44歳貯金4600万円。心療内科に通っています。今退職したら老後がきびしいが、仕事がつらい……

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2024年03月23日 22:21  All About

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相談者は、会社員の男性。現在の仕事がつらく、退職を希望しているが、その後、どの程度の収入が必要か分からず不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーがアドバイスします。

体調が優れず退職希望、転職後の収入はどの程度必要?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回のご相談者は、会社員の男性。現在の仕事がつらく、退職を希望しているが、その後、どの程度の収入が必要か分からず不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

ありすさん(仮名)
男性/会社員/44歳
中国地方/持ち家・一戸建て

家族構成

妻(パート/44歳)、子ども2人(12歳・10歳)

相談内容

仕事がつらく心療内科に通院しておりますが、復調の兆しがあまりありません。このまま退職しても老後が安泰でないことは分かります。転職を希望しておりますが、いくらくらいの収入の会社に転職をすればいいのか分かりません。できるだけ、低収入でも心に負担の少ない会社を希望しております。

家計収支データ

ありすさんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「ありす」さんの家計収支データ


家計収支データ補足

(1)住居費について
「1万5000円」は、固定資産税を月割りにした額。住宅は両親から相続時精算課税制度を利用して購入。築年数は16年。

(2)貯蓄と投資商品について
結婚する前から夫婦が互いに貯めた分を主にリーマンショック後、国内株式で利益を上げた。2年前から国内株を8割程度売却し定期預金と純金積み立ての増額に軸足を移している。

(3)加入保険の保障内容
・相談者/収入保障保険(60歳払い込み、保険期間65歳、月額14万円)=毎月の保険料6790円
・相談者/終身保険(60歳払い込み、死亡保障250万円)=毎月の保険料3902円(※)葬式代金として勧められて加入
・相談者/がん保険(終身保障終身払い、入院5000円)=毎月の保険料3588円
・妻/医療保険(保険期間60歳、入院5000円)=毎月の保険料3685円
・第1子/医療保険(保険期間60歳、入院5000円)毎月の保険料=1207円

(4)子どもの進路について
中学、高校は基本公立。大学進学が県外になった場合、奨学金は利用せず、できる限り仕送りもしたいと考えている。

(5)相談者の退職金について
60歳まで働けば1000万円程度。今現在退職された場合の額は不明。

FP深野康彦の3つのアドバイス

アドバイス1:リスタートするために1〜2年休職してみる
アドバイス2:相談者が無収入となった分は貯蓄を取り崩す
アドバイス3:世帯収入として少なくとも月28万円を目標に

アドバイス1:リスタートするために1〜2年休職してみる

ご相談拝見しました。現在の仕事については、なるべく早い時期に退職すべきだと思います。小学生のお子さん2人のことを考えると、安易に踏み出せない気持ちも分かります。しかし、最優先すべきは、ありすさん自身の健康です。無理をして倒れたら、それこそ家族のライフプランに大きく影響します。

また、「転職を希望」とありますが、慌てる必要はないのでは。もし退職してすぐに復調しないなら、思い切って1〜2年休職されてはどうでしょうか。その間、心療内科の先生とよく相談しながら、体調を戻すことに専念する方がいいと考えます。

長い休職によって、家族に申し訳ないという思いを抱くかもしれません。しかし、これまで頑張って働いてきたということもまた事実。休職期間はリスタートのため準備だと考えてみてください。

アドバイス2:相談者が無収入となった分は貯蓄を取り崩す

とはいえ、家計についての不安は大きいはず。しかし、結論から言えば大丈夫だと考えます。試算をしてみましょう。

設定として、ありすさんが2年間仕事を休むとします。そうなると、世帯収入は月8万円(児童手当含む)なので、毎月の赤字は約21万円、年間で252万円となります。

一方、収入として、退職金があります。60歳で1000万円とのことですから、今辞めても300万円程度はあるのでは。これと失業手当が総額で60万〜70万円でしょうか。あくまで金額は想定ですが、少なくとも最初の1年は退職金と失業手当(実際の受給時期から前倒し)で家計赤字は十分カバーできることになります。

ただし、2年目の赤字は、貯蓄等から取り崩すことで補てんします。金融資産は計4665万円(投資商品は評価額が変わらないとする)。それに1年目の世帯収支の黒字分(退職金と失業手当で100万円+と想定)を加算した上で、そこから差し引くと、それでも4500万円超がまだ残ります。

一方、基本的な生活費以外に今後発生する大きな支出も見ていきます。

まずは教育費です。高校まで公立、大学は私立を想定しますと、中高でざっと300万円(塾等の学校外教育費を含む)。大学の場合、文系と理系では卒業までの4年間に学費(入学金を含む)で100万円ほど差がありますが、とりあえず500万円として、2人で計1600万円。

ただし、現在のお住まいを考えると、大学は県外の可能性もあります。したがって、別途生活費が発生します。親からの仕送り額は、平均で年間100万円ほどですが、念のため卒業まで500万円とすれば、お子さん2人で1000万円。したがって、教育資金として今後2600万円は「備えたい」ということになります。

それ以外にはクルマの買い替えがあります。2台所有ということですから、それぞれ買い替えはあと4回、予算は800万円とします。あとは住宅のリフォーム費用。これも世帯によって幅がありますが、仮に300万円とすれは、計1100万円。教育費と合わせて、3700万円。それを先の手持ち資金4500万円から差し引けば、800万円がまだ手元に残ります。

アドバイス3:世帯収入として少なくとも月28万円を目標に

次に、3年目以降、ありすさんのご相談にある「今後の収入」を考えてみます。ご希望は「低収入で、負担の少ない仕事」ということですので、仮に手取りで月20万円、ボーナスなし(もしくはボーナスも含めて手取りで240万円の年収)と想定してみます。ただし、これではやや不安なので、奥様のパート収入を月6万円から8万円にアップしてもらいます。これで世帯収入は月28万円です。

また、せっかくですから、この際、家計支出も見直してみましょう。

まずは保険。必要性が低いのは、ありすさんの終身保険と第1子の方の医療保険。お葬式代はそのときの貯蓄から出せばいいですし、お子さんの医療費は、今用意すべき費用としては優先順位が低い。かかる医療費は、今ある金融資産から捻出すれば十分。保険で用意する必要はありません。

他に、家計支出としては雑費、趣味娯楽費は下げる余地があるでしょう。これで、簡単ではないですが、何とか月25万円に生活費を抑えるとすれば、月3万円の黒字。年間で36万円。60歳まで14年間継続すれば、約500万円。

ただし、先の試算で中学からの教育費を別途計上していますし、一般的には大学卒業後には不要となる費目ですから、データにある教育費「月3万7000円」×14年間=620万円は実際は貯められた額となります。それでも、お子さんの成長とともに、今より増えてしまう費用もあるので、それを差し引いて500万円とすれば、60歳までに新たにできる貯蓄は1000万円となります。

それを先に試算した「800万円」に加えると1800万円。これがいわゆる老後資金=60歳のときの手持ち資金です。そして少なくとも公的年金が支給される65歳までは夫婦とも働き、同様に月3万円貯蓄できれば5年間で180万円。65歳の時、1980万円が用意できる、という計算になります。

では、この金額は老後資金として足りるでしょうか。不確定要素が多く、ここでは判断できません。

考え方としては、公的年金だけの生活費の不足額を老後資金でカバーできるかどうか。平均月3万円の不足なら、30年間(95歳まで)で1080万円、5万円不足なら1800万円。

他に予備費も必要と考えれば、まったく不安がないとは言いませんが、そうなれば年金に合わせて生活費を下げてもいいし、65歳以降も元気なら働くこともできるはず。教育資金も高めに設定していますから、その点でもより貯まる可能性もあるでしょう。

ここまで世帯収入を下げても大丈夫だと言えるのは、これまで頑張って働いたことでまとまった金融資産を残したこと。また、住宅ローンがないことも大きい。ともあれ、少なくとも夫婦で手取り月28万円以上、そして生活費を25万円(便宜上、教育費も含めた数字)に抑える。それをひとつの目安にしてください。

相談者「ありす」さんから寄せられた感想

びっくりするくらい踏み込んでいただいたアドバイス、ありがとうございます。提示いたしましたデータでどれくらい自分の心情や内情をご理解いただけるか不安でしたが、見事に払しょくされました。具体的に金額の提示があったことで、前に進めそうな気がします。今の会社で無理に頑張らなくて良いのだと思えたことで、とても楽に感じることができるようになりました。

自分の進退につきましては、ゆっくり家族で話し合いながら決めていきたいと考えるようにします。大変ありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:清水京武
(文:あるじゃん 編集部)

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