シャツやネクタイ、ジャケットがリビングに放置されたままだったので、ちゃんと片付けてほしいとヨウジに言ったところ「そんなの、仕事の少ないサオリがやりゃいいだろ?」と言われました。
そういえば家族で住宅相談に行った際に、不動産会社の人からヨウジの勤め先を褒めちぎられました。ヨウジはわりと大手の会社に勤め、管理職です。そしてマイホーム購入となり、鼻高々になっていた……あのあたりから?
それとも新居のお披露目会で友人たちを招き、「いいねー」「すごいねー」と言われ、明らかに舞い上がっていたあのあたりからでしょうか?
あんなに優しかったヨウジがモラハラ夫に変わってしまいました。
「俺は偉いんだ」感ばかり出され続ける日々は疲れます。それでも「せっかく家を買ったんだし」と、私はぐっと我慢し続けていました。しかしある日、堪忍袋の緒が切れるようなことが起こってしまったのでした。
ある日の夜遅くのこと、もう子どもたちが寝静まったあとに夫が帰ってきました。仕事でストレスが溜まっているのか、見るからにイライラしています。私は夕食を温め直して出したのですが、それがヨウジの逆鱗にふれたようなのです。
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さすがにそこまで言われる筋合いはない、とムッとしながら私も反論してしまいました。
「ずっと家にいてラクなくせに、何で疲れてるんだよ」とヨウジは言います。私だって、子どもたちを送り出したらパートにいって働いています。そのあとも家事も育児も一人でこなしているのです。ラクなんてしていません!
まるで昔のテレビドラマに出てきそうな古臭いセリフを言ってくるヨウジに腹が立って、しっかり言い返してやりました。「食事の買い出しから準備、掃除洗濯、生活に支障がないように家のことを整えているのはすべて私よ?」
「そんなことくらい、一人暮らしの大学生だってやってるだろ」と鼻で笑いながら言ってきた夫に、ついに私も我慢の限界です。そんなふうに言うなら全部自分でやるように言いました。
そう言って人を見下しながら笑う夫は、今までで一番醜い顔をしていました。もうあの狭い家に住んでいたときの真面目で優しい、家族思いの夫の姿はそこにはありません。
この人は私をどこまでバカにするつもりなのでしょう。子どもたちと夫にも距離ができ、日に日に怯えて過ごすようになっています。言ってはいけないギリギリのラインは家族にだってあるのに、ヨウジはそれを簡単に飛び越えてしまったのです。ここまで言われて、彼と家族でいる意味はあるのでしょうか。私は正直ないと思っています。
【後編】へ続く。
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