野球本を書いてほしい選手は?【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第97回

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2024年01月19日 13:41  週プレNEWS

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野球本について語った山本萩子キャスター

みなさんこんにちは、本を読むのが大好き山本萩子です。両親が本が好きなこともあり、私も幼い頃から絵本や小説に親しんできました。今でも週に1冊は新しい小説を手にしないと、体がかゆくなってきます。

本っていいですよね。自分が読みたいタイミングで、待っていてくれるから。ということで、今回は「野球本」についてお話しさせてください。

自分のペースで読めるところも本のいいところですが、著者が1対1で読者と向き合ってくれているように感じることも魅力のひとつだと思うんです。テレビや映画、コンサートなどと違って、著者が投げかけた言葉は、ダイレクトに私の心に届きます。

野球本でも、その著者がどれだけ偉大な選手や監督だったとしても、「著者と読者」という関係性を越えて、私だけに話しかけてくれているような錯覚さえ覚えます。だから選手や監督が書いた本を読むと、その人のことがもっともっと好きになってしまいます。

宮本慎也さんが書いた『意識力』(PHP新書)という本を読んだときには、強烈なキャプテンシーの裏側を垣間見たような気がしました。もちろんグラウンドで活躍する姿も見ていましたが、初めて仕事でお会いした際には感動して泣いてしまって。本を手に、人生で初めてサインをおねだりしてしまいました。そのサイン本は、今でも我が家の宝物です。

紙に文字が印刷されている本は、どこか特別感があります。スマホで文章を読むのもいいけど、紙で読むのを特別に感じるのは、きっと私が昔から本に触れて育ったからでしょうね。

この連載はインターネットでしか読めませんが、うちの祖父母は、わざわざ連載を紙にプリントアウトして保存してくれているとか。最近では漫画などを電子書籍で買うことも増えましたが、やはり本はリアルなほうがいいと思います(電子書籍は気軽に持ち歩けるし、かさばらないので、結局は個人の好みですね)。

本題に戻りますが、野球本の種類は大きくふたつ分かれます。

・選手や監督自身が書いたもの
・本人以外のライターさんなどが書いたもの

選手や監督自身が書いた本のいいところは、主観が入っていること。たとえば、野球史に残る印象的な試合を振り返る記述があったとき、読者は「あのときは、こんなふうに見えていたんだ」という新たな感動をもらうことができます。

一方でライターさんなどが書いた本を読むと、この選手はこう思っていた、首脳陣はこうしていたなど、ひとつの出来事を立体的に脳内で再現することができます。特にスポーツノンフィクションものは、昔から人気のジャンルですね。

本を読みながら、記憶に残っているシーンの"答え合わせ"があとからできるのは、とても幸せな時間です。野球は余白が多いスポーツなので、試合を見るファンはあれこれ想像を膨らませることができます。投手の手からボールが離れ、プレーが決着するまで数秒。そのわずかな時間にあったドラマを、ゆっくりと活字で反すうできるのは贅沢な時間だと思うのです。

ヤクルトなどで指揮を執った野村克也監督は、ご自身も筆を執られていますし、周辺書籍もたくさん出ています。それほど、"ノムさん"がたくさんの言葉を持っていたということなのでしょう。

選手に寄り添った自伝的書籍はたくさんありますが、一方で落合博満監督の書籍のように、客観的に評論する本も面白い。少し言葉は難しいのですが、人間的に明朗快活な方よりも、少し影がある方のほうが面白い本になるような気がするのですが......これは偏見でしょうか?

もし私が編集者だとしたら、注目している書き手は広島の秋山翔吾選手です。秋山選手はSNSなどはやってないけど、日本野球とメジャーリーグも経験し、自分の言語をたくさん持っている方です。確固たる哲学があるので、きっと面白い書籍になると思います。

ヤクルトであれば、中村悠平捕手にお願いしたいですね。グラウンド全体を俯瞰しているキャッチャーもまた、さまざまな言葉を持っているような気がします。

そして、私もいつの日か書籍を出したいと思っています。その日まで、この連載の応援をよろしくお願いします!

それではまた来週。

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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