【漫画】人の顔が花に見える少女、その孤独は癒える? 大正ロマン香る『カフヱーピウパリア』の繊細な魅力

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2024年03月29日 08:10  リアルサウンド

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『カフヱーピウパリア』より

 戦前において大衆文化が花開いた儚い15年間、大正時代。当時の喫茶店「カフェー」は今とは違い文化人がたむろするサロンのような場所で、働く女給は女性にとって花形の職業だった。そのカフェーを舞台に描かれる漫画が『カフヱーピウパリア』である。


(参考:漫画『カフヱーピウパリア』を読む


 主人公である女給・ミツは人の顔が花に見えてしまい、客の名前が覚えられない。でも彼女の前に“真の顔”を持った男が現れて――。本作は大正ロマンの風のなかに現代に通ずるテーマ性も感じる。気になる制作裏を作者・朝際イコさん(@icoasagiwa815)に話してもらった。


――『カフヱーピウパリア』の反響はいかがですか?


朝際イコ(以下、朝際):もともとはイラストレーターとして活動していたんです。ファンの方には新たな一歩を踏み出したと思っている方や、以前描いたエッセイ漫画の延長線上だと思う方もいるようです。作品については「先の読めない物語が面白い」という声や、私の絵が動いていることを喜んでくれる声もありました。


――制作経緯を教えてください。


朝際:担当さんから「大正ロマンな漫画を描いてほしい」というメールが突然来て、ちょうど漫画に挑戦したいのもあり快諾しました。お互いに大正時代や戦前のカルチャーが好きで意気投合しましたね。「女給さんの物語」ということもすぐ決まって。


――「顔が花に見える」という設定もユニークです。


朝際:主人公・ミツちゃんとっては他人の顔が花に見えるという設定です。これは精神的な特性で他人の顔が認識できない「相貌失認」という症状を持っている方がいて、服や声などを頼りにして何とか生活していると。そこから着想しました。


『聲の形』の主人公の信頼できない人の顔にバツが付く表現にも刺激を受けて、昆虫と関係する何かにしたかったので花に見える設定にしたんです。カフェーのオーナーが昆虫学者なんですよ。だから話数の単位が「針」なのも標本していくようなイメージ。


――登場するキャラクターもどこか大正っぽさがありますね。


朝際:まだそこまで登場してないですけどね(笑)。「木村宗平」という名前も画家・木村荘八が由来です。当時の画壇にいた人から引用している感じでした。大正時代は好きですが、知らないことが多いので、実在した人の名前にすると勉強にもなるので。


――朝際さんにとって大正時代の魅力は?


朝際:入口はシンプルにカワイイと思ったからでした(笑)。もともと『サクラ大戦』などの世界観がすごく好きで、日本固有のカルチャーに興味があったんです。特に刺さったのが、着物なのに和洋折衷な女給さんのエプロン。あとは15年しかない儚さもありますね。日露戦争でアジア人が欧米の大国に勝ち、国民に自信も付いたことで安定して文化が花開いた時代、ということで好きだと思います。


――漫画に登場する精神的な疾患は発達障害など、百花繚乱の文化はアニメの国際的人気など、100年前を現代に置き換えて解釈することもできそうです。


朝際:そうですね。今もADHDなどにカテゴライズされることで救われる人もいれば、逆に生きづらくなる人もいます。ただ医療として認められてないだけで、昔もたくさんいたはずなんですよ。


「今の女の子も、おばあちゃんも生きづらさはあったけど、それぞれ工夫して生きていた」ということは描きたいテーマのひとつ。女性の立場が低かった時代に、誰かと知り合ったことがきっかけで希望が生まれる。そんな女性を応援できるような漫画にできれば。もちろん素敵な男性たちも登場します。


――今後『カフヱーピウパリア』はどう展開していきますか?


朝際:3話でミツ編は終わります。何か生きづらさを感じている女給さんたちの群像劇なので、彼女たちがお客さんと関わって人間模様が展開していきますよ。もちろんミツも今後も出てきますし、どんなドラマになるか期待していてください。


(小池直也)


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