谷原章介、夫婦円満の秘訣は「互いに体に触れ合うこと」 ファンタジーな舞台で描き出す夫婦のディスコミュニケーション【インタビュー】

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2024年02月24日 08:10  エンタメOVO

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谷原章介 (ヘアメーク:川端富生/スタイリスト:澤田美幸) (C)エンタメOVO

 花總まりと谷原章介が出演する舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」が4月1日から上演される。本作は、カナダの同名小説を原作に、奇妙な銀行強盗に“魂の51%”を奪われた13人の被害者たちの身に起こる不思議な事件とある夫婦の愛と奇跡を描いたファンタジー。谷原は、事件以降、身長が少しずつ縮んでいく妻の夫を演じる。谷原に本作の魅力や役柄について、さらには夫婦円満の秘訣(ひけつ)などを聞いた。




−この作品に出演しようと思った理由を教えてください。

 まず、演出をG2さんが担当されるということ、そして花總さんとご一緒ということでやりたいなと感じました。その後に原作を読んだのですが、これをG2さんが具現化したらどうなるんだろうと興味が湧きました。それに、原作を読み進めていくと各キャラクターのバックグラウンドや彼らが銀行強盗に奪われた大事なものと、遭遇する不思議な出来事の原因との関連性が、ふっと結びつく感覚があったんです。本を読みながら自分の内面を掘り下げる物語なのだと感じ、それが面白いなと。僕自身、妻と17年間、結婚生活を送っていますが、やっぱり色々なことがありました。そうしたことが思い返されて、読み終わった後、僕も改めて家族との接し方を考えている自分がいました。

−花總さんが演じるステイシーの夫という今回の役柄については、今はどう考えていますか。

 DV(ドメスティックバイオレンス)って、暴言や暴力だけでなく、無視や無理解といった“静かな拒絶”もあると僕は思っているのですが、彼はどこかそういう要素のある人かなと思います。しかも、それを自覚していない。そうしたところをどう分かりやすく立ち上げるのか。そこを意識して役を作っていこうと思います。暴言を吐いたり、強い態度で奥さんをぞんざいに扱えば、見ている方にはすごく分かりやすいのかもしれませんが、安っぽくなってしまうので。もしかしたら、G2さんは全く違うことを考えているかもしれませんが、僕はこの作品は夫婦のディスコミュニケーションの話だと思っています。“妻が縮む”というのも、夫が妻を理解してあげないから。でも、夫はこれが一番いいだろうと思って“やってあげているつもり”なんです。妻は、無視をされたり、相手から軽んじられていたりすることで、理解されていないと感じます。それを“縮む”と表していているんだと今は思っています。彼の無理解や知ろうとしない姿勢が、奥さんを縮ませてしまったのではないかな。だから、犯人は夫なのかもしれないですね。

−物語は、夫婦が結婚して7年目の出来事ですね。

 そうですね、僕自身、少し前に通ってきた道なのかなと思います。夫が30後半で、子どももまだ小さいという時期は、本当に大変な時期なんですよ。仕事も頑張らなくてはいけない。家に入って子育てをしている妻のことを家にずっといて楽をしていると思う人もいるかもしれませんが、キャリアが断絶してしまうつらさや自活できないことへの忸怩(じくじ)たる思いがある人もいると思います。誰もが自分で働いて、自分の力で、自分のお金で胸を張って食べていると言いたい。ところが、家に入ってしまうと、「食べさせてくれてありがとう」という環境になる。お互いにまだまだ折り合いがつかない状況の二人だと思います。

−本作のプロモーション映像で(公式サイトに掲載中)、谷原さんが「ご自身の生活がにじみ出そうで怖い」というコメントを寄せていました。どの辺りにそれを感じていますか。

 具体的なことはここでは言えないですが(笑)、男と女ですから、それはもちろんいろいろありました。お互い折り合いをつけたとはいえ、考え方は違うところもありますし、僕も年齢を重ねて更年期になってきて、いろいろなことが変化していく。子どもも成長してただ小さくてかわいいだけではなくなってきて。自分で歩き始めてそれに寂しさも感じますし、家族はどんどん変化していく。そうした今までの経験がいろいろなところに出てきそうだと思います。

−では、谷原さんは夫婦が仲良くいるために大切なことはなんだと思いますか。

 建前で言うと、「お互いをきちんと理解し、尊重し合って、話し合うこと」でしょうが、互いに体に触れ合うことは、夫婦でしかできないことでもありますし、大事なことじゃないかと思います。例えば、手をつないで一緒に散歩をするでもいいんです。そうしたやりとりはとても大事だと思います。その上で、相手を尊重すること、敬意を払うということも大事だと思います。

−夫婦に限らず、人とのコミュニケーションでは、どんなことを大切にしていますか。

 正義や自分の思いを主張しすぎないことかなと思います。相手の話を聞くのはすごく大事。ただ、人の話聞いているだけだと自分がない。主張するべきところはきちんと主張しなければいけませんし、お互いに主張を受け入れて、お互いの妥協点や着地点を見いだしたいなといつも思っております。

−ところで、最近はコンスタントに舞台に出演している印象がありますが、舞台に出演することへの思いを聞かせてください。

 映像作品の場合、瞬発力を求められて、しかも一度撮影を終えたら、もう2度とできないので、どこか消化不良になるんです。それから、瞬間的にエネルギーを出し続けなければいけないので、非常に疲れる作業でもあるんですね。その点、舞台は稽古場で何十回、何百回と同じ芝居、せりふを繰り返すことができますし、本番でも挑戦が続けられる。発見し続けることができるのが舞台の魅力だと思います。そして、それは自分の中に、役者としてのさまざまな蓄積や栄養をくれる作業だと感じています。僕は今は、映像作品はやりたくてもそこまでの元気がない。でも、舞台だったらできる。自分の軸が役者だと考えた時に、せめて年に1回は舞台をやりたいと考えてます。

−この舞台は4月1日からスタートしますが、新年度に向けての目標は?

 朝の番組を辞めたいと思います。4月1日なので(笑)。

−エイプリルフールですね(笑)。節目の時に目標を立てるタイプですか。

 立てないですね。年始のお参りをするときに、家族の健康を願ったり、「頑張って仕事をして家庭を支えたいと思うので見守っていてください」みたいに漠然と祈りますが、「よし、じゃあ今年はハリウッド映画デビューだ」とか、そんな目標は全く思わないです(笑)。ご縁があれば仕事はつながっていくものだと思いますし、そのためにも与えられている仕事にベストを尽くせば、どこかで誰かが見てくれて、一緒にやってみようと思ってくれると思うので、今、目の前にあることを頑張るだけです。

−最後に改めて本作の見どころを教えてください。

 今回の物語は捉えどころのないファンタジー要素のある作品ですが、僕自身はこの本を読みながら自分の家族や夫婦の関係について考えました。ぜひこの舞台を見て、ご自身の中に今、抱えている問題であったり、ご自身の生活の中で引っかかっているものを見つめ直していただけたらと思います。1番大事なものってなんなんだろうと、この舞台を見て考えていただけたらうれしいです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」は、4月1日〜14日に都内・日本青年館ホールほか、大阪、名古屋で上演。


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