富士通、NEC、NTTデータの最新受注から探る「2024年国内IT需要の行方」

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2024年02月14日 07:22  ITmediaエンタープライズ

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富士通の磯部武司氏(取締役執行役員 SEVP CFO)

 DX(デジタルトランスフォーメーション)や基幹システムのモダナイゼーション、さらには生成AIブームで活気づいた2023年の国内IT需要。2024年はどう動くか。富士通やNEC、NTTデータグループ(国内事業会社は「NTTデータ」)のITサービス大手3社が相次いで発表した2023年度(2024年3月期)第3四半期(2023年10〜12月)の決算から需要動向の先行指標となる受注状況に着目して見通しを探る。


【その他の画像】


●「受注残高も高水準で積み上がっている」(富士通)


 富士通が2024年1月31日に発表したITサービスにおける第3四半期の国内受注状況は、全体で前年度同期比115%、第1四半期からの9カ月累計(2023年4〜12月)で同116%と大きく伸長した。


 業種別の動向は、次の通りだ(拡大画像)。


 「パブリック&ヘルスケア」(官公庁・自治体・医療)が前年度同期比130%(9カ月累計で同126%)、「ファイナンスビジネス」(金融・保険)が同117%(同121%)、「ミッションクリティカル 他」が同123%(同115%)と好調に推移し、「エンタープライズビジネス」(製造業などの産業・流通・小売)も同102%(同107%)の伸びを示した。


 この受注状況について、同社の磯部武司氏(取締役執行役員 SEVP CFO)は決算会見で次のように説明した。


 「第3四半期の受注は上期に引き続き、高水準に推移した。DXやモダナイゼーションの商談を中心に拡大したのが大きな要因だ。業種別では、パブリックで官公庁のシステム更改案件を複数獲得し、ヘルスケアも電子カルテや医療情報システムの需要が堅調だ。ファイナンスビジネスでは、メガバンクや保険会社の基幹システムの更新やモダナイゼーション案件を獲得した。ミッションクリティカル 他は、上期に引き続いてナショナルセキュリティの大型案件を複数獲得した。エンタープライズビジネスも上期に引き続いて製造やモビリティ、流通が受注増を牽引した」


 2024年の国内IT需要の見通しについて同氏は、「国内のデマンドは上期から続いて第3四半期も堅調に推移しており、第4四半期(2024年1〜3月)、さらにその後の増収につながる受注残高も高水準で積み上がっている状況だ」との手応えを示した。


●「需要が減少に向かう兆しは今のところない」(NEC)


 NECが2024年1月30日に発表したITサービスにおける第3四半期の国内受注状況は、全体で前年度同期比4%増(9カ月累計で同3%減)だった。


 業種別では、「エンタープライズ」が前年度同期比8%増(9カ月累計で同12%増)、「その他」が同4%増(同14%減)、「パブリック」が同3%減(同4%減)だった。エンタープライズの内訳では、「金融」が同11%増(同29%増)、「流通・サービス」が同10%増(同7%増)と伸びたが、「製造」が同2%減(同2%減)にとどまった。


 この受注状況について、同社の藤川 修氏(取締役 代表執行役 Corporate EVP兼CFO)は決算会見で次のように説明した。


 「総合的に見て、ITサービスは旺盛な需要を継続している。国内では、パブリックが第3四半期で前年度同期比3%減となっているが、2021年度から2022年度にかけて大きく伸長し、その後も高水準を維持している状況だ。エンタープライズでは、金融向けが2022年度に続いて大きく伸長して極めて高水準となっている。流通・サービス向けも好調を維持している。製造向けが若干のマイナスになっているのは、採算性の観点から受注案件を選別したことによるものだ。その他では、(子会社の)アビームコンサルティングが好調を継続しており、消防防災が第3四半期から増加に転じた」


 2024年の国内IT需要の見通しについて同氏は、「需要が減少に向かう兆しは今のところないと見ている。業種別に見ると、パブリックは官公庁も地方自治体も社会公共も堅調に推移するだろう。エンタープライズも全ての領域でDXやモダナイゼーションの需要が“待ったなし”という感じで大いに高まってきている。ただ、景気動向は国際情勢にも影響を受けるので、海外の動きは十分に注視しながら対応していく必要がある」との見方を示した。


●「国内IT需要は今後も堅調だ」(NTTデータ)


 NTTデータグループが2024年2月7日に発表したITサービスにおける第3四半期の国内受注状況は、全体で前年度同期比3.3%増の3481億円(9カ月累計で同22.7%増の1兆1558億円)だった。


 業種別では、「公共」が前年度同期比19.5%増の1115億円(9カ月累計で同44.9%増の4762億円)、「金融」が同16.8%増の1328億円(同30.3%増の3714億円)、「法人」が同22.6%減の901億円(同7.7%減の2633億円)となった。同社は2023年7月から持ち株会社のNTTデータグループの下で、国内事業会社のNTTデータと海外事業会社のNTT DATAが活動する形となった。海外事業会社にはこれまでのNTTグループの海外事業が集約された。


 この受注状況について、同社で財務・IRの責任者を務める中山和彦氏(取締役副社長執行役員)は決算会見で次のように説明した。


 「9カ月累計の国内受注状況では、公共で中央府省向け、金融で地域金融機関向けの大型案件を獲得してそれぞれ大きく伸長した。法人は減少したが、これは前年度同期に獲得した小売・消費財向け大型案件受注の反動によるものだ」


 2024年の国内IT需要の見通しについて同氏は、「当社では国内IT市場の成長率を、2023年度で5.0%、2024年度(2025年3月期)は5.8%と見ており、それを踏まえて2024年度および中長期の事業計画を現在策定中だ」と述べた。


 また、この見通しについて、別の機会に国内事業会社NTTデータの佐々木 裕氏(代表取締役社長)にも聞いたところ、「国内IT需要は今後も堅調だと見ている。当社は、公共や金融では一定のポジションを獲得しているが、法人分野ではまだまだシェアが低いことから“伸びしろ”が十分にあると見ているので、今後注力していきたい」とのことだった。


 以上が、第3四半期決算におけるITサービス大手3社の国内受注状況と、それを踏まえた2024年の国内IT需要の行方だ。


 「今後に向けた受注残高も高水準で積み上がっている」(富士通)、「需要が減少に向かう兆しは今のところない」(NEC)、「国内IT需要は今後も堅調だ」(NTTデータ)といったように、3社とも2024年の国内IT需要についての見通しは明るいようだ。


 とはいえ、ハイパースケールのクラウドサービスをグローバルで展開するMicrosoftやGoogle Cloudに目を向けると、生成AIをはじめとしたDX需要を取り込みながら、直近の四半期の売上高で前年同期比30%前後の伸長を遂げ、巨大な事業体ながらもさらに勢いを増した印象だ。上記の3社をはじめ国内のIT企業もそうした需要拡大の勢いをしっかりと取り込めるようにしたいところだ。


 一方で、NECの藤川氏が指摘したように、2024年は国際情勢の変化がこれまでにも増して国内の景気動向に大きな影響を及ぼす可能性がある。1980年代後半のバブル期に迫る株高もバブル崩壊後の在りようを取材してきた筆者には危うく感じる。そうしたリスクにも注意を払っておく必要があろう。


○著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功


フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身


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