角田裕毅、開幕直前の感触は「7番目か8番目」 F2初参戦の宮田莉朋は「いやぁ、なんか難しいですね」

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2024年03月02日 09:11  webスポルティーバ

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 開幕前テストから4日間のインターバルをおいて、角田裕毅(ビザ・キャッシュアップRB)はバーレーン・インターナショナル・サーキットへ戻ってきた。いよいよF1シーズンの開幕を迎える。

 テストを終えた段階では、Q3進出とポイント獲得は目指すべきターゲットではあるものの決して簡単ではない、という慎重な見方を強調していた。

 しかしこの4日間にエンジニアたち、そして僚友ダニエル・リカルドも含めて全員でひざを突き合わせて長時間にわたって話し合いを行ない、徹底的なデータの分析と忌憚(きたん)のない意見の交換を行なった。それを経て、自分たちの実力に対する印象も少し変わったようだ。

「トップ3を争うようなクルマではないと思います。ただ、走った感じでは本当に悪くありませんでしたし、風に対するセンシティビティにも問題はないので、最後尾のクルマでもないと思います。マシンとしては7番目か8番目といったところで、ポイント獲得というのは僕が思っていたよりも現実的かなと思います」

 もちろん、トップ5チーム10台が強固なパフォーマンスを発揮すれば、角田のいう7番手や8番手のマシンに入賞のチャンスは巡ってこない。しかしマシンにそれだけのパフォーマンスがあれば、そして仮にそのポジションでもトップ5との差が小さければ、あとはドライバーの腕でなんとかすることも現実的になるというわけだ。

「去年の終盤戦ほどの競争力、とまではいかないと思いますけど、さすがに去年の前半戦のような(最下位争いのような)状況ではなくて、シーズン後半戦の最初くらいのポジションでは戦えるのではないか、というのが僕の感触です」

 その感触は僚友リカルドとも同じで、今のマシンに足りないと感じる部分も同じだったという。

 マシン自体は確実に去年よりもよくなっており、フロントが食いつく。ただし、その食いつくタイミングがエイペックス(コーナーの内側の頂点)の少し手前であり、その挙動変化がややシャープすぎる。

【マシンの足らない部分はドライバーの腕でカバー】

 逆にステアリングを切り始め、コーナーへ進入していくフェイズではまだフロントが足りない感覚もあり、その手前のブレーキング時からターンインまでのリアの安定感不足も、昨年苦しんできた症状が完全には解消できていない。

「マシンバランスだとか特に何か問題があるわけでもなく、どちらかというとバランスの取れたマシンかなと思います。コーナリング中のマシンバランスの一貫性がまだ少し足りなくて、コンスタントになりきっていないかなと思います。そのせいでマシン挙動を予測しづらいところがあります。

 少し改善はされたんですけど、そこをまず改善していかなきゃいけないということは今回のテストで再確認できました。みんなでひざを突き合わせて長時間話し合ったんですが、ダニエル(・リカルド)も僕も同じ意見で話を進めることができたので、チームにとってもいいことかなと思います」

 この開幕仕様のマシンに足りない部分を補足する次のアップデートが投入されるまでの数戦は、今の勢力図のままで戦うことになる。そこはドライバーの腕と、マシンのパフォーマンスを最大限に引き出すことでカバーしなければならない。

 それが「クオリティ」を最大限に高めるという、テストから角田が口にしてきたアプローチにはっきりと表われている。

「フィードバックは意識して1セッションずつ取り組んでいくつもりです。特にテストではいろんなテストをしていて、まだクルマをひとつにまとめるという作業を全然していないので、そこに対しては自分のフィードバックによってかなり変わってくる。そこを強く意識しながらやっていきたいと思っています」

 一方、F1直下のFIA F2選手権には、日本のダブルチャンピオンの宮田莉朋が参戦する。

 2月にバーレーンで行なわれた3日間のテストをこなし、トップの僚友から0.216秒差の3番手タイムを記録した。

 初戦のレース週末に向けては「まだ見えていない部分だらけ」という宮田だが、マシンとタイヤ、サーキットに対しては開幕までにまずまずの感触を掴むことができているようだ。

【宮田莉朋が感じた日本とヨーロッパの違い】

 マシンもタイヤもとことん高い限界点を目指し、攻める方向で突き詰めていく日本のスーパーフォーミュラに対し、マシン性能もタイヤ性能も路面グリップもそれより低い地点に限界点があるFIA F2では、攻めすぎず、守りすぎず、最適なプッシュレベルで合わせ込んでまとめ上げる必要がある。その勘所を掴むのが、まずはポイントだ。

「予選にしても、フリー走行でのアタックラップにしても、マシンの限界点に対してオーバーリミットだったりアンダーリミットだったり、その帳尻合わせがうまくいけばドンとタイムを出せると思います。クルマとタイヤのピークパフォーマンスを足して、自分でうまく帳尻合わせをしなきゃいけないなという感じです。

 日本の場合では、とにかくマシンとタイヤの限界を突き詰めてもっとナチュラルに走れるし、細かいところを詰めていくことでトップに近づけるという感覚でした。基礎があるドライバーが乗れば最初からある程度はそこに到達するので、そこからブレーキングを数メートル遅らせてプッシュしたり、タイヤを使うなど細かいプッシュの積み重ねでタイムを稼いでいくんですけど、そこが日本とヨーロッパの違いかなと思いますね」

 それは予選にも決勝にも言えることで、予選はアウトラップのタイヤウォームアップ、決勝は長い距離を走りきるためのタイヤマネジメントが最重要ポイントになる。

 12月のテストで走ったアブダビのように、低グリップ路面ではタイヤを最適な温度に温めるのが大きな課題になる。だが、バーレーンは世界屈指の粗くタイヤに対する攻撃性の高い路面であり、ウォームアップは問題になりづらい。宮田の所属するロダンカーズの前身カーリン時代から、もともとこのバーレーンを得意としてきたという背景もある。

 しかし、レースでのタイヤマネジメントはまだ未知数の部分もある。単独で走る純粋なドライビング面のマネジメントはチームメイトのデータから学べる部分も多いが、レース展開のなかで攻めたり守ったりという状況に対するリアクションとタイヤマネジメントのバランス感覚は、実戦を通して磨いていくしかない。

【暗中模索だが一発の速さには自信と手応えあり】

「いやぁ、なんか難しいですね。僕はレースって『一発ドン』という速さよりも安定して速く走ることが大事だと思ってやってきたんですけど、F2では『ここは攻め時』『ここは守り時』っていうその差が難しいなと感じます。

 今攻めると、その次に必要になった時に攻められないかもしれないし、その判断が100パーセント掴みきれていない感じはあります。プッシュしすぎてもダメだし、守りすぎてもダメだし、その瀬戸際の見極めですね。

 チームメイトと比較すると、彼は去年1年間F2に乗ってきているので、『ここを速く走るとこうなるんだな』というのはわかりました。テストが少ないだけに、そこはレースを重ねてこの1年で積み重ねていくしかないと思っています」

 そんな暗中模索のなかでのシーズン開幕だが、それでも宮田は高い目標を掲げている。それだけ一発の速さには自信と手応えがあり、レースでの攻防やタイヤマネジメントにも日本をはじめ、さまざまなレースでの経験をもとに対処していけるという自信があるのだろう。

「現実的な目標としては『トップ5に入れればいいな』というのはあります。もちろん優勝が目標ですし、チャンピオンを獲りたいという目標に変わりはありません。それが現実になるかどうかはわかりませんけど、アブダビの時よりは現実味は増してはいますし、そういう目標に対して少しずつ近づいているのは確かです。

 テスト最終日のアタックは、まとまったというか、自分なりに帳尻を合わせて(攻める度合いの勘所は)『あぁ、ここなんだな』っていうところで終わったので、それをずっと継続していければ、そのくらいの位置にはいられるのかなという感覚ではいますね」

 F1の世界で上位ドライバーのひとりとして存在を確立しようとしている角田裕毅と、日本の王者として世界に飛び出し、さらなる飛躍と日本のモータースポーツへの評価向上を担う宮田莉朋。ふたりの日本人ドライバーの重要な2024年シーズンがいよいよ開幕する。

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