日本代表の北朝鮮戦で福田正博が目を奪われた2人とは? 攻撃陣には「ゴールで評価される働きをしてほしい」

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2024年03月29日 10:30  webスポルティーバ

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福田正博 フットボール原論

■サッカー日本代表の北朝鮮戦を福田正博氏が分析。「難しい戦いになった」なかで、目を奪われたという2人と、1得点に終わった攻撃陣への評価も聞いた。

【戦前の状況は想像以上に難しかった北朝鮮戦】

 サッカー日本代表は、W杯アジア2次予選の北朝鮮戦に1−0で勝利した。アウェーで予定されていた2戦目が中止になったことに対して思うところはいろいろあるが、まずは難かしかったホームでの試合をしっかりモノにした点を評価している。

 北朝鮮のFIFAランクは114位。18位の日本代表との差は大きいため、戦前は容易く勝てると思っていた人も少なくないだろう。だが、そうしたものでは推し量れない難しさがこの試合にはあった。

 ひとつは試合に向けたコンディショニングの差だ。北朝鮮は日本戦に照準を合わせて万全の状態で臨んできたのに対し、日本は直前まで所属クラブでのプレーがあった。顕著だったのはキャプテンの遠藤航(リバプール)だ。北朝鮮戦の4日前にFAカップで120分間プレーした影響もあって、北朝鮮戦はスタメンから外れた。

 遠藤以外の選手も所属クラブでの試合の疲労感に加えて、移動距離や時間を含めた影響があり、万全とは言えない状態だった。

 海外組が日本代表の主体になっているのは、いまに始まったことではない。ただ、1月のアジアカップで示されたように、アジア全体のレベルが底上げされているなかでは、コンディションが整わなければ足元を救われたとしても不思議ではない。

 ふたつ目は、そのアジアカップ後に最初に行なわれる日本代表戦だったということ。優勝候補に挙げられながら、準々決勝で敗退したアジアカップのショック。これを引きずらない可能性はゼロではない。だからこそ、敗因のひとつに挙げられた優勝に向けた士気の部分での改善の狙いもあって、大ベテランの長友佑都(FC東京)が招集されたのではないかと思う。

 無論、大前提として長友は戦力として計算しての招集だったはずだ。どれだけ実績のある選手であっても、ピッチでの力が大きく劣っては、ほかの選手たちへの影響力は小さくなってしまう。その点、長友はFC東京では右サイドバック(SB)として、今季のJリーグの開幕戦からスタメンに名を連ねている。

 森保一監督は、そうした状況や三笘薫(ブライトン)と伊東純也(スタッド・ランス)の両エースを欠くことを理解したうえで、打てる手はすべて打って北朝鮮戦を迎えた。チームマネジメントとしては当然と思われるかもしれないが、どんな相手であっても抜かりなく準備するというのは意外と難しいものだ。

【存在感が光った田中碧、町田浩樹】

 試合は日本代表がキックオフ直後から猛攻をかけたのが奏功して、早い時間帯で先制点を奪えた。追加点を奪えれば理想的な展開だったものの、チャンスはつくり出していた。

 ただし、北朝鮮は失点後に圧力を増し、ロングボールを入れながら攻撃を仕掛けてきた。あの圧力を試合開始序盤から見せていたら、日本代表は先制点を奪えずにさらに苦しい戦いを強いられた可能性はあっただろう。

 そのお陰というわけではないが、森保監督の采配面での取り組みが見られることになった。リードしている展開での逃げきりの部分だ。北朝鮮にロングボールを入れられて苦戦するなかで、まず遠藤航を守田英正(スポルティング)に代えて投入した。それでも流れが変わらないと見るや、次に谷口彰悟(アル・ラーヤン)と橋岡大樹(ルートン・タウン)を投入して4バックから3バックへと変更した。

 まずは人を代え、次に形を変える。これは選手交代のセオリーだが、ピッチの戦況をしっかり分析し、素早く対策をとれたことは評価していいだろう。

 選手個々で言えば、先制点を奪った田中碧(デュッセルドルフ)の存在感は光った。ボランチは守備強度で選んでいけば、遠藤、守田の2人がファーストチョイスになる。ただし、サッカーは対戦相手との兼ね合いに応じて最適解は変わっていく。今後も前に出ていく攻撃力が求められる場合には、田中は選択肢になっていくだろう。

 その田中と同じか、それ以上に目を奪われたのが、センターバック(CB)を務めた町田浩樹(サン=ジロワーズ)だった。左利きのCBで身長190センチと高さもある。町田が日本代表のCBに定着してくれたら、DF陣の層が厚みを増し、たとえば左SBに冨安健洋(アーセナル)を使うことも可能になる。北朝鮮戦でのプレーを見ると、そう期待したくなるものがあった。

【攻撃陣は物足りなさが残った】

 一方、攻撃陣に目を移すと、物足りなさが残ったと言わざるを得ない。南野拓実(モナコ)にしろ、前田大然(セルティック)にしろ、上田綺世(フェイエノールト)にしろ、やはりゴールに絡んでこそ彼らの存在意義があるのではないか。堂安律(フライブルク)にしても何かをしてやるという気概は見えたが、結果にはつながらなかった。

 ほかの選手のためにスペースをつくる動きをしたり、前線からのチェイスで後ろの選手たちの守備を助けたりといった、チームへの貢献はしてくれたのは間違いない。

 ただし、これは選手評価の難しいところではあるが、前線の選手たちに対してそこにフォーカスして称賛するのは、彼らに対して失礼な気がする。なぜなら、彼らはゴールを奪う仕事を生業にしているからだ。それだけに次戦では、ゴールという本業で評価される働きをしてくれることを期待している。

 日本代表のW杯アジア2次予選は、次回は6月にあるミャンマー戦(アウェー)、シリア戦(ホーム)となる。

 それまでは、各選手が所属クラブで存在感を増せるように成長を遂げていってもらいたい。なぜなら、選手一人ひとりの力が大きくなり、それをチーム力へと昇華させることができて初めて、日本代表はW杯でのベスト8以上という目標に近づいていくからだ。

 2026年W杯に向けた時間は有限ではないことを忘れずに、一日一日を大事にして取り組んでもらいたい。

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