スマホ複数台持ちの筆者が「一部のスマホにロックを掛けない」理由

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2024年02月12日 06:11  ITmedia Mobile

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筆者のXアカウント。1万人を超えるフォロワーに対して自身の安否を知らせることが責務だと考える

 スマートフォンの運用方法は人それぞれだと思うが、筆者は手持ちのスマートフォンのうち、何台かは画面のロックをかけない状態で利用している。「セキュリティ意識が低い」「もしもの際に悪用されるのではないか」といった意見や指摘も多いと思うが、今回はこの理由について解説したい。


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●第三者がオンラインコミュニティーで“生存報告”できるようにしている


 筆者が保有する一部のスマートフォンに対して、ロックをかけない状態にしている理由は、利用者である筆者が死亡などした場合、SNSをはじめとしたオンラインコミュニティーにその現状を第三者が発信できるようにしているためだ。


 このようにしているきっかけは、SNS上で同じ趣味を持つ仲間が、事故によって大けがを負った出来事があったからだ。当人は負傷して1カ月以上入院していたことでSNSの更新も止まり、LINEは既読すらつかない。情報を得られないわれわれからしたら「失踪したのでは?」「安否は大丈夫なのか?」という不安が先行した。


 後に当人の家族に聞いたところ、本人のスマートフォンには安否を気遣うメッセージが届いていたことは把握していたが、ロックが掛かっていた。本人も集中治療室にて治療を受けていたこともあって、返信することができなかったという。後に「あのときは心配をかけた」と本人やその家族に幾度も言われたことから、筆者としても万一の際に「第三者が何か情報を発信できる術」を残すのは大切だと感じたのだ。


 筆者の場合は、X(旧Twitter)と個人アカウントのGoogle フォト、Google ドライブについては、画面ロックをかけていない端末でも利用できるようにしている。これはSNSにて近況を発信できるのと同時に、万一死亡した場合はフォトギャラリーが実質的な故人のアルバム、クラウドストレージがデジタル遺産の保存先として機能するようにしたためだ。


 仮に筆者が死亡した場合、家族や親戚などが筆者のスマートフォンに触れることが想定される。その際に「画面にロック」がかかっているとその端末の情報、故人の情報にはアクセスできなくなってしまう。著名なアーティストやタレントのように本人+所属事務所のマネジャーなどが共同で運用しているアカウントであれば、仮に本人に訃報があったとしても、その情報を適切な時期に発信することができる。ただ、多くの一般の方はそうはいかないだろう。


 その際に1台はパスコードなしで個人のSNSアカウントにアクセスできるような端末があれば、SNS上のコミュニティーに向けて本人の状態を家族や親戚、友人が容易に発信することができる。ゲームのアカウントを入れておけば、アカウントのプロフィールに一言残すこともできる。ギャラリーがクラウドサービスで共有されていれば「故人が残した写真や動画が見られない」といった悲劇も回避できる。必要となれば故人の著作物にもアクセスできるようにしておくと、残された家族のためにもなるはずだ。


 筆者もそれなりにSNSのフォロワー数がいるからこそ、万一の際にインターネットのコミュニティーに第三者が自身の安否を発信できる手段を残している。インターネット上で活動する上で、このような対応はある種の責任だと考えている。


 もちろん、皆さんの中には「家族といえども見られたくない」「墓場まで持っていきたい」というアカウント、保存した各種データもあるはずだ。そのようなものは生体認証をかけたスマートフォンで厳重に保管し、死後は破砕処理などの適切な方法で処分してもらうような遺言を残しておくことが大切だ。


 また、ここで述べた端末は、基本的に自宅から持ち出さずに保管している。そのため、用途的にはPCでも代替えが効くが、専用機として仕立てるにはコストもかかる。筆者はたまたま利用頻度の少ないスマートフォンが多くあるため、このような運用としているが、一般にはイレギュラーだ。


 近年ではPCよりも「以前利用していたスマートフォン」を保有している方も少なくない。また、PCでは利用できないサービスも増えていることから、そのような視点では「デジタル遺産の管理」の用途で古いスマートフォンを利用する方が身近になるのではないかと感じる。


●「デジタル遺品、遺産」をどう残すか 専門家も対応が必要と指摘


 昨今ではデジタル遺品、デジタル遺産という言葉が使われるように、人生の中で残してきたものの中には、現実世界に形あるものばかりではないことが伺える。故人のPCやスマートフォンに保存されたデータの対応は、このような端末の普及が進むほど、セキュリティ面の観点から第三者の取り扱いが難しくなる一方だ。


 また、故人が契約したスマートフォンなどはもちろん、各種サブスクリプションサービスなども契約者本人以外が解約することは難しいものも多く、この問題は日を追うごとに浮き彫りとなるはずだ。近年では電子マネー、各種ポイントやマイレージの他に仮想通貨やNFTアートといったものも生まれ、「デジタル遺産の相続」という新たな課題にも直面している。


 これらも含め、筆者のように自分が利用しているSNSをパスコードなしで閲覧投稿できる端末を準備することも「デジタル遺品の管理」の意味では有効だと思う。ただ、これは残された遺族や友人に対して、予備のスマホがある点を周知させることと、生前に端末を紛失するなどによる情報漏えいリスクについては考慮する必要がある。


 閲覧用のPCやスマートフォンを別途仕立てるのはコスト面、管理面で難しい。現実的には、スマートフォンのパスコードや各種SNSのアカウント名、パスワード、各種電子資産の有無や利用しているサブスクリプションサービスをまとめた遺言書のようなものを作っておくべきだろう。


 このような対応は専門家も推奨しており、任意団体「デジタル遺品を考える会」代表の古田雄介氏は国民生活センター内の特集コラムにて「デジタル遺品の相談のうち、7割は故人のスマートフォンが開けない」と指摘。生前整理の方法として保有しているスマートフォンの外見特徴やパスコードを記載した「スマホのスペアキー」を準備し、通帳や年金手帳などと一緒に保管しておくことが大切だとしている。


  近いうちに多くの人が考えなければならなくなるデジタル遺品の存在。サービス側や行政はまだ適切な対応ができているとはいえず、現時点では利用者おのおのの対応が必要だ。中でも多くの情報が集約されているスマートフォンは、「デジタル遺産のハブ」ともいえる。筆者はこの管理の一環としてロックをかけていないスマートフォンを用意しているが、前述の「スマホのスペアキー」をはじめ、残された人が故人の情報にアクセスできる手段を残すことが、遺産相続も含め「デジタル終活」「生前整理」の一環として大切だと考える。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/


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