『ブラックサンダー』30周年、当初は全く売れず1年で終売…奇跡の復活劇を遂げるも「バレンタイン特需は今もない」

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2024年02月09日 09:10  ORICON NEWS

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今年で30周年を迎える『ブラックサンダー』
 1994年に有楽製菓が発売した『ブラックサンダー』。累計売上17億本を突破している同社の看板商品だが、発売当初は全く売れず、わずか1年で生産終了していた。しかし、九州地区で復活を望む声が上がり、エリア限定で復活。そこからいかにして、全国的な人気を確立したのだろうか。’13年からは堂々と「義理チョコ」向けの施策を打ち、バレンタインのプロモーションも積極的に展開している。同商品の軌跡や今年のバレンタイン戦略を聞いた。

【写真】最初は“英語表記”で全く売れなかった…!初代『ブラックサンダー』

■コンビニに置いてもらえず…「大学生協」に着目、英語→カタカナにパケ変更も契機に

 今年で30周年を迎える『ブラックサンダー』。日々、あらゆるチョコ菓子が登場する中、長年人気を維持してきた秘訣は、何と言っても独自の“ザクザク食感”ゆえだろう。1994年当時、有楽製菓では『チョコナッツスリー』(20円)という軽い食感が特徴のお菓子が好調だった。それよりも「もう少し重い食感、食べ応えのある食感」という方向で『ブラックサンダー』は開発された。

「『チョコナッツスリー』はナッツとパフとチョコという組み合わせでしたが、『ブラックサンダー』はプレーンビスケットとココアクッキーという異なる2種類の食感を組み合わせています。プレーンビスケットをゴロッと入れる成型の技術や、それを高速で作る技術も必要でしたが、何度も試作を重ねて、“ザクザク食感”を実現しました」(有楽製菓・嶋田真亜子さん/以下同)

 苦労の末にようやく完成したものの、好調の『チョコナッツスリー』に対して『ブラックサンダー』はからっきし売れず、翌1995年に終売を迎えた。

「ところが、営業担当が『九州地区では売れ行きが良いので、もうちょっと売らせてほしい』と会社に熱く掛け合ったそうです。会社も『そこまで言うなら、残っている包装材の分だけでも売ってみようか』という流れで、1996年に再販になりました」

 かくして復活を遂げるも、「再販して10年くらいは、そんなに売上が伸びたわけでもなかった」と、しばらくは低迷を続けていた。そんな『ブラックサンダー』がヒット商品への道を歩み始めるのは、2000年代中頃のことだ。

「初めは販売実績がなく、スーパーやコンビニになかなか置いてもらえなかったんです。子ども向けの駄菓子として作った商品ですが、お子さんにとっての30円は当時ちょっと高かったのかなと。そこで、大学生協に販路を広げたところ、少しずつ食べてもらえるようになりました。学生さんにとっては、30円はお手頃に感じてもらえたのではないかと思います」

 2005年に『生協の白石さん』のブログで取り上げられ、さらに認知度を上げると、徐々に全国のコンビニでも置いてもらえるようになった。

「また、当初はパッケージの商品名が英語表記だったので、お子さんには伝わりにくかったのかもしれません。2003年にカタカナ表記に変更したことで、幅広い世代の方に認知していただけたように思います」

■30年で値上げは一度きり、「男性も手に取りやすいチョコ菓子」独自ニーズを確立

 現在、『ブラックサンダー』の主な販売先はコンビニだ。購買層は30~40代の男性が多く、男性比率が多いチョコ菓子は珍しい。小腹が空いた時に手軽に買ってその場で食べられ、金額的にもボリューム的にもちょうどいいことから、独自のニーズを獲得している。

 しかし、2020年以降は、コロナ禍で在宅勤務が定着し、仕事の合間のコンビニ利用は激減。また、おうち時間を楽しみたいというプチ贅沢志向が強まった。コンビニやスーパーでも高価格帯の菓子やスイーツが売れるようになった中、「30円」の『ブラックサンダー』はどう闘ったのだろうか。

「タイミングはたまたまだったのですが、2020年から、従来の『ブラックサンダー』と同じ形状で1本60円という、ちょっと高級路線の「プレミアムシリーズ」を発売しました。これが巣ごもり需要にフィットし、かねてからスーパーを中心に販売していたファミリーパックも、’20年以降、ぐんと売上が伸びました」

 結果、一度は終売した『ブラックサンダー』だが、復活以降、大きく売上を落としたことはないという。発売から30年。ビスケット、クッキー、チョコの味わい、口どけなど微妙な改良は随時行われているが、基本的な製法や原材料は当初から変わっていない。それでいて、昨年まで「30円」の価格を変わらず維持していたのも、愛され続ける大きな要因の1つだろう。2017年に2mmほど短くサイズ変更したが、昨年3月に初の値上げを行った。

「原材料の価格が常に上昇し続けていましたが、その中でも何とか30円で提供したいという思いがありました。設備投資をして生産性を向上させたり、包装を見直したり、原料の内製化を進めてコストダウンを図るなどしてきましたが、やはり努力でカバーできないほどの物価高騰があり、初めての値上げに踏み切りました。再度サイズを縮小することも考えましたが、これ以上小さくすると、『ブラックサンダー』としてのちょうど良いボリューム感が得られないため、苦渋の決断でした」

■プロモーション注力し続け10年…『ブラックサンダー』だけバレンタイン商機なし?

 『ブラックサンダー』と言えば、バレンタインデーへの取り組みも積極的に行っている。2013年から「一目で義理とわかるチョコ」として押し出し、翌年には世界初の“義理チョコ専門店”を東京駅にオープン。独自のプロモーションで話題を呼んだが、売上には直結していないようだ。

「チョコメーカーにとってバレンタインは絶好の商機なのに、『有楽製菓は何もやっていないよね』という議論がありまして、そこから取り組みを始めたのですが…、今のところ、バレンタインに突出して売上が上がるほどには至っておりません。義理チョコの在り方も変わってきているので、2021年からは自由に楽しむバレンタインを伝える施策にシフトしています」

 ここ数年は『自由なバレンタイン』をテーマに、今年は全ての人に“あげる“ことを楽しんでもらおうと、2月8日〜11日の4日間、サナギ新宿前にてイベントを開催中だ。

「“あげる”にちなんで、揚げたてのブラックサンダーの天ぷらを1日300名様限定で販売します。そのレシピや動画は特設サイトでも公開します。また、“同じ血液型の人”、“おなかが空いてそうな人”など、誰にあげたらいいかをご提案する50種類のくじが入ったガチャもご用意しています」

 物価高騰が相次ぐ中、「35円」はいまだ有難い価格だ。人間関係が希薄になり、バレンタイン文化が廃れゆく中、安価で気軽にあげられるチョコとして、日頃の感謝やちょっとしたコミュニケーションツールとして、『ブラックサンダー』を活用してみるのも良いかもしれない。

(取材・文=水野幸則)

このニュースに関するつぶやき

  • バカ高くてしょーもないブランドチョコより、ブラックサンダー山盛りのほうが喜びます。
    • イイネ!22
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