「桐島聡」を名乗る男が人生の最期まで逃げ切れた理由

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2024年01月30日 17:11  週プレNEWS

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事件が発生したのは半世紀前のことだが、警察による桐島の手配写真には見覚えのある人も多いだろう


約50年にわたる逃亡生活から一転。社会に浮上した男は、わずか数日でこの世を去った。

【写真】男が最晩年を過ごした木造アパート

70年代の連続企業爆破事件で重要指名手配となっていた、東アジア反日武装戦線のメンバー・桐島聡容疑者(70)を名乗る男が1月29日、入院先の神奈川県鎌倉市内の病院で息を引き取った。男の証言を足掛かりに、いまだ海外潜伏を続けるメンバーたちの行方をたどろうという捜査当局の目論見は崩れた。

全国紙社会部デスクが、桐島容疑者を名乗る男が浮上した経緯を説明する。

「男は末期の胃がんを患い、1月中旬に入院しました。そして、25日に病院関係者に桐島聡であることを打ち明け、警察に情報が寄せられました。男は警視庁の事情聴取に対し、本人しか知りえない家族構成や戸籍に関する情報を伝えていることから桐島容疑者であるとみられ、最終確認のためにDNA型の鑑定を進めている最中に死亡しました」

桐島容疑者は広島県出身で、大学在学中に東アジア反日武装戦線のメンバーと知り合い、合流して爆破事件に関与していく。75年5月の一斉摘発の際は、警察からメンバーとして把握されていなかったために逮捕を免れて逃亡。その後の捜査で、同年4月の韓国産業経済研究所爆破事件に関与したとして指名手配を打たれた。公安OBが語る。

■半グレの先駆的組織構造

「桐島は東アジアに3つあるグループのうちの"さそり"に属していた。東アジア反日武装戦線は、アナーキストを中心に集まったグループだ。他の左翼党派とは異なり、メンバー同士で明確な序列や役職はなく、いまでいう半グレに近い。その中で桐島は実行役だけでなく、爆弾の製造にも深く関与していて、手配容疑以外にも、建設会社爆破事件などに関わっていたともみられている」

今際の際で正体を告白した桐島容疑者を名乗る男。「死ぬ時くらいは本名で死にたい」と説明していたが、前出の公安OBはその真意を次のように推しはかる。


「警察の追跡から逃げ切ったことをアピールするために、死の間際になって本名を名乗りだしたのではないか。東アジアは、都市ゲリラ兵士を標榜して、市民社会に紛れて爆弾闘争を手掛けるように指導していた。中には、警察への目くらましで、創価学会に偽装入信していた者もいた。そして、仲間が一網打尽となって一人取り残された桐島にとっては、逃走こそが闘争で、逃げ切って人生の幕を下ろすことで警察の鼻を明かしたかったのだろう」

■海外滞在を示唆。日本赤軍との関係性も...

正体を明かして間もなく死亡した桐島容疑者を名乗る男が残した数少ない言葉で、注目されるのは「海外で逃亡生活をしていたが、最期は日本がよかった」という発言だ。

「東アジア反日武装戦線は桐島容疑者を除いて一斉検挙されましたが、佐々木規夫、大道寺あや子といったメンバーは、後の日本赤軍が海外で起こした人質事件で犯行グループの要求に政府が応じて釈放され、国外で潜伏しています。

そして、中東やヨーロッパなど世界を股にかけて、ハイジャックや誘拐、爆弾テロ事件を起こしてきています。そうした組織に、桐島容疑者も一時合流していた可能性も浮かんできました。

捜査当局としては、日本赤軍の足取りをつかむ好機にもなりえましたが、死亡によって証言は得られなくなりました。それでも、男が桐島容疑者だと断定され次第、自宅や関係先を家宅捜索して日本赤軍などとの関係性を捜査していくことになります」(警視庁担当記者)


■逃走資金は自ら獲得が鉄則

当然、50年近くに及ぶ逃亡生活をサポートした支援者の存在も調べられていくことになるが...

「東アジアは、腹腹時計という教則本で、"逃走資金は自らが獲得するのが鉄則"とうたっている。桐島を名乗る男も長いこと工務店に勤めていたし、保険証を持っていなかったようなので、支援者はおらず、自活していたのだろう。誰も巻き込まず、身ぎれいにこの世を去ったのではないか」(前出・公安OB)

昭和のあだ花は、我々に謎とフラストレーションだけを残して、寿命を全うするという形で50年の逃走生活に終止符を打った。

文/大木健一 写真/時事通信、警察庁、医療法人徳洲会

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  • 「最期は本名で」なんて言う人が【逃げ切れた】って言えるのかちょっと考える
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