【フォルクスワーゲン・ゴルフ・ヴァリアント試乗記】懐の深い乗り味は好印象。電子制御された足回りも良好

0

2023年10月03日 07:20  AUTOSPORT web

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AUTOSPORT web

フォルクスワーゲン・ゴルフ・ヴァリアント“アクティブ アドバンス・プラチナム エディション”(アトランティックブルーメタリック)
 先日掲載したプジョー・リフターロングGTに続き、編集部ではフォルクスワーゲン・ゴルフ・ヴァリアントに乗る機会に恵まれた。こちらもレース取材の際に試乗することができたので、クルマの詳細と気になる乗り味をお伝えしたい。

 今回試乗したゴルフ・ヴァリアントのグレードは『TDI アクティブ・アドバンス・プラチナムエディション』。ステーションワゴンの最新世代ディーゼルエンジン“TDI”を搭載したモデルで、“アクティブ・アドバンス”というグレードかつ、その“プラチナムエディション”という特別車両という位置付けだ。

 ゴルフ・ヴァリアントのボディサイズは全長4640mm、全幅1790mm、全高1485mmと標準的なステーションワゴンと大きくは変わらない。ホイールベースは2670mmで車両重量は1500kgと、“長すぎず重すぎない”具合に収まり、高い直進安定性と軽快なハンドリングを生み出している。

 パワートレインは、2.0リッター直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボのディーゼルエンジンを搭載。最高出力は150ps/3000〜4200rpm、最大トルクは360Nm/1600〜2750rpmを達成する。

 このエンジンには“TDI”の所以となる最新技術のツインドージング(デュアルAdBlue噴射)システムが採用されている。ツインドージングシステムとは、直列に配置したふたつのSCR触媒コンバーターから『AdBlue』を注入することで、窒素酸化物(NOx)の排出量を抑制しつつ、従来よりも最大トルクを強化するというシステムだ。

 さらに、今回の試乗車両にはメーカーオプションのアダプティブシャシーコントロール“DCC”が搭載されていた。これは電子制御のサスペンションシステムが、ダンパーの減衰力やパワーステアリングの特性を瞬時にコントロールする機能で、ドライビングモードも乗り心地重視の『コンフォート』や硬く俊敏な乗り味の『スポーツ』などを選択することが可能だ。

 今回の試乗ルートでは、高速道路や雨に見舞われるシーンなど、さまざまな環境を走行することができ、適宜モードを切り替えていくことでシーンに合わせた乗り味を体感することができた。

 インテリアに目を移すと、シックなチェックパターンのシート柄に惹かれる。インパネは黒を基調にした落ち着いたデザインで、ファルクスワーゲンらしい操作性の優秀さを伺わせるもの。

 インパネの中央に鎮座するタッチ機能搭載の10インチモニターはApple CarPlayとAndroid Autoに対応し、自身の携帯端末の地図アプリを画面上に展開したり、音楽やラジオ番組等をタッチ操作で直感的にセレクトしたりすることができた。ただ、タッチパネルの下に隣接されたエアコン操作部が近すぎる点は一癖として挙げられる。慣れるまでは、タッチパネルに触れる度にエアコン操作部にも誤入力してしまうことがあり、その点は注意を要した。

 また、『アクティブ・アドバンス』にはヘッドアップディスプレイが搭載されており、速度や警告情報、ドライバーアシスタンス情報、ナビゲーションシステムと連動した矢印などをフロントガラスに投影してくれる。これで運転中に前方から視線を逸らすことなく、さまざまな情報を確認することができて、運転中の安心感にもつながった。

 そして肝心なドライビングフィールは、さまざまな情報がはっきりと感じられる明快なものだった。クルマの安定性は常に発揮されていることが分かり、そのなかでもスピードを上げていくと然るべきモーメントで力が車体にかかっていることが素直に伝わってくる。DCCを『スポーツ』に切り替えても、その衝撃吸収感覚は硬すぎず、ほどよいしなやかさを保っており、あらゆる状況を考慮したセンスの良いプログラミングが行われていると感じることができた。

 車体剛性とサスペンション、エンジンパワーとブレーキ制動力のバランスも良心的で、適切なインフォメーションが常に伝わってくるドライビングフィールはまじめで謹直なもの。「すべての人々のためのクルマ(フォルクスワーゲン)」として乗り続けられてきたクルマらしい、懐の広さを感じさせるモデルに仕上がっていた。
    ニュース設定