グランプリは日本人女性監督のアニメーション『希望のかけ橋』SSFF & ASIA授賞式

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2023年06月27日 14:02  cinemacafe.net

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『希望のかけ橋』
インターナショナル部門が25年目、アジア部門が20年目という節目を迎えた米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」のアワードセレモニーが6月26日に行われ、8つのアワードの受賞発表・授与が行われた。

今年の「SSFF & ASIA」では、既存概念からの解放「UNLOCK」をテーマに、これまで培ってきたフィルムメイカーやサポーターとのネットワーク、コミュニティ、映画祭としての歴史と知見を重んじながら、アフターコロナの新時代の世界を描くプログラム「UNLOCK -飛び込め 新しい世界へ‐」の上映・配信、参加者がNFTで投票できる映像コンテスト、VR映像におけるストーリーテリングを研究するセミナーのほか、世界のクリエイターのアイディアや作品をアセットマネジメントしサポーターやオーディエンスとつなぐプラットフォームのローンチを行った。

国内外から集まった5,000本以上の中から選ばれた、世界で唯一のジョージ・ルーカスの名を冠したグランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」受賞は、ポーランド在住の日本人女性監督・吉田和泉によるアニメーション作品『希望のかけ橋/The Bridge』が獲得。

さらに、翌年のアカデミー賞短編部門ノミネート候補となる、ライブアクション部門(インターナショナル、アジア インターナショナル、ジャパン)およびノンフィクション部門、アニメーション部門の各優秀賞、およびスマートフォン映画作品部門supported by Sony’s Xperia、Hoppy Happy Awardも発表された。

審査員の内田也哉子は「極めて短い映像の中で、これほどまで色とりどりな世界を展開できるクリエイターたちに圧倒された」、山戸結希監督は「今生きているこの空気を愛したくなるような、今を映し出す魅力と意欲に溢れていた」とそれぞれコメント。

萩原聖人は「子どもが印象的に描かれた作品が多く、その子どもたちはどれも逞しく、次世代が明るいことを期待させるものだった。その反面、現実社会の問題を痛切に感じさせられる」と評価した今年のライブアクション部門ほか、各部門優秀賞およびベストアクターアワードの受賞結果は以下の通り。


グランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」『希望のかけ橋/The Bridge』

ポーランドと日本の絆を深めた1920年の出来事を映画化。家族を失い、人生を生き抜くために自立を迫られる孤児の歴史を、10歳の少年の視点から語っている。

【受賞理由】
オリジナルのアニメーションスタイルで繊細に丁寧に紡がれた物語には観る者を引き込む力があり、また未来を憂いがちな今、特に多くの人々に届けたい作品であった。


ライブアクション部門インターナショナル 優秀賞『テルエルの彼方へ』

村を出たい羊飼いと過去の足跡を追う若い写真家が、古めかしいワゴン車に乗って共に忘れられた地方の隅々を旅する物語。

【受賞理由】
大きなテーマが転がっている中で平坦なところにテーマがあり、ふとした出会いで物語が始まるシンプルな設定に良さがある。淡々と積み重ねられていく時間の中からきちんと物語が立ち上がってきて、決して多くは語られないが登場人物たちの過去や内面はしっかりと感じることができ、ショートフィルムとしての面白さに長けていた。(ライブアクション部門 インターナショナル 審査員:坂井真紀、萩原聖人、横浜聡子)


ライブアクション部門アジア インターナショナル 優秀賞/東京都知事賞『スカベンジャー』

【第96回アカデミー賞短編部門ノミネート候補】

老人は少しばかりの食べ物を手に入れるため、やむを得ず成功しそうにない方法をとる。飢えは満たされるが、すぐに罪悪感に追われジレンマが生じる。

【受賞理由】
美しいビジュアル、その国ならではの映像とユニバーサルなメッセージ性、あらゆる面においてバランスの取れた作品。決して明るいテーマではないが説得力のある演技とコメディ要素を含んだ演出で世界の人の心を動かす作品に仕上がっている。(ライブアクション部門 アジア インターナショナル 審査員:アダム・トレル、松永大司、MEGUMI)


ライブアクション部門ジャパン 優秀賞/東京都知事賞『半透明なふたり』

【第96回アカデミー賞短編部門ノミネート候補】

芥川龍之介の短編小説「鼻」をモチーフにしたラブストーリー。生まれつき鼻が大きくコンプレックスを抱えて生きている男・龍也(永山瑛太)は、眼帯のひきこもり女・文(川栄李奈)と出会う。傷を背負った2人はお互い惹かれ合っていく。

【受賞理由】
役者2人の繊細な演技がリアルでありながらファンタジーさを表現していて、切なさとユーモアの匙加減が絶妙であった。現代の日本を丁寧に表現しており、世界に向けて発信したい作品。(ライブアクション部門 ジャパン審査員:内田也哉子、ダグラス・モントゴメリー、山戸結希)


ノンフィクション部門 優秀賞『宇宙飛行士の心』

【第96回アカデミー賞短編部門ノミネート候補】

Jennifer Rainsfordによる短編ドキュメンタリー。ある宇宙飛行士の心臓の、地球から宇宙への道のり。その鼓動、その危機、その強さが宇宙飛行士の主治医である航空医官ブリジット・ゴダールによって語られる。心臓血管系の、宇宙へのロマンチックな旅。

【受賞理由】
わすが15分の間に触れたことのない現実と誰もが憧れる夢を体験することが出来るノンフィクションならではの作品力がある。あまり目にすることのない貴重な記録映像としてだけでなくポジティブなエネルギーと人間の可能性を感じることのできる本作はこの時代に多くの人に届けられるべきショートフィルム。(ノンフィクション部門 審査員:アダム・トレル、松永大司、MEGUMI)


アニメーション部門 優秀賞『希望のかけ橋』

【第96回アカデミー賞短編部門ノミネート候補】

※グランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」受賞作

【受賞理由】
台詞に頼らず人形の表情だけでお互いを理解しあっていく様を描く技術は秀逸であった。史実して知られている内容ではあるが、純粋な作風で描かれているので感情移入がしやすく、ダイレクトに心に響く作品。戦争が起こっている今だからこそ一人でも多くの人に見て欲しい。(アニメーション部門 審査員:稲葉友、渡邉こと乃、杉山知之)


スマートフォン映画作品部門supported by Sony‘s Xperia優秀賞『たゆたい』

アーティスティックスイミング、元日本代表。さらに世界最高峰のエンターテイメント集団に7年間所属。半生を華々しい舞台で過ごした杉山美紗は、肩書きを手放し、いま、人生の間(あわい)を泳いでいる。

【受賞理由】
水中撮影が素晴らしく、小さなスマホ画面で撮られた画を、大きなスクリーンで観たいと大いに感じさせてくれた作品であった。ドキュメンタリーでありながらも、作りこまれたフィクションのような完成度があり、彼女の人生観にも共感できた。(スマートフォン映画作品部門 supported by Sony’s Xperia審査員:内田也哉子、ダグラス・モントゴメリー、山戸結希)


HOPPY HAPPY AWARD『私たちは他人です』

ある日父から「実はお前の母は生きている」と告白された詠は、母を求め新宿へと向かった。だが再会は果たせたものの強引に追い返され、途方に暮れてしまう。街を彷徨う中で一人の少女と出会った詠は、やがて母の秘密を知ることになる。

ベストアクターアワード(インターナショナル):『カミーユとコンティさん』コラリー・ルシエ

ベストアクターアワード(アジア インターナショナル):『スカベンジャー』サンジャイ・ミシュラー

ベストアクターアワード(ジャパン):『スイート』愛実(Ami)


なお、各受賞作品含むオフィシャルコンペティションノミネート作品は、7月10日(月)まで、映画祭オンライン会場グランドシアターにて特別延長配信を行う。




(シネマカフェ編集部)
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