青春をかけた高校生たちの熱き戦い! 「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」決勝戦レポート

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2024年02月15日 17:51  ITmedia PC USER

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第1回となるNASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権。優勝トロフィーを手にするのはどのチームなのか

 NASEF JAPAN(ナセフジャパン/北米教育eスポーツ連盟 日本本部)主催、サードウェーブ特別協賛による初の「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」決勝大会が、2月11日と12日にラフォーレミュージアム原宿で開催された。


【その他の画像】


 1日目はリーグ・オブ・レジェンド部門決勝戦とロケットリーグ部門準決勝トーナメント、2日目はVALORANT部門決勝戦とロケットリーグ部門決勝戦が行われた。


 それぞれAからDブロックの予選を勝ち抜いた4チームが覇権を争った。2日間にわたる各部門の決勝戦の様子をお伝えする。


●リーグ・オブ・レジェンド部門


 リーグ・オブ・レジェンド(LoL)は、5対5のチームが、四角に近いマップの対角線(右上と左下)上にある、それぞれの敵陣地にある「Nexus」と呼ばれる本陣を破壊することを目指すストラテジーゲームだ。


 敵本拠地にはトップ(TOP)、ミッド(MID)、ボット(BOT)と呼ばれるレーン(経路)を移動して向かうが、各レーンや敵陣地近く、またNexusを守る建物「インヒビター」をさらに守るために配置されている合計11のタワーをかわす、または破壊して進む必要がある。


 本大会のリーグ・オブ・レジェンド部門には全国から127チームが参加し、A〜Dまで各ブロックの予選トーナメントを勝ち抜いた4チームが1月27日の準決勝トーナメントへと進出した。そこで勝利した「ルネサンス大阪高等学校なんばeスポーツキャンパス かれはchillどれん(かれはチルどれん)」と「ルネサンス高等学校 池袋キャンパス 強化GGG(きょうかジージージー)」の2チームが決勝戦に臨んだ。


 決勝戦は2試合を先取したチームを勝者とする「Best of 3」で行われた。少なくとも2試合、最大で3試合を、それぞれのチームはどのように戦略を立てて戦っていくのだろうか。


●攻撃すべき相手を的確に判断しブレることのない戦いぶり


 リーグ・オブ・レジェンド部門決勝戦のMCは、総合MCのOooDaさん、アナリストはRecruitさん、実況中継はeyesさん、解説はRevolさん。応援リーダーには、ぶいすぽっ!メンバーの胡桃のあさんが登場し、応援の言葉や、X(旧Twitter)に寄せられた応援メッセージを読み上げていた。


 決勝戦前にチーム入場した両チームリーダーのKaraage選手とmhat選手による選手宣誓が行われ、少し間をおいて全メンバーが入場。着席し、準備を整えた後、第1試合が始まった。


 ゲームでは、プレイヤーのチャンピオン(ゲーム内キャラクター)が「ミニオン(ノンプレイヤーキャラクター)を倒す」「時間によって出現する中立モンスターを倒す」「タワーを破壊する、敵チャンピオンを倒すなどによってゴールドを稼ぎ、武器を購入する」などして成長できる。「敵チャンピオンの成長を阻止しつつ、ゴールドを稼ぎ、相手の陣地深くに潜り込み、Nexusを破壊する」という戦略が欠かせない。


 序盤から、かれはchillどれんチームRacon選手が強化GGGチームGOOD TRY選手にターゲットオンし、成長を阻止して戦力として使えないようにするという戦略に出る。


 出現するドラゴンを次々と討伐し、バフ(強化)を稼いだり、レーン上のタワーを次々と破壊したりしていくのも、かれはchillどれんチームだ。


 相手の動きを読み、対策を練り、即座に実行。「仕事なら、状況が分かった上で、前日から資料を準備してあれしよう、これしようという対策を練ることができるが、その場で瞬時に、『今、こうだから、俺も合わせるわ』と、提案、報告、連携ができるのは素晴らしい」(OooDaさん)といわれるアドリブ力によって、第1試合は、かれはchillどれんチームが先取した。


●BOTレーンを攻めるトレンドを捉える


 2試合目では、強化GGGチームが相手の得意そうなチャンピオンをピックできないようにバン(相手が使えないチャンピオンに指定すること)する、かれはchillどれんチームがBOTレーンで戦いを仕掛けてくるだろうと予測するといった対策が見られた。


 しかし、かれはchillどれんチームはそれを読み、新バージョンで投入されたばかりの、序盤から戦力となるチャンピオンをすかさずピックした。BOTレーンに集結させてパワーで押し切ったり、2試合目でリーダーのKaraage選手と入れ替わったhiyoko選手がミニオンに化けたりするなど知略を用い、敵陣地のNexusを破壊して勝者となった。


●試合後のインタビュー


 試合後のインタビューで、「優勝したのに冷静だった」と指摘された、かれはchillどれんチームのKaraage選手は「ここに来るまでに、個人個人で努力していたのを知っているし、来たら絶対に優勝するという意気込みがあった。会場に来てくれた人、見てくれている人の期待もあり、勝ちに執着していた。“うれしい”より“当然”という気持ちがあったからでは」と、ここでもまた冷静さを発揮していた。


 準優勝となった強化GGGチームのメンバーたちが総じて「負けたのは悔しかったけれど、ここまで来られたのは良かった」「うれしい」と口々に答えていたのがすがすがしかった。


●VALARANT部門


 VALARANTは、攻守に分かれた5対5のチームで、プレイヤーが個性の異なるエージェントと呼ばれるキャラクターを操作して戦うFPSだ。


 13ラウンド先取で勝利が確定する。ラウンド取得条件は攻守で異なる。ディフェンダー側では5人全員を倒すことで取得できるが、アタッカー側では前条件の達成、またはマップの定められた位置に「スパイク」と呼ばれる爆弾を設置し、爆発するまで守りきることで取得する。スパイクを設置するプレイヤーは無防備になってしまうので、チームメイトとの連携が欠かせない。


 VALARANT部門には全国136校から194チームがエントリーした。予選を勝ち抜き、準決勝トーナメントを制した「ルネサンス高等学校 横浜キャンパス芳醇きのこの焦がしバター」チームと「ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス イナザワジャパン」チームが決勝戦に臨んだ。


1試合目のマップは「バインド」


 VALORANT部門決勝戦は、アナリストにRetloffさん、実況中継に岸大河さん、解説にyueさんを迎えて進められた。


 芳醇きのこの焦がしバターチームのリーダー、赤マントRadiant選手とイナザワジャパンチームのリーダー、キャプテンイナザワ選手による選手宣誓の後、試合はスタートした。


 芳醇きのこの焦がしバターチームは、一人一人が判断能力に優れ、その場で瞬時に判断し、臨機応変に対処していく戦い方を特徴としている。「事前に戦術を練り、それに沿ってチームとしてまとまって攻めていくイナザワジャパンが不利なのでは?」と予想されていたが、いざフタを開けると、アタッカー側のイナザワジャパン優勢の試合運びとなった。


 4人を向かわせAサイトを取ると思わせておいて、本命はBサイト。フェイクを仕掛ける、本命に人を集めるなどの戦術を練り、イナザワジャパンは芳醇きのこと焦がしバターチームを揺さぶっていく。これら戦略が功を奏して、4対13でイナザワジャパンが1試合目を先取した。


2試合目のマップは「アセント」


 2試合目は攻守交代し、芳醇きのこの焦がしバターチームがアタッカー、イナザワジャパンチームがディフェンダーとなった。マップはリリース当初から存在し、ほとんど変更のない「アセント」だ。イナザワジャパンチームは、ibu選手に代わってone選手が参加して試合がスタートした。


 盛り上がったのは6ラウンド目だ。芳醇きのこの焦がしバターチームが1人も倒されずラウンド取得なるかと思われた矢先、イナザワジャパンチームcat cute選手が4人をキル。あと少しというところで倒されてしまったが、1人で次々とキルしていく戦いぶりに、会場からは拍手が沸き起こっていた。


 結局、13対7でイナザワジャパンが2試合目でも勝利し、優勝した。マッチポイントでは1人も欠けることなく全員がそろった状態での最後を迎えていた。


●試合後のインタビュー


 1試合目で圧倒的な強さを見せつつ、2試合目ではone選手と交代したibu選手は高校2年生で、なんと高校に入学してからVALORANTをプレイするようになったという。聞けばキャプテンイナザワ選手もone選手もプレイ歴は1年半程度だという。


 そのような中で優勝できた理由をキャプテンイナザワ選手は「自分たちもそうだが、負けたら悔しくて練習量を増やす。勝ち続けるには練習し続けなければならず、それをしてきた」と話した。そして、勝てたという成功体験を積み上げることで自信をつけていった。本大会へのエントリーを決めてから、部活以外でも毎日2時間以上、大会が近づくにつれ6時間の練習をこなしてきた彼らの言葉から、大切なことを学べたような気がした。


 準優勝となった芳醇きのこの焦がしバターチームは、「他の試合で負けて、チーム全体のモチベーションが下がってしまったこともあったが、今回の大会は3年生にとって最後の試合だった。『最後だから、頑張っていこうか!』ということで、ここまで来られた。決勝まで進めると思っていなかったので、勝てなかったのは悔しいけれど、それでも総じて良かったと思う」と高校生らしいコメントを残してくれた。


●ロケットリーグ部門


 ロケットリーグを一言で表現するなら、「車でプレイするサッカー」だ。3対3のチーム戦で、プレイヤーは選んだ車を操作しながらボールを操る。5分という制限時間内で多くのシュートを決めた方が勝ち、という非常にシンプルなゲームだ。


 とはいえ、車は地面を走るだけでなく、ジャンプやロケット飛行が可能なロケットカーである。金網で覆われた天井や壁も利用しながらボールとロケットカーをコントロールし、チャージポイントの通過でロケットダッシュに必要なポイントをチャージしながら試合を有利に進めていく。


 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権のロケットリーグ部門には、全国45校、60チームがエントリーした。2月11日には準決勝が同会場でオフライン開催され、勝ち進んだ「N高等学校 N小町」チームと「飛龍高等学校 HEST:Majide(エイチイーエスティー マジデ)」チームによる決勝戦が2月12日に行われた。


 超人的なボール運びによる圧倒的な強さを見せるN小町チームと、失点してもくよくよしたりイライラしたりせず盛り上げていくHEST:Majideチームのどちらが頂点に立つのか。


●1点獲得に大いに沸いた会場


 前日も大勢の観客が見守る中でのオフラインプレイを経験した両チームメンバー。そのせいもあり、選手紹介時でも着席してからも比較的落ち着いているように見えた。


 アナリストにValtaNさん、実況中継にkokkenさん、解説にWaveさんを迎えたが、3人とも「決勝戦仕様」に髪にメッシュを入れたスタイルで登場し、ツッコミを入れたOooDaさんが、逆にカメラ担当者ににいじられてゲーム開始前から会場内はあたたまった。


 決勝戦は「Best of 5」形式で行われた。3試合を先取したチームが優勝する。


 1試合目は、N小町が開始1分で1ゴールも決められないまま試合が進んでいた。しかし、1分17秒でN小町チームのRarara選手が1ゴールを決めてから波に乗り、8対0で先取した。


 2試合目では、HEST:Majideチームが相手の攻めを抑えるよう頑張るが、N小町チームは敵ゴール前を攻め続けることで相手の体力を消耗させ、相手に1得点もさせることなく終了した。


 3試合目は、試合序盤からHEST:Majideチームが敵ゴール前で攻防を繰り広げたが、なかなかゴールできず、逆に得点を許してしまう。しかし、2分ちょうどでitochanTT_175cm選手がゴールを決め、会場は大いに盛り上がった。


 試合中にitochanTT_175cm選手のレベルが上っている様子も見られ、隙のない連携プレイを見せるN小町チームのfurashh選手とLunatic選手、Rarara選手を相手に2得点目を許しつつも粘り強く戦った。しかし、追加点をあげられず、残り0秒でダメ押しの3ゴール目を決められ、N小町の優勝となった。


 リアルなサッカーと異なり、明確なポジションが決まっているわけではないのに、N小町チームはリーダーのRarara選手が常に後方に控え、自ゴール前に流れてきたボールをすぐさま敵エリアにいるfurlashh選手、Lunatic選手にパスする、あるいは状況が許せば自分でシュートするという戦略とチームプレイが際立つ試合であった。


 HEST:Majideチームのボイスチャットにも注目したいと感じた。というのも、相手チームがゴールを決めてもharu122012_155cm選手の明るい前向きな内容の声が、チーム全体の「あきらめない」「やってやろう」という気持ちを引き出しているように思えたからだ。


●試合後のインタビュー


 試合を終えてインタビューに応じてくれたHEST:MajideチームRuby_185cm選手は、高校卒業後に就職するというが、「eスポーツは声出しが重要で、それにより周囲とのコミュニケーションを取ってチームプレイを行える。就職しても、それを忘れずに、声を出してコミュニケーションを取っていきたいと思う」と語り、eスポーツを通じて学びが得られたことを教えてくれた。


 N小町チームのRarara選手は、プロを目指さず、学校で学んだイラストデザイン系の会社に就職するが、大会に参加したことで「大勢の前で話す機会を与えられ、自分の気持ちを声に乗せて伝えることができた。これはとてもありがたく良い経験だと感じた。これから30代、40代と歳を重ねるにつれ、つらいこともあるかもしれないが、今回のことを思い出して元気になれると思う。良い思い出になった」と語った。


●eスポーツという青春


 勝ったチームも惜しくも優勝を逃したチームもお互いの健闘をたたえ、観戦者にすがすがしさを与えた第1回NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権。


 eスポーツ大会を国内で初めて題材とした3月8日公開の映画『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』のタイトルのように、どーでもいい、ということはないと思うが、勝敗より、好きなことに思い切り打ち込む、やりきることの大切さに気付けた。


 フィジカルなスポーツも、eスポーツも練習に練習を重ね、勝利につなげていくという点では同じ。見るものに感動を与える、もう1つの青春なんだ、ということを実感させられる大会であった。


 なお、NASEF JAPANでは今冬に「第2回NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」の開催を予定している。詳細は2024年春に発表されるとのこと。そこで生まれる物語にも期待したい。


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