スーパーの鮮魚コーナーで売られている魚と言えば、サケやサンマ、アジといった、食卓に並ぶようなものをイメージする人が大半だろう。
しかし、中にはこんな「変わり種」が販売されていることもある。
二度見せざるを得ない(画像は林聖人@SEIN_HAYASHIさんの投稿より)
こちらは、神奈川県在住の大学生・林聖人(@SEIN_HAYASHI)さんが2024年1月28日に投稿した画像。水で満たされたクリアケースに入っているのは、大きなヒレと独特なフォルムの頭が印象的なお魚......って、こいつネコザメじゃん!
スーパーでネコザメが売られているのもびっくりだが、さらに驚きなのはその値札の文章。
「買ってください!飼ってください!」
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どうやらこのネコザメ、生きたまま食用として売られていると同時に、飼育用としても売られているらしい。この子たちが夕飯のおかずになるかペットになるかは、購入者次第というわけか......迫られる究極の二択に、X上ではこんな声が寄せられている。
「食材兼家族」
「用途の幅が広いw」
「食うか愛でるか、究極の二択...」
Jタウンネット記者は1月29日、投稿写真について林さんに話を聞いた。
みそだれで食べる文化も?
林さんによると、投稿写真のネコザメは1月27日、愛知県にある実家の母親が地元のスーパーで発見・撮影したものだ。
林さんは海洋系の大学に通っており、普段からサメを購入しては部屋で解剖したり、骨格標本や剥製を作ったりしているという。
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「母もそれを知っているので、恐らく『ネコザメいたよー』程度の感覚で写真を送って来たんだと思います(笑)。サメが売られているのは個人的に見慣れているので、『あ、ネコザメだ』程度の感想でした」(林さん)
結局、母はネコザメを買わなかったそうだが、林さんとしては「食べてから標本にしたかったので神奈川まで送って欲しかったです(笑)」とのことだ。
近くで見ると愛嬌があるかも?(画像はPhotoACより)
それにしても、そもそもネコザメって食べられる魚なのだろうか?
農林水産省が全国各地の郷土料理を紹介するデータべース「うちの郷土料理」では、ネコザメをはじめサメ各種を用いて作られる「さめなます」という料理が、三重県の料理として紹介されている。
「さばきたてのサメの身を刺身より幾分薄いそぎ切り状にし、これをさっと湯通ししたのち冷水で身を引き締め、志摩地域独特の発酵がきつく塩分の強いみそだれを付けて食べる」(「うちの郷土料理」より抜粋)
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このほか、伊勢地域では「さめの煮凝り」や「さめだれ」(サメの切り身を塩、あるいはみりん醤油に漬けて天日で半乾かししたもの)といった料理もあるなど、ネコザメを食べる文化はたしかに存在するようだ。
では、ネコザメを一般家庭で飼育することはできるのだろうか? Jタウンネット記者は3月6日、ネコザメの繁殖賞(※)を受賞したことのある下田海中水族館(静岡県下田市)を取材した。
※繁殖賞:日本動物園水族館協会に加盟する園館の中で、飼育動物の繁殖に成功し、かつそれが日本で最初であったものに与えられる賞
ネコザメは「水質変化に弱い生き物」
同館学芸員の中西健さんは、ネコザメを一般家庭で飼育することは「可能です」と回答する。
飼育する際は、ネコザメの全長×1.5〜2倍の幅、かつ最低でもネコザメの全長ほどの奥行のある水槽が必要。水の量は多いに越したことはなく、少なくとも体高×1.5〜2倍程度の高さの水位を確保する必要があるという。
画像は再掲
飼育に適した水温は14〜26度で、20度前後が妥当。餌は市販で購入できるアサリやスルメイカなどで問題ない。また、底砂を敷いたり、岩場や岩陰を作ったりしてあげると、1つの空間の中で過ごす場所の選択肢が増えて落ち着くことがあるそうだ。
「(注意点としては)ネコザメは水質変化に弱い生き物です。水質変化の影響で餌を食べなくなったりしますので、定期的な水換えと摂餌の行動を十分観察することが必要です」(中西さん)
いくつかのポイントに気を付ければ、一般家庭でネコザメを飼育することは不可能ではなさそうだ。
もしスーパーでネコザメが売られていたら、読者の皆さんは食材として買いますか? それともペットとして飼いますか?