筋肉の「プロ」と「アマ」、その違いとは? 世界3位になった山田朝美は「やめたほうがいい」と言われてもプロを選んだ【2023年人気記事】

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2024年02月24日 10:11  webスポルティーバ

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 2023年の日本はWBC優勝に始まり、バスケのW杯では48年ぶりに自力での五輪出場権を獲得、ラグビーのW杯でも奮闘を見せた。様々な世界大会が行なわれ、スポーツ界は大いなる盛り上がりを見せた。そんななか、スポルティーバではどんな記事が多くの方に読まれたのか。昨年、反響の大きかった人気記事を再公開します(2023年10月5日配信)。

※記事内容は配信日当時のものになります。

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山田朝美 インタビュー前編(全2回)

 昨今のフィットネスブームもあり、芸能人を含めたさまざまな人がボディメイクコンテストに出場しているが、じつは国内で開かれるほとんどの大会はアマチュア向け。プロ選手の大会は海外が多い。

 ボディビル・フィットネスシーンにおける日本人プロ選手は非常に少ない。プロには「IFBBプロ」と「IFBBエリートプロ」があり(※)、ボディビルダーの山岸秀匡さん、メンズフィジークでは筋肉系YouTuberカネキンこと金子駿さんは前者に当たる。

 一方、「IFBBエリートプロ」はまだ歴史が浅くプロ選手数も少ないが、最近では横川尚隆さんらが「IFBBエリートプロ」になり話題を呼んだ(その後資格を失効)。

 その「IFBBエリートプロ」資格を日本人女性で初めて獲得したのが、山田朝美さん。現在、静岡県菊川市でスポーツジム「F-Class」を経営しながら自身のトレーニングに日々励んでいる。アマチュアとプロの違いとは何なのか? 山田さんに話を聞いた。

※もともとひとつの団体だったIFBB(国際ボディビルディング・フィットネス連盟)が分かれ、「IFBBプロ」と「IFBBエリートプロ」のふたつになっている

【プロとアマの違いとは】

ーー「プロ」にはどうやったらなれるのでしょうか?

山田朝美(以下同) 「IFBBエリートプロ」の場合、傘下団体であるJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)が主催する国内コンテストで上位となれば、国際大会に出場することができます。そしてその大会でも好成績を残せば、プロカードを獲得でき、その後、許可申請などを行なってプロ資格を得られます。

 私は、2017年に国内大会の「オールジャパン ミスボディフィットネス選手権」(158センチ以下級)で準優勝し、翌年春にモンゴルで開かれたアジア大会(「アジア ボディビル&フィットネス選手権大会」)のオーバーオール(無差別級)で3位になったことで、プロカードを獲得できました。

ーープロになることで実際にどのようなメリットが?

 自分の認識として、プロとアマのもっとも明確な差は賞金の有無だと思います。アマチュアの多く大会では、協賛企業からサプリメントなどの賞品が譲与されるのに対して、プロのコンテストでは賞金が出ます。その額は必ずしも大きいとは限りませんが、そこが違いです。

 一方で、国内で開催される大会の多くはアマチュア向けコンテストなので、プロになると出られる国内大会がほとんどなくなってしまうというデメリットもあります。

【プロの世界大会で3位に輝く】

ーー国内大会に出られず、国際大会が中心の活動となると遠征費の負担も大きそうですが、プロになることに躊躇はなかったのですか?

 正直なところ、当時は関係者の方に「国内大会で優勝や連覇したほうが知名度を獲得できるからやめたほうがいい」と引き止められたこともありました。でも、自分としてはよりレベルの高い大会で戦ってみたい気持ちが強かったので、機会を得られたらすぐにプロ転向することを決めました。

ーープロ転向後の戦績は?

 初のプロコンテストは2019年の「モントリオール エリートプロショー」で3位(ウィメンズボディフィットネスカテゴリー)でした。

ーー世界3位とはすごいですね。

 すごくゴツい選手だらけで、まさか自分が3位になれるとは思っていなかったからうれしかったですね。プロとアマチュアではまったく体が違うと感じました。

 アマチュアでは、そこそこの筋肉があって仕上がりがよければそれで評価されますが、プロは大前提としてみな筋肉量がとても多くて仕上がりがいい。そのうえで順位づけをされるので、筋肉量や仕上がり以外のバランスやプロポーション、ステージングなど細かいところまで非常に重要になってきます。

ーー日本と海外でコンテストの雰囲気の違いはありますか?

 あくまで個人的なイメージですが、日本のコンテストは控室にいる時から「絶対に負けない!」というバチバチした感じが出ていると思います。プロは賞金がかかってますけど、"プロショー"というだけあって、みんなで観客に向かってパフォーマンスをする雰囲気。選手同士の仲もよく、お互い楽しみましょうという感じです。

 そういうわけで個人的にはプロコンテストのほうがあまり緊張しないで練習どおりのパフォーマンスを発揮できると感じています。

【海外が主戦場のプロの苦悩】

ーーその後の戦績は?

 コロナ禍になってしまったので、全然大会に出られなくなってしまい......。本当は1年に1回ペースでは出場したいのですが、大会が南米やヨーロッパなどの遠方や飛行機の便がほとんど出ていない小さな島国など行きにくい国で開催されることが多く、渡航がなかなか難しいですね。

 そんななかで昨年、ブラジルで開催された「IFBB エリートプロ 南アメリカショー」に出場しました。ですが、その大会では自分の納得のいく結果を残せなかったので、今はトレーニングについて再び基本から見直している段階です。

ーープロとして今後の目標を教えてください。

 あくまでトレーニングの延長線上にコンテストがあって、そこで結果が出ればいいという気持ちでいます。だからプロとして結果を残すためにトレーニングをしているわけではないんです。

 それにIFBBエリートプロの最高峰の大会は知名度が高くはなく、もし優勝しても残念ながら日本国内で話題が出ることはないと思います。一方で、もうひとつの団体である「IFBBプロリーグ」は「オリンピア」といった有名な大会があります。

 日本人男性で「IFBBエリートプロ」カードを取得後、いったんアマチュアに戻って再度もうひとつの「IFBBプロ」カードを獲得した方がいらっしゃいます。私も日本人女性初のふたつのプロカードの獲得経験者を目指してみようかなと思うこともあります。

ーー山田さんはジム経営者としての顔も持っています。後編では、トレーニング人生と経営術について伺います。


後編<「やせているのがかわいいと思っていた」女性がなぜバキバキボディに? プロフィットネス選手・山田朝美の筋肉哲学>を読む


【プロフィール】
山田朝美 やまだ・あさみ 
日本人女性初の「IFBB エリートプロ」資格を持つボディフィットネスプロ。20代の時にダイエット目的でトレーニングを開始。2011年からパワーリフティングやベンチプレスの大会で頭角を現わし、2015年には「ミス21健康美大会」で総合優勝。2017年の「オールジャパン ミスボディフィットネス選手権」(158センチ以下級)で準優勝し、翌年の「アジア ボディビル&フィットネス選手権大会」ボディフィットネス部門オーバーオール(無差別級)3位。2018年にエリートプロカードを取得し、2019年にエリートプロが開催する「モントリオール プロショー」で3位。静岡県菊川市でスポーツジム「F-Class」を経営。

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