『らんまん』“ヤバ藤”で話題!伊礼彼方「気づいたら自分の好きな悪役ばかり」

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2023年08月07日 06:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

伊礼彼方(撮影/矢島泰輔)

「こんなに“おいしい”とは思いませんでした(笑)」

 放送中の朝ドラ『らんまん』でヒロイン・寿恵子(浜辺美波)を妾にすべく、アプローチを重ねる元薩摩藩の実業家・高藤雅修を演じた伊礼彼方(いれい・かなた 41)。高藤の熱意は時に自分本位で、浜辺自身が“ヤバ藤”と呼んでいたと明かすと、これが燃料投下となってSNSは大盛り上がり。“クズ藤”“エグ藤”“キモ藤”など愛称のバリエーションは急増し、高藤の次なる言動が待ち望まれるように。

『らんまん』の“ヤバ藤”、伊礼彼方とは何者?

 伊礼の主戦場はミュージカル。ドラマへのゲスト出演経験はあるが、連ドラへのレギュラー出演は初めてだった。

「お話をいただいたときは、監督から“結構嫌な役だからあまりいい印象にならないかもしれないが、伊礼さんにやってほしい”と。びっくりしましたね。“まさか、自分に!?”と。朝ドラは正直、考えてもいませんでした。

 舞台が続く中、“この期間だけは何が何でも休む”と休養のために空けていた時間が、朝ドラの撮影と絶妙に重なって。台本を読むと、その言動は現代の女性から見ると、金に物を言わせるなかなかひどい男で(笑)」

 物語を発展させる重要な役。嫌われることは覚悟して撮影に臨んだ。

「めちゃくちゃ楽しかったですよ。芝居をしていく中で、寿恵子さんが嫌がるんですよ(笑)。あの時代、やっぱりスキンシップされたら女性はびっくりしただろうと思うので。あえて自然に、背中や腰に手を回したり、手や脚にキスをしたり。もちろん、台本に書いてあることではあるんですが、なるべく自然に見せることで、おのずと気持ち悪さが増すだろうな、と(笑)」

 そして、舞台でも嫌われ役が非常に多いという。

「印象に残っているのは映画『タイタニック』('97年)でのローズ(ケイト・ウィンスレット)の婚約者キャル(ビリー・ゼイン)。慇懃無礼な態度に衝撃を受け“こういう役があるから、ふたりのドラマが引き立つんだよな”と思った記憶があって。芝居を始めたのは遅かったんですが、気づいたら自分の好きな悪役ばかりを演じる方向に進んでいました(笑)」

 日常生活ではまず縁がない言動を、ステージ上でやることは快感でしかないと豪快に笑う。

アルゼンチン生まれ、デビューは『テニミュ』

 沖縄生まれの父、チリ出身の母を持つハーフでアルゼンチンで育つ。日本には小学3年生のときに来た。

「スペイン語しかしゃべれなかったので、ひとつ下の学年の仲間と育ちました」

 中2のとき友人に誘われ、バンドを組んだ。文化祭ではTHE BLUE HEARTSの『青空』を演奏。

「“生まれた所や皮膚や目の色でいったいこの僕の何がわかるというのだろう”、その歌詞にすごく助けまれました。その後インディーズのバンドでプロを目指すも、3年で解散。もう本当にやめようと思いながら、ひとり路上で歌っていたときにスカウトされました。24歳だったかな?」

 デビュー作は、ミュージカル『テニスの王子様』('06 年)。ブレイク前の瀬戸康史や斎藤工と共演している。

「それまでは作詞作曲もしていて。自分を表現することに疲れていた中、自分じゃないけれど自分……という“演じる”ことがとても不思議な感覚で。セリフはあるから物語は考えなくていい。それがとても楽で、面白くて、何より人前に立つ心地よさを知りました」

 2年後には『エリザベート』で皇太子ルドルフ役に抜擢。その後もオーディションで『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などの大作も勝ち取り、ミュージカル界の王道を歩み続けている。

 プライベートでは既婚で、2人の子どもは小学生だという。

「挨拶には厳しいですよ。でも、人生で“これをやっていきたい!”というものが見つかったら、勉強よりもそれをとことんやればいいと思う。僕自身がそうだったので。ただ妻は“それじゃ無責任”と(笑)。なので“やりたいことが見つかるまでは勉強しようね”と子どもたちには言っています」

 演劇や音楽の道に進ませたい気持ちは?

「めっちゃいざなっています。でも、全然来ないですね(笑)」

犯人役や嫌なヤツ、喜んで引き受けます

 そんな伊礼は『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』(帝国劇場)に出演中。ナイトクラブ“ムーラン・ルージュ”の花形スターであるサティーン(望海風斗/平原綾香)と作曲家のクリスチャン(井上芳雄/甲斐翔真)の激しい恋を引き裂く、貴族デューク(モンロス公爵)という役どころ。あれ? 高藤とカブる……?

「ありありですよ! 同時期に同じようなキャラクター、びっくりしました。お金持ちの恋敵で、やっぱりドレスを仕立て、家も与える(笑)」

 しかしその願いは叶わない、哀しい男だ。

「その手の男はお手のものですよ。貴族、不良、クズ、ダメ男……ミュージカルなら、僕を超える人はいないでしょう(笑)。悪役って難しくて、油断すると素の優しい部分が出ちゃったりしがちですが、僕は本当に嫌なヤツができる。もちろん、その人物の正義を見いださないと成立しないんですけどね」

 女優からは嫌われてなんぼ。もちろん、後から“ごめんね!”と謝りに行くのがお約束。

 今後は、映像作品にもっと出演していきたいと意欲を見せる。

「朝ドラに出たらやっぱり欲が出ますよね。次は大河ドラマという思いはものすごくあります。このとおりの濃い顔ですから、普通のサラリーマン役はできないかもしれませんが、犯人役とか、心底嫌なヤツとか、喜んで引き受けますよ!」

 ミュージカルの枠を超え、日本屈指の悪役となる日は遠くないかもしれない。

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』
帝国劇場にて上演中(8/31まで)
https://www.tohostage.com/moulinmusical_japan/

(撮影/矢島泰輔)

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