ICTでBMXフリースタイルの技を瞬時に解析、競技の観戦スタイルが変わる

1

2023年10月12日 10:01  マイナビニュース

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
「第7回 全日本BMXフリースタイル選手権」が9月14〜17日に岡山市にて開催され、全日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)とNTT西日本は双方向ライブ配信プラットフォームなど、ICT技術を活用した新たなスポーツの観戦スタイルを開拓した。その実現に尽力した4名に話を聞いた。


○中村輪夢選手が5連覇、歓声飛び交う白熱の大会に



BMXフリースタイルは、競技用の自転車・バイシクルモトクロスに乗って、さまざまな技(トリック)を繰り出し、その難易度や完成度などを競うエクストリームスポーツ。1960〜70年代のアメリカがルーツで、ストリートカルチャーの流れを受け継いで世界中で人気の競技となり、東京2020の種目にも採用されたことでさらに注目を集めている。


BMXフリースタイルには4ジャンルあるが、五輪で採用されたのは「BMXパーク」。すり鉢状のハーフパイプやジャンプセクションのあるフィールドで選手らはさまざまなトリックを繰り出していくものだ。



岡山市役所の特設会場で開催された「BMXパーク」の模様をお届けしよう。


会場は晴天に恵まれ、キッズ選手から日本トップ選手まで、多くのライダーたちが会場に集まった。選手らは声援を浴びながら見事な技を観衆に見せつけ、想像を超えた高いジャンプや重力を感じさせない空中での華麗なムーブがあるたびに観客の大きな歓声が響き渡る。



その声を受けて選手らもトリックにさらに熱が入っている様子だった。


男子エリートは中村輪夢選手が制し、大会5連覇を達成。今年8月に世界選手権で披露した新技も成功させ、パリ五輪への期待も高まった。女子エリートでは、内藤寧々選手が優勝を果たし、2年ぶり2度目となる全日本タイトルを手にしている。


○無茶ぶりも面白がってくれる仲間だからこそ実現した新技術



大きな盛り上がりを見せた「全日本BMXフリースタイル選手権」だが、そんな現地の熱量を会場に来ることができなかったファンにも届けるため、NTT西日本 岡山支店のICT技術を活用した双方向ライブ配信が行われていた。



同大会では2021年からJFBFとNTTスマートコネクト、NTT西日本岡山支店とでスポーツにおける新たな価値の創出に取り組んでいる。今年は、過去に実施してきた取り組みをさらにアップデート。3年目を迎えて、JFBF理事長の出口智嗣さんは、NTT西日本との取り組みをこう振り返る。


「当初はICT自体、もっと難しいものだと思っていましたが、取り組みの中でもう身近にあるものだと知ることができ、もっと可能性があるものだと思えましたね。NTT西日本さんとの取り組みも3年目で、常にレベルアップしていくことを意識していましたが、今回はどれに関しても優れたものができたんじゃないかと実感しています」



今回の大会では、メタバースの岡山駅前を疾走する「岡山ミラーワールド×BMX」やコメントなど通じて選手とファンやファン同士を繋げていく双方向ライブ配信などがICT技術によって実現されている。



出口さんは、配信によって実現したファンのコメントも、大会の大きな力になっていると話す。


「双方向配信でのコメントはめちゃくちゃ励みになりますよ。それは選手だけでなく、スタッフへの応援コメントもあったりして、その場の雰囲気を観てくれている人が感じて、すぐ発信できるというのは他にないものだと思います。どうしても来られない人もつなげることができるのが、大きなポイントですね。それが今回は成功していると感じましたし、他のスポーツでも使っていくものになるんじゃないでしょうか。私個人としては現場でのリアルな観戦が大好きですが、配信で『現場って楽しそう』と感じてもらえる映像を届けられているのは、すごいことだと思います」



さらに今回は、映像解析によるモーションの可視化も実現した。映像をリアルタイム加工し、ライダーのトリックやモーションをコマ表示の動画クリップにしており、選手のパフォーマンスの凄さをすぐに映像で確認できるようになっている。



「シンプルにカッコいいですよね。映像解析自体は競技面の強化でどんどんやっているんですけど、こういう形でも成り立っていくんだと思いました。このタイミングでこっちを向いているんだ、車体ってここにあるんだ、BMXってこんな動きができるんだ、というのを一般の方もいろいろ分析できるようになりますよね。みんなで集まった時に『あれって頭から目線にかけて回っているんだよ』とか言えるようになる。そういう会話ができるようになること自体がひとつのコンテンツになりますよね」



ICT技術の発展により、一般の方々にも競技へのより深い理解が広まれば、さらにBMXの魅力も広まっていくはずだ。そして、出口さんは今後のビジョンについて「正解を決めずに取り組みたい」と話す。



「僕らはストリートカルチャーで、何が正解かを決めてしまうと、大会も終わってしまう。やる必要が無くなってしまうんです。僕は夢を持たないんですが、それはつまり正解を勝手に決めず、時代やシーンに合ったものを作り続けていきたいから。面白いことをやりたいですからね。だから、一緒に組むスポンサーさんにも面白さを求めたい。NTT西日本さんには、無茶振りをしても『何とかなると思います』って言ってくれました。ICTについても1から説明してくれて、そこに僕もどんどん突っ込んでいったので、きっと僕はふてぶてしかったと思います(笑)。でも面白いことを作ろうとするようなコミュニケーションができたことが嬉しかったですし、こういう仲間は大事にしたいと思いますね」

○遠隔地を巻き込んだライブ配信をNTT西日本のICT技術が支える



会場には、NTT西日本が提供するメタバース体験ブース「岡山ミラーワールド×BMX」が設置され、多くの観客が足を運んでいた。メタバースの制作を手掛けたNTTスマートコネクトの三田明範さんは、車体のセンサーの微調整に苦心したと語る。


「本物のBMXに乗車して『実際にこいでもらう』アトラクション形式になっているので、センサーとの連動や調整には苦労がありました。メタバース空間なので、路面電車の駅の屋根の上など、通常ありえない場所も走ることができるので、ほかにない非日常な体験ができるものになっていると思います」



来場者の反応も上々で、何度も遊びにくる人も少なくなかったと言う。


「夢中になって何度もトライするお子さんもいましたね。今回は岡山駅前でしたが、いろんな空間を再現し、いろんな場所を旅できるのがメタバースの面白いところだと思っているので、さまざまな形でメタバースを活用していきたいです」


今回初導入された映像解析によるモーションの可視化は、NTT西日本グループのNTTSportictと連携して提供。映像解析をはじめとした、映像配信全体を手掛けているNTTビジネスソリューションズの村田智宏さんは、スポーツ観戦の新しい形を開拓し続けてきた中、選手のモーションを即時に可視化できたことで、より選手のすごさを実感できるようになったと手ごたえを明かす。



「ウェブ配信と同時に別の映像配信を行うプラットフォームを担当しています。現地に来られない視聴者と会場が分断されてしまっていた状況の中で、ICT技術によってより面白い映像を視聴できる観戦スタイルを作り、視聴者の声援を会場に届けられるような仕組みを私たちが手掛けました。ライブ配信でただ見ている視聴体験だけでなく、昨年は応援を投げられる機能を追加し、今年は映像をリアルタイムで解析してコマ送り表示にする仕組みを新たに作りました。選手のハイレベルなテクニックをより実感していただけるものになりました。やはりリアルタイムでやることが重要で、2〜3日後では意味がない。技術的には大変な部分がありましたが、その甲斐があったと思います。今後はこういう技術をもっと手軽に使えるようにしていきたいですね」



NTT西日本岡山支店ビジネス推進担当で地域創生グループに所属している島津帆乃夏さんは、ICT技術を活用してスポーツや地域の魅力をもっと広く広めたいと話す。


「今回の取り組みには、スポーツ振興と地域活性化を目指して、『体験する』『つながる』『知る』という3つのテーマを掲げました。BMXをはじめアーバンスポーツはとても魅力的で面白いスポーツだと思っていまして、その魅力を多くの人に、もっと広く知っていただきたい。そういう意味では、ICTを使って現地だけでなく遠隔地を巻き込んで盛り上げることができたと思います。観戦の在り方という部分で、ICTを使うことによってより魅力的な観戦ができますので、ICTで付加価値をつけながらビジネス化も狙って、さらに発展させていきたいと考えています。また、今回は岡山ミラーワールドのようなメタバースでの体験型コンテンツを作りましたが、地域活性化という側面で、いろいろな場所を使ってできることだと思います。スポーツに限らず、いろいろなものと掛け合わせて、取り組みを広げて行きたいですね」



今回の大会を支えたICTの技術力。島津さんは、NTT西日本だからこその強みをNTTグループだからこその幅広い技術力と地域に根差した活動拠点があることだと考える。



「NTTグループとしては、今回のような映像の配信や解析などをはじめ、幅広い分野の技術を持ち、いろいろな分野で展開しています。だからこそ、今回のような取り組みの技術を我々だけで提供できたと自負しています。また、NTT西日本は西日本全域の各県に支店があり、それぞれの地域に根差した活動をしています。そういう意味で、今回は岡山県に拠点を持つJFBFさんと、私たち岡山支店がタッグを組んだからこそ実現できたもの。今後も地域活性や競技振興のために、さまざまな取り組みをしていきたいと考えています」



宮崎新之 宮崎 新之(みやざき よしゆき) 大学卒業後に勤めていた某職から転職し、編集プロダクションへ。ライブや演劇などを中心としたフリーのチケット情報誌の編集者となる。その後、編集プロダクションを辞めて大手出版社の隔週情報誌編集部に所属、映画ページを担当。2010年よりフリーランスに。映画をメインにエンタメ系の編集ライターとして、インタビューや作品レビューなどで活動中。 著者webサイト ◆これまでの仕事歴 LAWSONTICKET with Loppi(ローソンチケット) / TOKYO★1週間、KANSAI★1週間(講談社) / ケーブルテレビマガジン(JCN) / web★1週間(講談社) / マイナビニュース(マイナビ) / SPA!(扶桑社) / TVぴあ(ウィルメディア) など この著者の記事一覧はこちら(宮崎新之)

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定