「2023年上半期出版市場」書籍と雑誌の減少続く ヒット作少なく書店閉店の影響も? 電子は7.1%増

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2023年07月27日 17:30  リアルサウンド

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  出版業界の調査・研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所は、7月25日、2023年上半期(1〜6月期)の出版市場規模を『季刊 出版指標』2023年夏号で報告した。同研究所によると、紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年同期比 3.7%減の 8,024 億円。紙の市場は同 8.0%減となり、電子出版は同 7.1%増。電子コミックはプラスとなったものの、それ以外は減少し、全体ではマイナスとなった。


   内訳として、紙市場は 5,482 億円となり、そのうち書籍は 6.9%減、雑誌は 9.7%減となっている。雑誌の減少幅が10%近くとなっており、紙媒体の市場の中でも雑誌の縮小が続いているといえる。縮小の原因として出版科学研究所によれば、市場を大きく牽引するヒットやトレンドがなかったこと、文芸書やゲーム攻略本、旅行ガイドなどは健闘したものの、その他主要ジャンルの落ち込みが影響を与えたと分析。他にも、電子書籍の普及に加え、書店の閉店が相次いでいることなども影響していると考えられる。


  また、縮小の理由として同研究所が挙げるのが、いわゆるコロナ特需の終息である。漫画の単行本に関しては、2020〜2022年の間、コロナ禍の自粛に伴う巣ごもり需要が発生した。特に、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『SPY×FAMILY』などの漫画が歴史的なヒットを記録し、電子書籍の需要が急激に伸びただけでなく、紙の単行本も在庫が枯渇するほどの売上を見せ、転売屋が発生するほどの異例の事態となった。こうした特需がなくなったことも市場縮小に影響を及ぼしていると考えられる。


  電子出版市場は 2,542 億円となり、そのうち電子コミックは 8.3%増、電子書籍は 0.4%減となった。出版科学研究所によれば、電子市場の 9 割近くを占めるコミックが成長したことで前年を上回ったものの、成長率は一桁台に縮小したと説明。電子書籍は一部ベストセラーやライトノベル、ボーンデジタル写真集など着実に成長しているジャンルがあるものの、ほぼ前年並みという。


  2023年は、『【推しの子】』が1200万部を突破するなど、漫画のヒット作は依然として出ているものの、『鬼滅の刃』ほどの爆発的なヒット作はまだ生まれていない状況にある。また、ロシアのウクライナ侵攻はいまだに出口が見えない状況にあり、物価高が生活を直撃している。日用品の値上げが続き、さらに増税も噂される中、趣味・娯楽品である出版物はその煽りを大きく受ける可能性は高い。


  2023年、新型コロナウイルス感染症が5類へと移行し、マスクの着用なども個人の判断となった。社会を覆っていた様々な規制が撤廃されてから、本格的な夏休みを迎えている。巣ごもりが続いた時期の出版業界の最大のライバルは、スマホゲームなどの娯楽であったと思われるが、今後は旅行などのレジャーとも競争することになる。また、日本各地の老舗書店で閉店が相次ぐ事態になり、小売市場は縮小が続くと見込まれる。2023年下半期では紙媒体を牽引するようなヒット作が生まれるか。今後も動向を注視していきたい。


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