Jクラブの価値を高めるラグジュアリー戦略!“マッチョ”や“大河ドラマ”で新規ファンを獲得

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2023年10月22日 08:11  TVerプラス

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10月21日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25〜)は、新規ファンを獲得するために必要な、サッカーのラグジュアリー戦略について、トークを繰り広げた。

2023年の夏は、毎年恒例となった海外クラブのジャパンツアーが行われ、世界のスーパースターたちが日本に集まった。特に、FCバイエルン・ミュンヘンとマンチェスター・シティの一戦は大きな話題となり、国立競技場の入場者数記録も更新。しかし、高額な特典付きのチケットが売れた一方で、一般席のチケットも高額になってしまい、空席が目立つ試合もあった。

レアなビッグクラブの試合でも、平日開催やただ観戦できるだけではチケットが売れない今、どうすればスタジアムにファンを呼び込むことができるのか。そのヒントになるのが、サポーターから愛されるチームを作るためのラグジュアリー戦略だった。

早稲田大学ビジネススクールの教授で、ラグジュアリーブランディング研究の第一人者でもある長沢伸也は「極端に言えば、欲しいと思う人はいくら高くても欲しくなるわけです。だから他と比較することが意味をそもそもなさない」とし、「自動車でいうとラグジュアリーはポルシェやフェラーリになりますが、ポルシェ好きな人の中で“フェラーリよりも最高時速が速いからポルシェがいい”と言う人はほとんどいない。天才と言われたフェルディナント・ポルシェ博士が心血注いで開発したエンジンを積んだポルシェ911が欲しい、これでなくちゃだめなんだ、代わりはない、唯一無二、といった言葉が並ぶのがラグジュアリーと考えていただければいいわけです」と定義した。

長沢は「ラグジュアリーは作り上げる努力が大事」だと強調し、サッカーにおいてはクラブが主体的にブランディングを進める必要があると説く。実際に、Jリーグでも様々なラグジュアリー化が行われており、番組ではその中でも、J2・いわきFCの取り組みに注目した。

いわきFCでは、選手たちが一丸となってフィジカルを鍛え、一人ひとりが鋼の肉体を獲得。 “マッチョ”をチームの最大のウリにしており、チームのYouTubeチャンネルでもオススメの筋トレを紹介するなど、フィジカルの重要性をアピールしている。解説の福田正博は「これだけJリーグのクラブがたくさん各都道府県にあると、どうしても地方クラブは埋もれてしまう」とした上で、いわきFCについては「戦い方も戦術もフィジカルを最大限に活かしているんですよ。戦略に基づいてやっていて、ブランディングに成功している」と褒め称えた。

長沢はさらなるマッチョを活かしたラグジュアリー戦略として、「例えば、試合前にゴールポストで選手と観客が並んで懸垂をする。一般の人はそんなに回数できないだろうから、駅伝方式の5人一組で、マッチョな選手1人と懸垂の回数を競えば、盛り上がるんじゃないでしょうか」と提言。福田も「もう少し選手全員が日焼けして、統一したほうがよかったかな」とアドバイスしていた。

ラグジュアリー戦略のヒントとして、長沢は他のスポーツの成功例にも着目。その一つが、メジャーリーガーの大谷翔平がホームランを打った際に行う、カブトパフォーマンスだった。日本のカブトを被るロサンゼルス・エンゼルス独自のパフォーマンスは、大谷のみならず、チームメイトにも波及。ファンもスタジアムで直に喜びを共有するといった、新たな価値を生んでいる。他にもWBCで見せたラーズ・ヌートバーのペッパーミルや、サッカーでも三浦知良のカズダンスなど、そのパフォーマンス見たさにスタジアムを訪れるというファンは多い。

そして、選手発信ではなく、サポーター自身が価値を生み出すケースもある。池谷実悠アナウンサーは「横浜F・マリノスの『民衆の歌』をスタジアムで一緒に歌ってみたいなと思って、YouTubeで見ていたことがある」と打ち明けた。ミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌として知られる『民衆の歌』は2013シーズンからマリノスの入場前映像に流れたことで定着し、今ではそれをサポーターが歌い、勝利への後押しをしている。

さらに、長沢によれば大河ドラマのように、歴史や伝統を取り入れることもラグジュアリー戦略になるという。実際に、戦国武将・武田信玄のお膝元である山梨県甲府市がホームタウンのヴァンフォーレ甲府は、信玄の様々な要素をチームに取り入れており、チーム名のヴァンはフランス語で風、フォーレは林と、信玄の旗印である「風林火山」に由来している。

ラグビーでも歴史と伝統を上手く取り入れており、ニュージーランド代表のオールブラックスが見せる“ハカ”は、地元の先住民が戦いの前に力を誇示し、威嚇していた際の踊りでもある。

しかし、長らく定着させるためには、発信し続けることが大切。MCの勝村政信も「サンフレッチェ広島も毛利元就の“三本の矢”からですけど、ほとんどみんな忘れかけてますもんね。改めてどうやって伝えるかってことを考えていかないと、なかなか広がらないですよね」と指摘した。

一方、福田はクラブが目指すべきサッカーも強調すべきだと主張。「我々はこういうふうにやっていますと伝えているつもりだけど、見ている側は伝わってない。だから、もっともっと強調していくことが、もしかするとそのチームの個性になってくるし、伝わるんだと思う」と自身の考えを明かした。
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