「Jujuフィーバー」でスーパーフォーミュラの注目度急上昇「ひとつひとつ経験して楽しんでいきたい」

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2024年03月14日 17:01  webスポルティーバ

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 昨年はリアム・ローソンや宮田莉朋が活躍した日本最高峰のフォーミュラーカーレース『全日本スーパーフォーミュラ選手権』。2024シーズンはさらにレベルが上がっており、昨年FIA F2で年間チャンピオンを勝ち取ったテオ・プルシェールや、同シリーズランキング4位で2025年のF1参戦を目指す岩佐歩夢が、日本に戦いの場を移した。

 しかし、そのふたりを遥かにしのぐ注目を集めているのが、日本人女性として初めてスーパーフォーミュラに参戦する18歳のJujuだ。

 元F1ドライバーの野田英樹氏を父に持つJujuは、小学生の頃からフォーミュラカーをドライブし、若くして多くの経験を積んできた。2020年からは家族とともにヨーロッパへ拠点を移し、さまざまなレースに参戦。女性ドライバーのみが参戦するフォーミュラカーシリーズとして注目を集めたWシリーズにも挑戦した。

 2023シーズンは、欧州F3選手権ユーロフォーミュラオープンで女性初の優勝。さらに、ジノックスF2000フォーミュラ・トロフィーではシリーズチャンピオンにも輝いている。

 そして2024年。Jujuは日本の最高峰レースであり、今やF1への新たな登竜門として注目を集めるスーパーフォーミュラへの参戦を表明。これにより、日本メディアは一挙に彼女のもとに集まった。

 昨年12月に参加したルーキーテストでは、地上波の各テレビ局をはじめ、ふだんはモータースポーツを取り扱う機会が少ないメディアも駆けつけ、鈴鹿サーキットに溢れかえった。

 そんななか、Jujuは初めてのスーパーフォーミュラマシンでコースオフを喫することなく、3日間で合計192周を走破。ベストタイムは、レギュラードライバーから約2秒遅れの1分38秒539を記録した。

 年が明けた2024年1月上旬、TGM Grand Prixから参戦することが発表されると、Juju人気はさらに加速。開幕前の2月に行なわれた公式合同テストでは通常の倍以上の100名を超えるメディア関係者が鈴鹿サーキットに集まった。

【前年と比べて1.3倍の動員数増となった開幕戦】

 ルーキーテストからどこまでタイム差を縮めてくるのか。Jujuへの注目はさらに高まっていたが、1日目が雨に見舞われたうえ、シーズン中とは異なる極寒のコンディションのなか、2日間で3度の赤旗中断原因となるコースオフを喫し、かなり苦戦した。気温が低いコンディションでのマシンの扱いは、いまだ模索中といった感じだ。3月の開幕戦でライバルと争うのは難しそうな印象だった。

 スーパーフォーミュラでは2022年から各ドライバーの露出機会を増やすため、毎回メディアミックスゾーンに全ドライバーが出席して囲み取材を行なっているが、カメラやマイクはテストでトップタイムを記録した山下健太や牧野任祐よりも、多くはJujuに向けられ、彼女への注目度は上がっていく一方だった。

 今までとは比べものにならないほどの数のメディアがJujuの奮闘を報じたことにより、スーパーフォーミュラ開幕戦には昨年を大幅に上回る観客が来場。2日間の合計来場者数は3万3000人となり、前年と比べて約1.3倍の動員数増となった。

 サーキットに駆けつけたファンの間でも、一番人気はJuju。スーパーフォーミュラではふだん入場できないピットレーンを解放してのファンサービスイベント「ピットウォーク」が人気で、ここでドライバーからサインをもらうファンも多い。当然、Jujuの周囲は黒山の人だかり。ピットにあまりにも多くのファンが集まり、混乱が予想されたためサイン対応はなく、写真撮影のみになったほどだった。

 そんな熱狂ぶりで迎えたレース本番。Jujuのスーパーフォーミュラデビュー戦は気温8度で、セッション前には雪がちらつく極寒のコンディション。Jujuは予選Q1のBグループで出走し、タイヤのウォーミングアップを2周してタイムアタックに入っていった。結果はBグループのトップから4.837秒遅れの最下位。総合では19番グリッドとなった。

【周囲に背を向けて、ひとりになろうとしている姿も...】

 開幕戦予選のJujuはテストの時と同様に、寒いコンディションでタイヤのパフォーマンスを発揮させる部分で課題がある様子。本人はもう1周タイムアタックをしたかったようだが、時間が足りず不完全燃焼に終わった。予選Q1は10分と時間が限られているため、一発でタイムアタックを決めなければいけない。その部分も今後は向上させていく必要がありそうだ。

「最初は簡単ではないなと思いますし、壁にぶつかって当然だと思います。今の段階で課題は何なのか、どこに向かっていくべきか明確なので、ひとつひとつ経験して楽しんでいきたいなと思います」

 シーズン前の記者会見などでは満面の笑みを見せていたJujuだが、さすがに予選後は笑顔も少なめだった。

 迎えた日曜日の決勝レース。多くの観衆やメディアの注目がJujuに集まり、スタートセレモニー前には末松則子鈴鹿市長や多くの来賓が彼女に声をかけに来ていた。そこで笑顔で応えたものの、少しでも時間が空くと、ひとりになろうとしている姿もみられた。Juju本人にとっても予想を遥かに上回る注目度となったことで、少なからずプレッシャーを感じている様子だった。

 Jujuはスタート直後にコースオフを喫したものの、すぐに立て直して戦列に復帰すると、レース前半は1分42秒台のペースで周回。前を走るライバルたちに食らいついていく。その差は徐々に広がっていったものの、大きくペースが落ちることなく走り、15周を終えたところでタイヤ交換を実施。後半スティントでは一時1分41秒台のペースで周回し、徐々にアベレージを上げていった。

 シーズンオフのテストの内容を見ると、周回遅れになる可能性もあったが、いざ本番を迎えると、トップと同一周回でフィニッシュ。周囲の予想をいい意味で裏切る走りを見せた。

「タイヤが冷えているなか、1コーナーであそこまで踏んでいけたのは自分としても自信になりました。最初スーパーフォーミュラに乗った時は、そこまで自信が持てませんでしたけど、このレースを終えてクルマと友だちになれたかなと思います。

 ここまでのロングランは自分にとって初めてでしたけど、そのなかで安定してタイムを出せたのは本当に自信になりました。まだ詰めるところや成長していかないといけないところはありますけど、ひとまずこの内容で終えられたというのは、次に絶対つながると思います」

【Jujuフィーバーをスーパーフォーミュラの盛り上げにつなげられるか】

 一歩間違えば、スタートでのコースオフでクラッシュしてリタイアになる可能性もあった。だが、冷静に立て直して以降は大きなミスなく走ったのは、十分に評価できる点だ。

 ただ、日本最速の座を目指して各ドライバーが争っているスーパーフォーミュラにおいて、トップから1分09秒差の17位は、お世辞にも「いい結果だった」とは言えない。

 たしかにテストの時からは成長が見られたレースで、デビュー戦での目標はある程度クリアしたと言える。ただし、スーパーフォーミュラというレベルが高いシリーズで生き残っていくためには、現状に満足せず、次のステップに進化していかなくてはいけないだろう。次戦以降、もっと貪欲に上を目指す姿を期待したい。

 今回の決勝レースは、事前に鈴鹿サーキットを250周以上走り込んだ経験が活きたと言える。5月の第2戦・オートポリス、6月の第3戦・SUGOなどは事前にテスト走行ができないため、予選前に行なわれる90分間のフリー走行で準備を整えなければいけない。その状況下でトップにどこまで近づけるか──ここからが本当の勝負となる。

 今シーズン、Jujuの参戦をきっかけにスーパーフォーミュラというレースが広く一般に認知されつつある。今後は彼女だけではなく、結果を出しているほかのドライバーにもスポットが当たり、スーパーフォーミュラ全体の盛り上がりにつなげられるか。モータースポーツ界にとっての課題と言えるだろう。

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