「ネイティブも最初はフォニックスからスタート。英語学習はそこからです。」 ――バイリンガルニュース Mamiさんインタビュー

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2023年10月12日 10:01  MAMApicks

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小学校での英語の必修化がスタートしたのは2020年度のこと。実は、この件に関して筆者は長らく、ALT(外国語指導助手)の先生とお喋りを楽しむのみの活動だと勘違いしていた。ゲームや遊び感覚で英語に触れる「外国語活動」と呼ばれるのは、3〜4年生が対象で、5〜6年生は正式な「教科」扱いであること、つまり教科書があり、テストがあり、通知表に評価がつくということを、つい先日ママ友から聞かされて驚愕してしまった(※評価の方法は学校によるそうです)。

ほのぼのお喋りかと思いきや、通知表の評価って随分シビアだ。ママ友曰く、5年生以降はすでに英会話を習っているかどうかで生徒間にすでに差が生じているようだ。それって、これまで中1で起こっていたことがただ前倒しされただけじゃ……英語に苦手意識を感じる子どもが今まで以上に増えてしまうだけじゃないの……?と疑心暗鬼になる。

文科省によるリーフレット(https://www.mext.go.jp/content/1413516_001_1_100002629.pdf)によると、外国語教育が重視することは「『聞くこと』『話すこと』に加えて『読むこと』『書くこと』の力を育みます。」とのこと。

その方針には大いに納得するが、現状の指導方法ですでに差が開いているなら、「学校の勉強では不十分だから、落ちこぼれないように英会話スクールに通わせなくちゃ!」と親は焦ってしまうし、子どもを英会話スクールに通わせて先取りさせられる、経済的余裕のある家庭のみが有利になるのは自明だ。それって果たして、目指している方向に合致しているのだろうか。導入されて間もない過渡期とはいえ、あまり配慮されていない印象を受けモヤモヤは募るばかり。

実情を知らなかった粗忽さを反省するとともに、誰かに相談したい……と考えたときに真っ先にある人が頭に浮かんだ。人気Podcast番組「バイリンガルニュース」のMami(マミ)さんだ。

「バイリンガルニュース」はふたりのホスト、Mamiさんが日本語、Michaelさんが英語という「バイリンガル会話形式」で、世界のニュースや最新の研究事例などに基づいてトークする、昨今のPodcast人気をけん引するプログラム。幅広いトピックもふたりの独特のトーンも非常に魅力的で、筆者も長年のリスナーである。

Mamiさんの美しい英語を聴くと、「この人は外国で長く暮らしていたのかな?」と多くの人が思うだろうが(筆者もその一人)、実は帰国子女でもなく留学していたわけでもなく、独学で英語を学んだ東京生まれ東京育ちのバイリンガル。現在は家族とロンドンで暮らしている。第ニ外国語として英語を習得した立場だからこそ参考になる意見が聞けるのではないか?と、このたびインタビューをオファーした。

■取っ掛かりとして英語で会話するのはOK。ただし教える体制や方法が整っているのかは疑問
―― 初めまして。今日は子どもの英語教育というテーマでフランクにお話を伺いたいです。まず初めに、公立小学校で英語が必修化されたことをMamiさんはご存じでしたか?

Mami:はい、以前から耳にしていました。実は私の母は公立小学校でフォニックスを教えられるために、先生向けのトレーニングを行う社団法人で仕事をしていたんです。ただ、実際は先生によって英語の習得レベルも異なりますし、もっと研修を受けたい意欲的な人もいれば、ただでさえ忙しいからこれ以上仕事が増えるのは困る、という人もいる事情もよく聞いていたので、なかなか大変だろうなと思っていました。

―― 文科省の掲げるゴールには納得しているのですが、進め方に疑問を感じています。十分な説明もないまま「とりあえず会話してみよう」という雰囲気のようで、分からない子へのフォローも整っていないそうです。

Mami:英語に触れる取っ掛かりとして最初に外国人の先生と会話をすること自体は悪くないと思うんです。日本人だって文法が分からない状態で日本語を話し出すわけですし。ただ、これまでの日本の学校教育では受験英語ができることがゴールになっていて、学校で英語の勉強をして嫌いになる子たちが量産されてきましたよね。

少なくとも中学、高校と6年間あるのに喋る練習をほとんどしないから、「勉強してきたのに喋れない」し、英語ってとても難しい、自分には無理だって思う人がたくさんいることは問題だなと思います。同じ方法でやるとしたら、始める学年を繰り下げたところで、年齢の問題ではないですよね。

―― 結果、英会話スクールに通っている、単語が分かる子はどんどん喋って、そうでない子たちは黙りこくってしまうようです。習っている子が有利なのは語学に限らないのですが、公教育でこの状態はフェアじゃないなと。

■イギリスもアメリカもまずはフォニックスからスタート。ネイティブも音(おん)をマスターして初めて単語が読めるようになる
Mami:私は現在ロンドンで暮らしていて、5歳の息子が現地校に通っています(※イギリスでは日本の年少、4歳の年から義務教育がスタート)。学校と行っても机の前で勉強するわけではないんですが、何をやっているかって毎日とにかくフォニックスをやっているんです。

―― 出ましたね、フォニックス。日本でも子ども向け英会話はフォニックスを謳うところが増えました。

Mami:通い始めて3ヵ月ほどしたら、初見でも3〜4文字の単語は大体読めるようになってきました。つまり、イギリスでもアメリカでもネイティブスピーカーはフォニックスを学んで初めて単語が読めるようになるのに、なぜ日本の学校ではやらないんだろう?って疑問に思っています。

―― 娘に、「学校の英語で何を学んだの?」ときいたら、アルファベットやローマ字を書いたって話していました。フォニックスを学んでいる様子はないですね。

Mami:ローマ字と英語は完全に別物なので、まずそこを理解していないと混乱しますよね。フォニックスだってそんなに時間がかかるものじゃないのに、結局母が言っていたように、教えられる人材が少ない、確保できないという状況のまま放置されてしまったのかな。

―― たとえば5年生からフォニックスを学んでも効果ありますかね?

Mami:フォニックスって別に特別な学習ではなくて、「音(おん)」を学ぶってことですからね。
たとえば「a」「b」「c」を「エー」「ビー」「シー」というのはアルファベットの「名前」であって、読み方ではないですよね。「a」は「ェア」、「b」は「ブ」、「c」は「ク」と読むのがフォニックスです。

日本語は「あ」「い」「う」「え」「お」って名前と読み方が一致しているから「い」「ぬ」と書いていたら「いぬ」と読めばいいけど、英語は「dog」と書いているからって「ディー・オー・ジー」とは読みませんよね。「d」の「ドゥ」、「o」の「オ」、「g」の「グ」を合わせるから、カタカナ表記にすると「ドォッグ」のようになるんです。

私は小学生のときに、文法も何も分からない、小文字の「b」と「d」の違いも分からない時分に、アメリカの帰国子女だった従姉妹が絵本を読む練習をしてくれたんです。分からない単語に出会ったとき、たとえば「Robert」って名前が読めないとしたら、一文字、二文字ずつかくして「ro」「b」「er」「t」の状態で読んでみてと言われました。彼女も「この子にフォニックスを教えてやろう」という意識あったわけではなくて、それが自然な読み方だから教えてくれたんですよ。

歌や遊びを通じてひたすら「ェア、ブ、ク」って音をたたきこむことで、ネイティブスピーカーも単語が読めるように成長しているので、日本でもそれを真似しないのは逆に不思議ですよね。フォニックスを知らないと、単語の読み方をいちいち記憶したり、初見の単語はいつまでも読めないという壁に当たってしまいます。

―― 何億個覚えるのかって絶望しますね(笑)。つまり、ネイティブも生まれつき読めているわけじゃなくて、練習した上で単語が読めているってことですね。

Mami:そこが分かっていないと、「SUN(太陽)」を「スン」って読んじゃって「スンって何なんだろう」って思いますよね。まず、アルファベットには名前がついていて、「音(おん)」とは違うことを認識したら、あとはパターンなので1〜2か月もあれば習得できるはずですよ。ただし、「i」は「イ」って読むけど「I(私)」を示すときは「アイ」になるとか、例外はあるので、その辺はしっかりやる必要があります。

だから、自分も英語が話せないし、子どもに何をやらせたらいいのか分からない親御さんにお伝えするとしたら、「まずはフォニックスを始めましょう」ってことにつきます。だからといって高い教材を買うとか、月謝の高いスクールに通う必要はないですよ。

YouTubeに動画もたくさんあるし、無料で聴ける歌もたくさんあるから、それをとにかく見せて、聴かせるレベルでもかなり力になると思いますよ。単語が読めたら、少しずつ本も読めるようになると思います。

【記事後編】
「学校で英語を勉強したけど喋れない」を克服して、その先に進むには? ――バイリンガルニュース Mamiさんにきく、英語教育の話
https://mamapicks.jp/archives/52406147.html

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。

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