松村北斗&上白石萌音、再共演で新たな発見 “15分後に一変する世界”を共有した2人【インタビュー 】

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2024年02月06日 07:00  ORICON NEWS

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映画『夜明けのすべて』に主演する上白石萌音、松村北斗 撮影:山崎美津留(※崎=たつさき) (C)ORICON NewS inc.
 友達でも恋人でも、ましてや家族でもない。それでも自分のことを理解し、信じてくれる存在がいてくれたら――。そんな奇跡のような出会いと周囲の人との関わり合いを描いた、瀬尾まいこ氏の小説『夜明けのすべて』が、三宅唱監督によって松村北斗(SixTONES/28)と上白石萌音(25)のW主演で実写映画化(2月9日公開)する。第74回ベルリン国際映画祭【フォーラム部門】 に正式出品が決定し、世界から注目を集めている本作。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(2021年後期)で壮絶な時代を生きた夫婦を演じた2人が、再共演でまったく違った関係性を築き、そこで互いについて新たな発見もあったという。

【動画】松村北斗×上白石萌音『夜明けのすべて』ロング予告

 同じ職場で働く、PMS(月経前症候群)に悩まされている藤沢さん(上白石)と、パニック障害を抱えている山添くん(松村)。ひょんなことから友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく。職場の人たちの理解に支えられながら、少しずつ希望を見出していく2人の奮闘を、温かく、リアルに、ときにユーモラスに描いている。

■松村北斗の“丁寧な生活”ぶり 上白石萌音が目撃「犠牲にしがちな部分をちゃんと守っている人」

――松村さんと上白石さんは『カムカム』以来の共演ですが、物語のなかでは初めて出会う2人。現場に入って、再共演だからこそ波長が合うなと感じたことや、逆に共演から時間が経ったことで変化はありましたか。

松村:再共演だから良かったこと、時間が空いたから良かったこと、どっちもありますよね。上白石さんには安心を感じていたし、勝手にいろいろなことを背負って歩いていける人というイメージがあったので頼りにできるな、と。でも『カムカム』のときは安子ちゃん(上白石の役名)だったから。

上白石:久々にそのイントネーション聞いたなぁ(笑)

松村:そのあと、テレビなどで偶然拝見しながら、原作を読んでだんだん“藤沢さんを演じる人なんだよな”ってグラデーションのように切り替えていきました。

上白石:一度、命がけで生きた時代の2人を演じたからこそ、遠慮せずにいける感じはもちろんありました。『カムカム』は昭和、今回は現代劇で、役柄も全然違うし、年上・年下も逆。まったく違う人として対峙できた気がします。そういえば、夫婦やってたな、前世?みたいな感覚です。夫婦を演じたからこそのものと『夫婦だったっけ?』みたいなまた違った関係性をゼロからつかむことも違和感なくできてうれしかったです。どちらの役でも、しっくりきたし、どちらも心地が良かったです。作品のなかにちゃんと入れたんだなと思います。

――お2人がまとっている空気感がとても似ている印象を受けました。実際に、撮影しながら似ているなと共感できるところはありましたか。

上白石:すごくコアなことなのですが、“人に急に知られていくこと”に対してどう思うかについて話したことがあるんです。私たちは『わ〜い!』となれない2人なんです。

松村:話の発端は朝ドラの話から、放送15分前の自分と、15分後の自分は、自分からしたら何も変わっていないのに、世界はいきなり変わる。いきなり『(自身が演じた)稔さん』が注目され、1週間経てば街なかでも『稔さん』と呼ばれたりする。自分は何も変わっていないけど、“稔さん”という役が魅力的だったから『彼(自分)はすごい俳優さんなんじゃないか』という目を向けられ始める。『彼はすごくいいお芝居をした』と言ってくださる方もいるけど、自分はまだ何も変わっているわけではない。周りの人にとっての自分だけがすごく上に行っちゃって、怖くて怖くて仕方ない。

上白石:それに対しておびえているのが同じで『めっちゃわかります』と響き合っていました。怖いですよねって。

松村:認められた!じゃなくてね(笑)

上白石:違う、違うって(笑)。だから『カムカム』の放送中もきっと同じ思いを抱いて過ごしていたんだなとわかったりして、そうだよねと思えました。朝ドラの撮影中はまだ放送されていなくて世間の反応もわからないままやっていたので。“深夜のような暗さ”の共鳴でしたね(笑)

――人見知り同士な一面も似てますか?

松村:上白石さんは、勝手に人見知りではないと思ってたので。

上白石:いやいや、静寂が怖い感じとか松村さんと、同じです。

松村:人見知りっていくつかパターンがあって、僕は間が空いた瞬間が怖くて仕方ないから矢継ぎ早にしゃべってしまうのですが、『私もそうです』って。

上白石:今回の撮影でも始めの方はそのパターンで会話が続いていた。でも、それがいつからか山添くんと藤沢さんのような感じになっていきました。

松村:自分の話に満足したら黙って、話したくなったら話して。『それこそ』『でも』って切り出したかと思えば、実は昨日話した話題の続きだったりした(笑)

上白石:完全に山添くんと藤沢さんの影響ですね。ある意味、その時期は山添くんと藤沢さんだったのだと思います。

――今回、共演して知った互いの新たな一面はありましたか。

上白石:役者さんとしてたくさんあることは、置いといていいですか?(笑)

松村:いいです、いいです。褒めてもらえるならなんでも(笑)

上白石:現場でみんながお弁当を食べているなか、端の方で野菜をムシャムシャ食べていたことにびっくりしました。『持ってきたんですか?』と聞いたら、朝起きて準備して、野菜足りないなと思って、お弁当箱に入れて持ってきたとおっしゃっていて。しかも、いつも水筒も持っていて、ちゃんと生活をしているな、と尊敬しました。

松村:そうでしたね、“丁寧”でしたね(笑)

上白石:私も水筒を持とうと思って静かに真似しました。

松村:寒かったですから、あたたかいよもぎ茶を持ってきました。

上白石:レベルが高い(笑)。忙しいと犠牲にしがちな部分をちゃんと守っている人なんだ、とより尊敬が増しました。

松村:血液検査の結果、鉄分が少なかったようだったので、レタス類とサラダほうれん草をよく持って行ってました。よもぎ茶には造血作用があるんです。山添くんを演じるために、体重を落としていたので野菜多めの食生活をしていました。

――松村さんは上白石さんについて新たなに知った一面はありましたか。

松村:実は、『カムカム』の頃はそこまで長い時間一緒にいたわけでもなく、印象を聞かれても『本当にすばらしい方です!』とよく言うような感じだったんです。でもジョークを言ったりもしますよね。

上白石:つまらないやつだと思われてたんですか?(笑)

松村:あまりふざけたことを言うと呆れられるかと思ったら、むしろジョークのほうが多かった(笑)。ときにはウィットに富んだ会話もありました。

上白石:やるじゃん?って(笑)

松村:上品でセンスの良い笑いの方。だんだん会話も盛んになってくると、大笑いするようなジョークではなくクスクスと、面白かったな、と思わるような会話も増えました。こういう感じなんだ、というのがありました。会話の仕方がわかりました。

上白石:松村さんの話が良く練られているんです。1回ラジオで話されたものだったりして、悔しくて。

松村:いくつかラジオと同じ話を持ってくるという(笑)

■撮影通じ“横並び”の居心地の良さを知る 真っ暗なロケバスで語ったことも

――パニック障害もPMSも人それぞれに症状が違い、他人にはなかなか理解しえない病気でもあります。日常の描写とのメリハリは大変だと思いますが、演じるときはどう意識して、どんなキャラクターにしようとしましたか。

上白石:藤沢さんは普通の顔をしてとんでもないことをする人。いきなり他人の家にあがって髪を切ったり、お守りを『いっぱい買ったからどうぞ』と渡したり…“私、普通ですけど”という顔をして、すっごく変な人。どうやったら違和感なく他人の髪の毛を切ることができるんだろうとか、そういうところに向かって役を積み上げていきました。エピソードから逆算しながら、どういう子だったらそういう突拍子もない行動が自然に見えるんだろうと考えていました。結果、現場で松村さんと対峙してみたら、今まで考えたことは何だったんだろうと思うくらい自然に演じることができました。松村さんが、持ってこられたもの、すでにお持ちだったもの、そして監督が自由に伸びやかに撮ってくださり、ハラハラしていたものがスッと晴れていくような感覚でした。

松村:山添くんは自分のパニック障害というものに、自分なりに向き合っている。自分で乗り越えたい思いがある。でもどこか放り出している部分もちょっとある。誰かに助けてもらいたいというより『自分は大丈夫』というタイプの人間。パニック障害やPMSを取り扱った作品ではありますが、『こんなに苦しいから、一緒に悲しんでね』という作品ではない。自分が演じる上で、観客の感情を誘い出そうという“あざとさ”が一瞬でも出たらすごく気持ち悪いし、きっと瀬尾さんの書いた原作とも大きくはずれてしまう。あくまで山添くんは自分の人生に必死であり、どれだけ同情を誘わずにいるか。観客にも『とりあえず、ほっておくか』と思われるように演じることが大事かもしれない。登場人物にバレないように苦しんで、でも、映画を観ている人には気づかれるか、気づかれないくらいのバランス。そのなかで三宅さんを信じ切り、“周囲にバレないように苦しむ”というのを心がけました。

――松村さんは「現場では役に入り込みすぎるのではなく、カメラの外で、みんなと一緒に冷静に考える時間があった」とおっしゃっていました。そのアプローチで得られたものはありますか。

松村:山添くんの部屋に藤沢さんと2人でいる時間が長かったのですが、大きい家でもないから、どうしても体同士が近くなる。これくらいの年齢の男女が2人きりでいると、当人たちの居心地と別に男女の匂いを感じてしまう。“山添くんと藤沢さんだったらわかるけど、傍から見たらさすがにね”という部分は正直たくさんあって、自分もその距離感を納得しないとダメだった。その見極めは冷静にならないとできない気がして、三宅監督を含めて3人で客観的に見るようにしていました。いろいろなシーンで違う目線で見ることでギリギリの“まったく(男女の関係が)ない”を表現しようとしました。本人たちからしたら「まったくない」だけど、世間からしたら“ギリギリ”のラインに見えるようにしました。

――今作を通してPMSやパニック障害について初めて知ったことや改めて気づいたことはありますか。

上白石:いっぱいあります。

松村:常識程度には…と思ってたけど、認識も間違っていたんじゃないかと思うくらいズレも感じました。症状がどのようなものかは知っていても、それに苦しむ人の思いや生活に対してまだまだ誤解があるんじゃないかと思いました。

上白石:私も、名前は知っていて症状へのイメージもあったけど、そのイメージがそれぞれ1個ずつしかなかった。PMS=これ、パニック障害=これ。実際は“これ”がいっぱいあるんですよね。人によって全然違うもの。自分には同じ症状がなかったとしてもカケラをもっていたりする。もっと奥行きや幅があるんだと見方が広がりました。PMSやパニック障害だけじゃなくて世の中のいろいろなものがそうなんだろうな、と思いました。

――山添くんや藤沢さんを演じたことで、人との向き合い方やコミュニケーションの仕方に影響を受けたことはありますか。

上白石:横並びでしゃべるって楽だな、こんなに、なんでも言えるんだな、と実感しました。三宅監督も2人が横並びで顔を見ずにしゃべっている時間を大事にしたいとおっしゃっていて、確かに…!と。話を聞くときは『目を合わせなきゃ』と思うけど、多分、目を合わせずに相づちを、打つだけでも話しやすいことってある。向かい合って顔を見合うことだけがベストじゃないんだと感じました。人とどうやったら楽にいれられるのか勉強になりました。

――横並びの居心地の良さは松村さんも感じられたのでしょうか。

松村:山添くんの家では結構待ち時間が多く、監督とも横並びでしゃべっていました。自分にとって強いトピックを言ったらチラッとのぞきこんだりして。藤沢さんと山添ってこういうことだよなと、相手の顔色を見ないからしゃべれることってあるし、顔色を見ないけど近くにいるから話せることってたくさんある。

上白石:撮影中に真っ暗なロケバスの中でしゃべったこともありましたよね。

松村:相手がどんな体勢かもわからない。でもその瞬間ではとても楽しいことをしゃべっているんですよね。

上白石:本当に三宅さんが映画に映っていないのか不思議なくらい3人で話してました(笑)

■松村北斗&上白石萌音の“しんどさ”の乗り越え方「立ち向かう」「あきらめる」

――山添くんと藤沢さんは不安定な日々をお互いに支え合う描写がありますが、お2人は日常では怒りや悲しいことをどうやって乗り越えますか。

上白石:この2人に対して“いいな”と思うのは、PMSやパニック障害を抱えていることもあって『自分の中に溜め込んでいると自分にとっても良くないから言わせてもらうわ』みたいなスタンスがあるんです。相手にもよりますが『私が嫌だからいうね』とか、相手が考えていることを直接、聞くとだいぶ楽になる。言えなければ文字にしてもいい。2人はたくましいですよね。会話も『パニック障害だからそういうことができていいよね』みたいに言える関係性もすごいし、相手を気遣うことも大事だけど、たまには自分の気持ちを優先させて言いたいことを言うことも大事かもしれません。

――上白石さんは何か言葉にすることは出すようにしていますか。

上白石:なぜ怒っているのか、なぜ怖いのか、書かないまでも理詰めで考えると意外と『そっか』と腑に落ちることは多いので、モヤモヤを噛み砕いてみることはあります。立ち向かっていきますね。

松村:僕はしんどいことやネガティブなことの“タンク”がパンパンにならないと良いことが訪れないと思っています。昔、空手をやっていたときにどんなに練習しても全然うまくならないし、周りにも置いていかれていた。でも頑張っていたらある時、追い抜いていった人を抜かすくらいに急に成長した経験があった。どんなに練習しても全然成長しない一定期間を過ごしたら急に何かがうまくなるように、今はタンクをためている途中なんだ、としんどいことはあきらめています。しんどくなり続けないといけない時期なんだな、と、苦しいけど続けるしかない。しんどいことは探してもこないし、来たということはタンクをためるチャンスなんだと思います。一回上がれば、またタンクをためる時間が始まる。人生は上下するんだな、と思って毎日頑張っています。

【作品情報】
2月9日(金)全国ロードショー『夜明けのすべて』

出演:松村北斗 上白石萌音
渋川清彦 芋生悠 藤間爽子 久保田磨希 足立智充
りょう 光石研

原作:瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社/文春文庫 刊)
監督:三宅唱
脚本:和田清人 三宅唱
c瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
公式サイト https://yoakenosubete-movie.asmik-ace.co.jp/
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