シティとモトコンポの再来か! ホンダがアクリル樹脂でクルマを作る?

0

2023年11月04日 11:41  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ホンダが公開した新型コンセプトカーを見て何かを思い出した人は多かったはずだ。「サステナCコンセプト」(SUSTAINA-C Concept)は名車「シティ」に似ているし、小型電動バイク「ポケットコンセプト」(Pocket Concept)は懐かしの「モトコンポ」にそっくりな乗り物だったからだ。開発の背景は? ホンダに聞いた。


○どこかで見た組み合わせだ!



「ジャパンモビリティショー2023」のホンダブースに並んだサステナCとポケットコンセプトを見て、今から40年以上前の1981年にホンダが世に送り出した初代「シティ」と「モトコンポ」を思い出した人は多いに違いない。


シティは前輪駆動(FF)で1.2Lエンジン搭載のコンパクトハッチバック。背の高いボディから“トールボーイ”の愛称で呼ばれた人気車種だ。専用設計のモトコンポ(原チャリ=50ccの小型バイク)をトランクに搭載できるというアイデアは画期的だった。


「MADNESS」のメンバーが隊列を組み、「ホンダ、ホンダ、ホンダ、ホンダ♪」の曲に合わせてシティ(街中)で独特の歩き方を披露する当時の楽しいCMは、今から考えてみても新鮮。仲間で集まった若者グループは、かならずその真似をしたというほどの社会現象になった。こうした人気に比例して、シティ自体も爆発的に売れた。



サステナC&ポケットコンセプトは、シティ&モトコンポで打ち出したアイデアをEVの普及が進む現代に合わせて再解釈したコンセプトカーだ。サステナCの名前にもある「サステナブル」という点が、ホンダとしては最も強く押したいところらしい。


○アクリル樹脂を再利用、メリットは?



サステナCのボディパネルは、使用済みのアクリル樹脂を回収、再利用して作っている。解説してくれたホンダ先進技術研究所の田中健樹シニアチーフエンジニアによると、「ボディ部分は塗装されていない赤いアクリル樹脂を使用しています。触ってみていただけるとわかるんですが、ちょっとした傷やくぼみなら元に戻るような柔らかさを持った素材です。今までのスチールボディのように、塗装する必要がないのが最大の特徴です」とのことだ。


実は、クルマの製造時に発生するCO2の約8割が、塗装の工程に関連しているという。アクリル樹脂ならば最初から色を付けておけるので、仕上げに塗装を施す必要がない。カーボンニュートラル実現に向けた手段として期待の素材なのだ。



アクリルパネルの外板パーツは、気分に合わせて付け替えることもできる。さまざまなボディカラーを試してみたり、ラメやマーブルカラーなど、今までなかったような柄のクルマに乗ることも可能になるはずだ。


ボディの後ろに回ってみると、リアハッチ面がディスプレイになっていて、文字や図柄などを自由に表示できる仕組みになっている。「この部分には半透明の樹脂を使用していて、内側のモニターで映し出したものが外から読み取れるようになっています。テールライトも表示できるので、これまでのようなライトが不要になります」というのが田中さんの解説だ。


ルーフとボンネットにはソーラーパネルを装着。走行に使う電力まで再生可能エネルギーでまかなうサステナCは、その名の通りサステナブルなクルマに仕上がっている。


最後に、サステナCのレイアウトをおさらいしておきたい。このクルマはフロントにモーターを搭載して前輪を駆動するFFのレイアウトを採用している。リアにモーターを搭載して後輪を駆動するRRの市販EV「ホンダe」とは仕組みが異なる。FFだとリアラゲッジを広く取れるので、コンパクト電動バイクのポケットコンセプトを搭載することが可能になる。遠くの目的地まではクルマで移動し、出かけた先は積んでいった折り畳み自転車で巡るというのは筆者も実行中だが、それが小型の電動バイクになれば、もっと行動範囲が広がるのは間違いない。


サステナC&ポケットコンセプトは、限りある資源を循環利用する「リソースサーキュレーション」という考え方と、ホンダらしい遊び心あふれるアイデアを上手にミックスした取り合わせだ。「エコ」と「エゴ」の双方を追求したモデルといえる。市販化の予定は今のところないらしいが、田中さんからは「300万円以下で出せたら売れるでしょうね」との本音(?)も飛び出した。ぜひ販売に結びつけてほしいものである。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定