マツダ「MX-30ロータリーEV」に乗って考えたロータリーエンジンの未来

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2023年12月18日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
発電用ロータリーエンジンを搭載したプラグインハイブリッド車(PHEV)という、世界のどこにもない技術をひっさげて登場したマツダの「MX-30ロータリーEV」。この新型車に乗り、開発者に話を聞いて、ロータリーエンジンのこれからについて考えてみた。


マツダ=ロータリーエンジンのイメージが確立



ロータリーエンジンはマツダの「飽くなき挑戦」を象徴する技術。初めて搭載したのは1967年5月30日にデビューした「コスモスポーツ」だ。


低いボンネットに収まる小型高出力の「10A型」エンジンは491cc×2ローターから最高出力110PSを発生。流れるような美しいボディを停止状態から400mまで16.3秒で加速させ、最高速度185km/hまで引っ張ることができた。心血を注いで開発を成功させた47人の若い技術者たちが、赤穂浪士になぞらえて「ロータリー四十七士」と呼ばれたのは有名な話だ。以降は「ファミリア」「ルーチェAP」「コスモAP」「RX-7」などの市販車やルマン24時間で総合優勝した4ローターレーシングカー「787B」などがロータリーエンジンを搭載。マツダ=ロータリーエンジンのイメージが確立されていった。


排出ガス規制やオイルショック、バブル崩壊など数々の危機を乗り越えながらロータリーエンジンの歴史は続いたが、2002年のFD型「RX-7」生産終了で一旦は搭載モデルがマツダのラインアップから消えた。しかし、2003年には燃費の大幅改善や排出ガスのクリーン化を果たした「RENESIS」(13B型)エンジン(654cc×2ローター)を搭載した「RX-8」が登場。2013年まで販売が続いた。

RX-8はMX-30ロータリーEVに似てる?



MX-30ロータリーEVの試乗会場には奇しくもRX-8(マツダ広報車)が置いてあり、短い時間ながらドライブすることができた。踏力は軽いもののストロークが深いクラッチを踏みつつキーを回すと、RENASISロータリーエンジンは「プルーン」という軽快な音色で目を覚ます。1ローターあたりの容積が小さい上、2ローターによって音が干渉し合い、互いに打ち消し合うことで綺麗な音として聞こえてくるのだろう。眼前のタコメーターは10,000まで刻まれている。レッドゾーン近くまで回した時の走りを想像しただけでワクワクしてくる。


試しにボンネットを開けた状態で2台を並べてみると、MX-30ロータリーEVの「8C型」シングルローター(830cc)の「ビルルル」という低い音量が圧倒的に大きくて、13Bの音が聞き取れないほどの差があることがわかった。ちなみに両者は回転数も異なる。

興味深かったのは、RX-8が採用していた観音開きの「フリースタイルドア」をMX-30ロータリーEVがほぼそっくりそのまま引き継いでいること。使い勝手にプラス/マイナスの両面があるところも含め、ドアノブやキャッチの形状までまるで変わっていないのだ。



ボディスタイルもエンジンの使い道も違う2台だが、11年の時を経ても、ロータリーエンジン搭載モデル同士に共通項があるのはなんとなく嬉しい。


ロータリーエンジンの楽しさを追求するモデルに期待



MX-30が搭載するロータリーEVの未来を考えると、思い浮かぶのが「ジャパンモビリティショー」でお披露目となった真っ赤な「アイコニックSP」だ。会場のモニターには、カーボンニュートラル燃料を使用して発電する2ローターEVシステムが映し出された。出力は370PSだというから、8Cロータリーからかなり進化したものになるはずだ。


MX-30ロータリーEVの試乗後に話を聞いた車両開発本部副主査の信本昇二氏も、NVH性能開発部の西川鋭長氏も、アイコニックSPについては「ニュースで知ってびっくりした」というから、マツダ社内でも同プロジェクトはトップシークレットだった様子。



マツダの技術者たちによると、MX-30ロータリーEVの技術を知った上でアイコニックSPの低いボンネットや流麗な姿を見ると、エンジン、モーター、バッテリーなどをどこに載せるのか、今の形のままで入るのか入らないのかなど、レイアウトの想像がつくのだという。実際に形にするのは「かなり苦労しそうだし、プロジェクトが転がり出したら大変なことになると思う」との素直な感想も聞くことができた。



とはいえ、「社長はああいった夢の車をユーザーだけでなく、我々に向けても見せることで、『がんばれよ』とお尻を叩いてくれているんです」と語る技術者たちは楽しそうだった。マツダの若い技術者の多くは、いつかはロータリーに関わりたいという志望動機を持って入社すると聞くし、それこそ最初のロータリーエンジンをモノにした「ロータリー四十七士」の姿が目に浮かぶ。「やっぱり、そういう苦労がないと、作っている方も楽しくないんじゃないかなって気がします。技術者が『これならできます』というものをそのままやるだけだと、ショボいものしかできないと思うんです」との開発陣の言葉が印象的だった。


今回のMX-30ロータリーEVは「静かでよく走る点では優れたクルマということができますが、真面目に作りすぎたという部分もあって、ファン(fun、楽しさ)の要素に目を向けると、少し物足りないところがあるかもしれません。ロータリーエンジンも黒子に徹していますから」と信本氏は話していた。fun要素を盛り込んだロータリーエンジン搭載車は次のモデルに期待するとして、ロータリーを回し続けるパワーが、マツダにはまだまだありそうなのだ。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)

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