの風景にインスパイアされた5種類のテーマが選択できるようになっているという。



メカニズムにも触れておくと、床下に積まれるバッテリーはシティユース用のLFP(リン酸鉄リチウム)とロングドライブ用のNMC(ニッケルマンガンコバルト)があり、前者はリアモーター、後者はリアモーターと2モーターが選べる。欧州仕様の航続距離は最大で480kmだ。



欧州でのスタート価格は約3.6万ユーロで、エンジン車とさほど変わらぬレベルにあるという。日本での発売は7月を予定。SUVらしさを強調したクロスカントリーバージョンも追加する予定とのことだ。



ただし、EX30のデザインの真髄を堪能したいのであれば、シンプル&ミニマルな通常バージョンを選んだ方がいいと思ったのも事実。それほど見どころの多い1台だった。



森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)
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