「ぐるなび」と「食べログ」で分かれた明暗。“4年前は互角”も大差がついてしまったワケ

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2024年04月04日 09:31  日刊SPA!

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© Transversospinales | Dreamstime.com
 中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
 コロナ禍で外食産業を取り巻く環境が激変し、グルメメディアも多大な影響を受けました。長らくライバル関係にあった「ぐるなび(楽天ぐるなび)」が「食ベログ」に大きく水をあけられる結果となったのです。

 この差は消費動向とも関係があり、逆転するのは簡単ではありません。

◆ぐるなびの売上はコロナ前の4割まで縮小

 ぐるなびの2023年4-12月の売上高は前期比0.8%減の88億8600万円でした。とにもかくにも売上高が回復しません。2024年3月期通期の売上高を130億円と予想しています。

 コロナ禍を迎える前の2019年3月期は327億円ありました。日常を取り戻した今でさえも4割程度なのです。

 食ベログの2023年4-12月の売上高は204億5100万円で、前年同期間の1.2倍。2019年4-12月と比較しても3%上回っています。食ベログはコロナ禍を乗り越えて完全に回復しました。

 2社の売上規模は近いところにありました。2020年4-6月における売上高は、食ベログが17億3500万円で、ぐるなびが17億8300万円と、ぐるなびが僅かに上回っている状態。

 しかし、2023年10-12月は食ベログが74億1500万円、ぐるなびが32億3400万円です。ぐるなびは食ベログの4割程度まで縮小してしまいました。

◆全盛期は「有料加盟店舗」が6万店を超えていたが…

 グルメメディアの収益は、飲食店からの広告費に多くを依存しています。

 食ベログは2023年12月末時点のサービス契約店舗数が4万9000店でした。ぐるなびはストック型有料加盟店数が3万3000店です。全盛期のぐるなびは有料加盟店舗数が6万店を超えていました。コロナ禍による激しい減少は収まったものの、下げ止まっただけであり、回復の道は見えません。

◆食ベログの業績が安定している理由

 ぐるなびは宴会ができる飲食店に強みを持つ一方、食ベログはレストランやカフェ、焼肉店など様々な業態を扱っているというメディア特性があります。ぐるなびの不調は、宴会需要が減退したことで居酒屋店を中心に加盟店舗数が減少したことに起因しています。

 日本フードサービス協会によると、2024年2月の居酒屋店の売上高は、2019年同月比で7割にも達していません(「データからみる外食産業」)。居酒屋店の稼ぎ時である2023年12月においても、2019年比で同じく7割に届かず、改めて宴会需要が縮小したことを知らしめました。

 それでは、食ベログの業績が安定しているのはなぜでしょうか?

 消費者が外食に使っている金額そのものに大きな変化がないからです。総務省の家計調査によると、2023年の1世帯当たりの年間の外食費は17万3000円でした。2020年は12万9000円まで下がりましたが、力強く回復しています。2019年は17万6000円で、ほぼ同じ水準まで戻っているのです。

 食ベログはテレビCMで「お店探しは、食ベログアプリ」をキャッチコピーにしていました。まさにこれが重要で、消費者の中に飲食店探しは食ベログだという意識が醸成されている限り、転落することはないでしょう。

◆外食頻度が減った結果、食べログ有利に?

 食ベログにはもう一つ追い風が吹いています。それが外食頻度の変化です。家計調査によると、2023年の勤労世帯における年間外食頻度は132回でした。2019年は153回。月当たりに直すと、2019年は12.8回、2023年は11.0回飲食店を利用していることになります。

 つまり、外食に使う金額は2019年の水準に戻っていますが、頻度は下がっているのです。コロナ禍をきっかけとして、消費者は1回当たりの飲食店の利用機会を堪能しようとする姿が浮かび上がります。

 飲食店の探し方は複雑化しています。SNSで発見したお店をGoogleで検索してグルメメディア、公式サイトを確認。地図アプリで場所を見て、グルメメディアで予約を入れるといった様々な過程を踏みます。

 消費者は飲食店選びに対して慎重になりました。口コミで信頼を構築した食ベログはユーザーの受け皿になっているのです。2023年10-12月の食ベログのネット予約人数は2307万人でした。2019年10-12月は1137万人。倍増しています。

◆懸念は「アルゴリズム訴訟」と「別のプラットフォームの台頭」

 ただし、食ベログに死角がないわけではありません。

 その一つがアルゴリズム訴訟。焼肉チェーンを経営する会社が、不当に食ベログの点数を下げられて客数と売上が減少したと主張。運営するカカクコムに損害賠償を求めました。

 一審では店舗側の主張を一部認め、3800万円余りの賠償を命じました。しかし、二審では店側の訴えが退けられています。焼肉チェーンの経営者は、最高裁判所に上告する意向を示しています。

 この裁判の一番のポイントは、食ベログが適切ではない方法で点数を操作しているのではないかと疑われていること。消費者は食ベログの点数を店選びの参考にしていますが、その信頼が揺らぐとメディア離れを引き起こすきっかけになります。この裁判の行方は極めて重要です。

 もう一つはGoogle MapやInstagramなどの別のプラットフォームの台頭です。Google Mapは食ベログと同じように口コミが充実しており、特に若者の間では大いに活用されています。Instagramは2021年に飲食店の席予約ボタンを追加し、来店を促す仕組みを導入しました。

 現在は食べログが飲食店探しの受け皿になっていますが、勢力図はいつ変わってもおかしくはありません。この先も安泰だとは決して言えないでしょう。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

このニュースに関するつぶやき

  • 食べロガーとして言うけど、内容が事実でも辛口のレビューは「書き直せ」と何回も何回も食べログからチェック入ってその間、他人からは読めないように落とされてるよー
    • イイネ!4
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