高年収ランキング上位でも、頭打ちになる職業は?これから給料が「下がる仕事」と「上がる仕事」

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2024年03月15日 11:31  All About

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私たちの暮らしと日本経済にまつわるさまざまな疑問について、第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣さんにお聞きしました。今回は、給料が上がると下がる仕事、そしてこれから成長して伸びる職種・業界についてです。
人口知能(AI)の登場で私たちの暮らしや働く環境は、大きく変わろうとしています。これから、どんな業界が成長産業として注目されているのか。また、どんな仕事に就けば、給料が上がりやすいのか。第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣さんにうかがいました。

今後給料が下がる仕事は? “医者”も例外ではない!?

――AIの進化や労働者人口の減少など、私たちの働く環境は急速に変化しています。こういった背景を踏まえて、今後給料が下がるような仕事はありますか?

永濱さん:全体的に人手不足が深刻になってきているので、給料が下がるということはないと思います。強いて言えば、AIで代替ができるような事務職などは、給料は上がりにくくなるでしょう。

また、給料が上がりにくいという点では、すでに給料水準が高い“医者”も例外ではないと思います。私たちが支払っている医療費の7割は、公費(税金)に頼っている状態です。今の社会保障財政を考えると、これ以上医療費を増やすのは難しい。

少しでも医療費を圧縮するために、診療報酬の改定が行われています。診療報酬が下がれば、医療機関の収益にも影響が出るため、医師の給料も上がりにくくなると考えられます。もちろん、要因はこれだけではなく、他にもあるのですが……。

これから給料が上がるのはどんな仕事?

――では今後、給料が上がりやすいのは、どのような仕事になりますか?

永濱さん:端的に言えば、グローバル経済の恩恵を受けやすい職種の給料は上がりやすく、その恩恵を受けにくい職種は下がるのではないでしょうか。あとは、手に職があった方が給料は上がりやすいと思います。

例えばですが、国内で寿司職人をしていたとしても、給料はそんなに上がらないでしょう。だけど今、海外で寿司職人として働いたら、年収2000万円くらいは稼げると思いますよ。

国内であっても、熊本にあるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造)では、派遣社員でも時給3000円くらいですので、月収50万円ぐらいは稼げます。外国人観光客に人気のニセコ(北海道)でも、飲食店のアルバイトは時給2000円ぐらいありますから。給料を上げたいのであれば、いかに海外と絡む仕事をするかではないでしょうか。

――日本の給料水準は、世界と比較すると低いということでしょうか?

永濱さん:そうですね。先月、台湾へ行ったときに聞いた話ですが、修士課程を出てTSMCの本社(台湾)に就職した場合、給与が高い人だと1年目で年収が900万円ぐらいの人もいるそうです。あくまでも一例ですが、比較すると日本の技術職の給料は安すぎると思います。やはり、これまでの日本だとホワイトカラーの給料が高すぎて、技術系の給料が安く抑え込まれていた感じがありますね。

あと、日本人の経営者は、人材流出の危機感が乏しいため、“釣った魚に餌をやらない”ところがあって、優秀な人材に高給を払うことに渋かったりします。そして、従業員も海外みたいに待遇改善を求めてストライキなどもやらないですよね。だから、給料が上がりにくいというのもあると思います。

注目成長産業の一つ“農業”は、やり方次第で稼げる職業に!?

――農業もこれから伸びる産業として注目されていますが、期待通りに給料も上がっていくのでしょうか?

永濱さん:やり方次第では、かなり給料が上がると思いますよ。だって“食”は、究極の生活必需品ですし、世界に目を向けて考えると、まだまだ人口は増えていくわけですから。特に日本の農産物は、海外でもすごく評価されていますので、うまくビジネスにつなげられれば、相当伸びると思います。

例えば、国土面積が日本の九州くらいの広さのオランダは、テクノロジーを駆使したスマート農業によって著しく生産性を高め、今では世界第2位の農業大国となっています。日本は今、食糧自給率が低く、多くを海外からの輸入に頼っていますが、オランダの事例は参考になるところが多いと思います。

国を挙げた改革がもっと進み、日本も農産物で世界と勝負できるようになれば、都会で働くより地方で1次産業に従事した方が稼げる時代が来るかもしれません。

教えてくれたのは……永濱利廣さん

第一生命経済研究所首席エコノミスト。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年に第一生命保険入社、日本経済研究センターを経て、2016年より現職。専門は経済統計、マクロ経済分析。著書に『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)等。
(文:All About 編集部)

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