Jリーグに危機感を覚えたサガン鳥栖監督 「Bリーグを見て危ないなと思った」

0

2024年02月23日 11:01  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

川井健太監督(サガン鳥栖)インタビュー(中編)

 勝つべきチームが勝つ、それはサッカーにおけるひとつの真理だろう。しかし、弱いとみなされていたチームが強い敵を倒す――大衆が興奮するのはそんな「番狂わせ」だ。

 その点で昨シーズンのJリーグは、資金的に恵まれたチームが強いだけで、意外性に乏しかった。

「Jリーグの人気低迷」

 それが叫ばれる理由としては、有力な日本人の多くが欧州に進出し、極端な円安で能力の高い外国人を獲得する交渉が難航を極めていることもあるだろう。エンタメのコンテンツとして、思った以上の危機を迎えているのだ。

 J1で新風を起こしているサガン鳥栖の川井健太監督は、現状をどう捉えているのか?
 
――Jリーグの人気に対し、危機感を持つ人が増えています。スポーツメディアとしても、ボール競技ではバスケットボールやバレーボールが盛り上がっているのは肌で感じるところです。

「Jリーグ自体がつまらなくなった、という見方もあれば、他競技がJリーグの水準まで追いついてきた、とも言えるかもしれません。僕も去年バスケット(Bリーグ)の試合を見た時、『これは(競合相手として)危ないな』と思いました。ロジック的な強さがあるんです。たとえば、天候に左右されない、ゴールがたくさん決まる、展開のスピード感もすごくある、選手の人数が少なくて名前を覚えやすい、とか」

――昨今のJリーグは、資金面で潤沢なクラブが年間予算に比例して勝っている印象があり、そこに他のクラブが割って入らないと、エンタメとしては厳しくなります。

「自分の立場上、『Jリーグがノッキングを起こしてあまり魅力がない』とは言いたくないし、『そうではない』と言いたいです。ただ、面白いか、面白くないか、を判断するのはファン、サポーターなので、そこにしか正解はないんですよね。観客数が目に見えて増えているわけではないので、伸び悩んでいるというのは事実かもしれません。自分たちとしては、『Jリーグで魅力のあるフットボールを』とは思っていますが、たとえば(シーズン移行は決定したが)真夏にクオリティの高いものを見せるから来てくれ、というのはなかなか難しい。気候に比例し、どうしてもプレーの内容が落ちる。ハード面も少なからず影響しているかもしれません」

【オフにイングランドを視察して】

――今や80人前後の日本人選手が欧州でプレーしています。円安の影響も強く、引き止めることはできなくなっているし、外国人選手も獲得が難しくなっています。

「今や若い選手でもすぐに海外へ出る時代なので、うちも福井太智がドイツに行きました(バイエルンへ移籍後、現在はポルトガル1部のポルティモネンセに期限付き移籍)。20歳以下で、J2、J3の有望株がJ1を経験せずに(欧州へ)行ってしまう。外国人選手も円安や税金問題で獲得が難しい状況になっています。そうした社会的な外的要因もあるのですが、海外から帰ってきた日本人選手に頼る、というのでは、いつか限界が来ると思います」

――欧州では、地方クラブが堂々とビッグクラブを倒し、単純にその番狂わせが人気の源になっています。ミチェル監督が率いるジローナはバルサの10分の1以下の戦力でバルサとの撃ち合いを制しましたが、ジローナのスポーツダイレクターが元バルサの下部組織出身で、10年近くをかけて一貫したコンセプトで作ったチームです。

「長い時間をかけないと、花は開かないと思います。やはり、ヨーロッパのフットボールの歴史から学ぶべきことはまだある。継続路線でいくチームは、一回、何かが壊れてしまっても、再生ができる。そこに立ち戻れるので」

――ジローナのようなクラブがJリーグで出にくい理由としては、スポーツダイレクターと言われる現場の態勢を作り出す人の重要性が日本で軽視されてきたことがあると思います。

「僕がこの立場で思うのは、監督が決断する前にクラブが決断しないと、監督はそこにいられないってことです。それが絶対的な順番で、だから僕はクラブに感謝しています。彼らが決断しないと、僕はその場にもいられなかった。クラブの構造ははっきりしていて、社長がいて、監督を決める人がいて、監督、選手がいるわけです」

――欧州では、裕福なチームがそうでないチームに食われることでエンタメとして魅力を維持している印象があります。

「オフにイングランドに行って、リバプールのクラブハウスやスタジアムとかも観に行ったんです。チェルシー対ウルブス(ウルバーハンプトン)という試合を観たんですよ。チェルシーは財力もあって、僕も知っているようなメジャーな選手もいたのですが、試合は残念な感じで、これはどうやって強さを取り戻すんだ、と思いました。お金を積んで戦力を集めたけど、選手の不安な表情はスタンドからもわかるほどで......。ヨーロッパではお金があるからといって、ずっとトップに立っていることは許されないんだなと実感しました」
(つづく)

Profile
川井健太(かわい・けんた)
1981年6月7日、愛媛県生まれ。現役時代は愛媛FCでプレー。指導者としては環太平洋短期大学部サッカー部監督を皮切りに、愛媛FCレディースヘッドコーチ、日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチ、愛媛FCレディース監督、愛媛FC U‐18監督、愛媛FC監督、モンテディオ山形コーチを経て、2022シーズンからサガン鳥栖監督に就任した。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定