《2023年名言&迷言大賞》背景丸見えの「きもちくしてくれてありがとう」からA.R.Eまで!

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2023年12月28日 11:10  週刊女性PRIME

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(左から)広末涼子、大谷翔平、岸田首相、木村拓哉

 旧ジャニーズ性加害問題から、ビッグモーター保険金不正請求問題、政治家たちの失態に次ぐ失態……振り返ると2023年もいろいろな出来事が。そういえば、春先にはWBC優勝なんて明るい話題もあった。もはや遠い過去の記憶のように感じるのは、それだけよくも悪くも話題が多かったという証左なのかも。

 そこで週刊女性では、渦中の人物たちの失言、珍言、暴言、名言を振り返って、2023年を総括! どんな言葉が彩ったのか!?

2023年、著名人からの名言?迷言?

「2023年は、帝国と呼ばれるような大きな存在がガラガラと音を立てて崩れていった1年だったと思います」

 そう語るのは、コラムニストの吉田潮さん。その最たる例が、性加害問題に揺れた旧ジャニーズ事務所だと指摘する。故・ジャニー喜多川氏の所業に、国内外から非難が相次いだ。

 会見の最中に口にした、井ノ原快彦の「落ち着きましょう。子どもたちも見ている」、東山紀之の「夢をあきらめた(タレントを引退する)自分」以上に、大きなインパクトをもたらしたのが、謝罪動画に登場した「知らなかったでは済まされないが、知らなかった」という藤島ジュリー景子氏の発言だ。吉田さんがあきれて物申す。

「この期に及んで、まだこんなことを口にするのかと。浮世離れしている人たちなんだなということが、一つひとつの発言から感じましたよね。人のせいにすることで逃れることができた世の中が、ずっと続いていたということ」

 また、報道するメディアに対しても、「テレビ各局の“忖度はあったが圧力はなかった”という弁解も迷言でしょう」と吉田さんは苦言を呈する。現在は、社名を改め『STARTO ENTERTAINMENT』に。まさか、“旧ジャニーズ事務所”と説明することになるとは、誰が思っただろう。

 音を立てて崩れたという意味では、保険金不正請求問題が波紋を呼んだビッグモーターも忘れてはいけない。ゴルフボールなどで車にわざと傷をつけていたことが発覚。それに対して、「ゴルフを愛する人への冒とくですよ」と言ってのけた兼重宏行社長(当時)の発言にひっくり返った人は多いはず。阪南大学で教壇に立ち、自身も16年間、ディレクターとしてNHKに在籍していた経験を持つ大野茂さんは、「まるでコントを見ているようだった」と苦笑する。

「芸能人や政治家の失言は珍しくないでしょうが、誰もが知っている企業のトップがこうした発言をしてしまうとは。大きな保険会社が取引先なわけですから、危機管理やコンプライアンスがしっかりしていると思いきや、ここまでずさんだったことに驚きです」(大野さん)

 取引先の損保ジャパン・白川儀一社長(当時)も、会見の場で「追加調査を行わずに取引を再開し、再発防止や牽制機能を生かしてサンプリング調査をしていくという選択肢はどうか」と判断する始末。不正が限りなくクロに近い状況だとわかっていながら、取引を再開する──。大野さんは、「メディアが旧ジャニーズに忖度していたように、保険会社とビッグモーターも同じだったということ」と分析する。

伝統ある宝塚、歌舞伎界からも迷言が……

 実際に崩壊してしまったのが、違法薬物によって“廃部”が決まった日本大学アメリカンフットボール部だ。悪質タックル問題から約5年。連日、情報番組で取り上げられる様子は、まるで再放送を見ているかのようだった。

「ただし、『(澤田康広副学長に)もみ消してもらえると思い、安心した』と法廷で発言した元アメフト部の被告の発言は、忖度がはびこる今の世の中を考えると、“よくぞ言った”と思います」(吉田さん)

 部関係者は、「そのような期待はそもそもあり得ない話」と否定しているが、もはや日大アメフト部の信用は地に堕ちた。

「40〜50代になると、長いものに巻かれてしまう。何があったかを若い世代がきちんと言葉にすることはとても大事。そこから風穴があくことがある。『もみ消してもらえると思った』という発言は、私の中では名言」(吉田さん)

 一方、決着があやふやで釈然としないのが、団員の死亡問題で逆風にさらされた宝塚歌劇団だ。会見では報告書を公表したが、その内容は「強い心理的負担が故人にかかっていた可能性が否定できない」というもの。「まるで悪魔の証明の逆バージョンのよう」とは大野さんの見解。悪魔の証明とは、「ないことを証明する」ことだ。

「“故人にかかっていた可能性が否定できない”──、これでは何とでも受け取ることができます。あったかもしれないけど証明できません、そう説明しているわけです。都合の良い発言をするから、世間からは『何を言っているんだ』と迷言、珍言扱いされる」(大野さん)

 そして、「価値観の変化に気がつかない組織や企業は瀬戸際に立たされる」と続ける。

 この大野さんの指摘に、吉田さんも同調する。

「例えば旧ジャニーズもそうですよね。恩義があることはわかります。しかし、退所したタレントたちもたくさんいる。彼らは、時代の流れを見誤らなかったということ」(吉田さん) 

 事実、謝罪会見直後に流れを見誤って、インスタグラムに《show must go on!》と投稿した木村拓哉は炎上した。

 新しい時代の価値観を受け入れる──。だとしたら、伝統芸能の世界に身を置く市川猿之助の行く末も気になるところ。「許されるなら歌舞伎で両親や迷惑をかけた方々に償いたい」と、公判で胸中を明かしたものの、はたして梨園はどう判断するのか。

「いくら執行猶予がついたとはいえ、両親の自殺ほう助をした彼を復帰させるのは、難しいのではないか。元の世界に戻れたとしても、『歌舞伎の世界は浮世離れしている』と世間からバッシングを受けかねない。旧態依然とした業界が、次々と刷新を迫られるのが昨今の潮流」(大野さん)

「寄らば大樹の陰──と言いますが、その大樹が根幹から揺らぐ時代です。中には、腐り始めている大樹もある(苦笑)。業界や組織に頼る時代ではなくなってきている」(吉田さん)

 それを痛感するのが、毎年恒例、政治家たちの失言、暴言だろう。

 今年も、荒井勝喜元首相秘書官の「(同性婚カップルに対して)見るのも嫌だ」や、桜田義孝衆議院議員の「女性議員は発言しない人が多い」など、舌禍に注目が集まった。こんな人たちを頼っていいわけがない!

「想像力が欠落している人が政治家をしていることがわかる。政治家の発言を反面教師にしないといけない国ってなんなんだろう」と、吉田さんはガックリと肩を落とすが、「『パーティー券を売ることが大変で。ノルマが……』とこぼした桜田さんにはグッジョブと言いたい」と笑う。桜田議員は、今や毎年何かしらの失言をする“失言製造機”と化している。

「派閥の政治資金パーティー問題が自民党を揺るがしていますが、桜田さんの発言は、二階派から課されるノルマがきついことを暴露したことに加え、パー券をさばけないほど、自分に人望がないことも物語っている。いろいろと情けなさすぎる!(笑)」(吉田さん)

 国のトップ、岸田文雄首相が、「検討に検討を重ねる」「検討を加速する」などと迷言を連発しているのだから、情けない政治家ばかりになるのも必然か。国民から、「増税メガネ」と揶揄されるのも納得だ。

スポーツ界から笑顔にさせてくれた名言が

 あまりの失言、迷言の多さに暗澹(あんたん)たる気持ちになってくるが、今年、私たちを笑顔にしてくれた名言がなかったわけではない。吉田さんは、広末涼子の“あの”フレーズを称える。

「個人的に、鳥羽周作氏と不倫をしていたことが発覚した広末涼子の《きもちくしてくれてありがとう》は名言だと思います。つたないラブレターの中に、性的な背景が丸見え。みんながLINEで済ませてしまう中、あらためて手紙ならではの素晴らしさを教えてくれた」(吉田さん)

 また、大野さんは「発言そのものは失言」と前置きした上で、秋田県・佐竹敬久知事の「じゃこ天は貧乏くさい」騒動を、「その後のフォローを含めると明るい話題」と評価。佐竹知事は発言後、特産としてじゃこ天を扱う四国4県の知事に陳謝。すると、秋田県を含む5県での物産展が開催されるまでに。その結果、じゃこ天の売り上げは伸び、秋田県民からもネットや電話での注文が相次いだという。

「失言、謝罪という流れで終わるのではなく、メリットを生み出した。佐竹知事が信用されていなければ、周りからのフォローもなかったはずです。裏を返せば、トップに信用があれば、ピンチはチャンスにかえられるということ」(大野さん)

 旧ジャニーズやビッグモーター、日大にも名言が生まれる可能性はあったのだ。しかし、保身や言い逃れに奔走した結果、自らが路頭に足を踏み入る迷言を生み出してしまった。

 リーダーが信頼されていることの大切さ。その最たる例が、栗山英樹氏が監督を務め、頂点に輝いたWBC日本代表だろう。決勝直前、大谷翔平選手が発した「憧れるのをやめましょう」は、これから語り継がれるであろう名言に違いない。識者2人は、「大谷翔平だから成立する言葉」と笑う。

 一方で、「藤井聡太八冠にも言えることですが、謙虚さやまじめな言動が、他の人のプレッシャーにならなければいいけれど」と吉田さんは付言する。

「ポジティブすぎる名言は、私たちのような凡人にとって、時に重すぎる。今年放送された『いちばんすきな花』(フジテレビ系)というドラマの中で、松下洸平演じる主人公が、『やまない雨はない』『明けない夜はない』といったポジティブな名言に対してアンチテーゼを唱えるシーンがあります。名言が一部の人しか言えない言葉になることで、圧倒的多数にとっては重荷になる。“名言疲れ”が起きない程度の名言のほうが健全かもしれない(笑)」(吉田さん)

 言われてみれば、プレッシャーを感じさせないために、阪神タイガースの優勝は「アレ」という言葉で共有された。言葉は、時代の雰囲気とともにある。だとすれば、2024年はどんな雰囲気の言葉が日本を包み込むのだろうか。

2023年をにぎわせた迷言・名言集

「お相手と私自身を守り続けることは極めて難しく、耐え難いものでした」(羽生結弦 自身のスピード離婚に対してコメント)

「15年ともに歩んできたチームの出した決断」(降谷建志 MEGUMIとの離婚に対してコメント)

「ブタ」(渋谷区・澤田伸副区長 区役所の公用チャットシステムで、区議会の女性議員を中傷)

「『全部のジャンルの審査委員長が松本人志さん』という、とんでもない状況なんですよ。中田で笑うのは知性が必要」(中田敦彦 自身のYouTubeチャンネルにて発言)

「ユニクロみたいな安い服」(谷原章介 情報番組『めざまし8』(フジテレビ系)にて発言)

「クマがかわいそう」(クマ駆除を行う自治体への抗議電話多数)

「俺は許さない」(永山瑛太 弟・永山絢斗が大麻取締法違反(所持)容疑で逮捕された際の発言)

「やはりまだまだ頂上が見えるということはないのかなと思っています」(藤井聡太 八冠達成に際して発言)

大野茂(おおの・しげる)●1965年東京都生まれ。阪南大学教授(専攻:メディア・広告・キャラクターなど)。慶應義塾大学卒業後、電通、スペースシャワーTV、スカパー!、NHKを経て現職。著書に『サンデーとマガジン』(光文社)『2時間ドラマ40年の軌跡』(徳間書店)



吉田潮(よしだ・うしお)●コラムニスト、イラストレーター。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆し、『週刊新潮』にて『TVふうーん録』など連載多数。『週刊フジテレビ批評』のコメンテーターを務める。近著に『ふがいないきょうだいに困ってる』(光文社)

(取材・文/我妻弘崇)

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